僕は新野公介といいます。日本で無名、中国で有名な28歳です。
21歳のときに中国へ留学し、ネット上で人気者となりました。それから動画は中国国内で3億回以上再生され、SNSのフォロワーは300万人ほどいます。中国ではYouTubeやFacebookが規制されているため、独自のSNSが広まっています。
ウェイボー以外は日本人の方にはあまり馴染みが無いと思いますが、中国SNSの利用者数は凄まじく、まさにクローズドマーケットです。僕、新野公介は、そのクローズドマーケットで、全世界の中国人の方々から愛されています。中国的朋友们、非常感谢!
今の僕の拠点は、北京と福岡と東京です。北京以外にも上海、広州、深圳など、中国各地のコミケやイベントに参加しています。中国にいるときは、ファンの方に話しかけられたりや盗撮されることは日常茶飯事ですが、日本にいると誰からも相手にされません。
例えば中国決済システムのアリペイが日本でも流行していますが、実は僕は中国のアリペイ本社から中国人向けPRのお仕事を頂いています。ですので、訪日する中国人はアリペイといえば公介がPRしていたよねとなるのですが、現在アリペイを導入している日本の飲食店等で僕のことを知っている方はかなり少ないと思います。
日本の飲食店のレジでアリペイのマークを見るたびに、ここに僕の写真とか動画のQRコードとか貼ってくれたら売り上げアップのお役にたてるのに……と思います。さすがに自分から「僕アリペイのプロモーションやっているからサインあげますよ」とは言えないので、寂しい気持ちで店を去ります。
とはいいながら、このギャップ、当事者としてはとても面白くも感じます。母国の日本では完璧に見落とされ、中国では外国人として熱烈な歓迎を受けている僕という人間の視点から見る世界。それを本連載でお伝えできればと思っています。
まず、発端は2011年です。21歳の僕は佐賀大学で理系の研究をしていたのですが、テストと論文に追われ、体調を壊してしまいました。持病のアトピーと喘息が悪化し、引きこもりのような生活となりました。見かねた母が、なにか新しいことを始めてはどうか、例えば駅前留学とかで外国語に触れるのはどうかと言いました。
ここで母のいう「駅前留学」とは、「外国語スクールで外国語を勉強する」の意味だったのですが、僕はそれを本気の留学と勘違いしました。そしてそのまま大学の国際課へと向かったのです。その時期はちょうど夏休みの短期留学の締め切り直前で、選べる国は韓国と中国だけでした。
僕は迷わず、韓国を選びました。そう、韓国だったのです。理由は、キム・ヨナが可愛いからです。ちょうど浅田真央とキム・ヨナで世間が盛り上がっていた時期だったので、韓国に留学したらキム・ヨナみたいに可愛い子に会えるかなと期待しました。
そういう次第で韓国で申請しようとすると、事務員の方からパスポートの提示を求められました。パスポートなんて勿論持っていなかったので、そう伝えると、ならば韓国は無理だと言われました。