「過ぎたことを考えすぎてしまう人は必要以上に落ち込んでしまう傾向にあるので要注意。過ぎたことを思い出さないようにしましょう」という趣旨の記事を久し振りに目にした。
私は過ぎたことを思い出しやすい。寝る前、手を洗っているとき、風呂の中、ご飯を食べている最中に過去のことをふと思い出してア゛ーとなる。
「少年時代の黒歴史を思い出して悶える」という人はよくいるが、私の場合はそれよりもっと瞬間的な記憶を思い出す。過去に話した人が、自分の話を聴きながら退屈そうにしていたときの恥ずかしさと焦りが目の前に訪れる。自分は箸を持ってシャケ弁当を食べているにも関わらず、そのとき手に滲んでいた汗や、周囲の雑踏などが突然現れて、私を今いる場所から過去へと連れ戻してしまう。思い出すというよりも瞬間的に過去を体験する。これはどうにもならない私の癖である。
その癖を直そうとしていた時期もあった。「過ぎたことを思い出しても仕方ないから考えないようにしよう」と何度も自分に言い聞かせたりした。そして、フラッシュバックがおきるたびに、私はまた過去に囚われている、なんて卑屈なんだ、しっかりしなければと自分を叱ったりなどもした。
今の私は、そういうことを自分に言い聞かせていない。主治医からアドバイスを貰ったからだ。
「思い出し癖はあなたの脳の癖。フラッシュバックのせいで寝れないとか病気にかかっているならば薬を出すが、あなたはそこまでの問題にはなっていない。むしろ、あなたの記憶力が役立っている場面の方が多いのではないか」
主治医の言葉を繰り返し思い出しながら理解したことは、つまり私は、普通の人よりも記憶の引き出しが滑らかに開くのだ。ということである。普通の人がウンウン唸って開ける「記憶の引き出し」が、私はまるでコマでも付いているように容易に開くのだ、ということである。
それからは、自分の思い出し癖に悩むことはなくなった。思い出し癖がやってきたら、「ああ、私、思い出してるな」それだけである。実際医者の言ったとおり、私の記憶力は私にとって役立つことが多い。たまに誤作動して私を苦しめることもあるが、それよりずっと多い場面で私を助けている。うむ、悪くない。可愛いやつめ、近う寄れ。
体質である、という発想はとても私を楽にした。だいたい、「過ぎたことを思い出すと辛いから、思い出さないようにしましょう」とは一体なんなのだ。貴様はアレルギー患者に向かって「むやみに免疫反応を起こさないようにしましょう」とでも言うつもりか。私は私の特性と、このまま上手くやっていきたいと思っている。
自分も同じ事が良くあります。 この記事をよんで、私も考え方を変えてみようと感じました。