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2018/02/02

映画_RAW 少女のめざめ(評価/★:4)ネタバレあり 感想~肉好きってレベルじゃねーぞ!~【映画レビュー】



映画 RAW 少女のめざめ 感想 評価 レビュー


◆RAW 少女のめざめ  鑑賞◆


評価/オススメ:★★★★

文月的採点(44/50点) 
映画 RAW 少女のめざめ 映画 感想 レビュー
この作品ジャンルは?:ホラー/スリラー

オススメしたい人は?:ホラー好き。ただし、幽霊/モンスターの類は出てきません。
警告する!絶対にデートなどで彼女や奥さん、家族を連れて行ってはいけない!
独りで鑑賞せよ!繰り返す、絶対に独りで鑑賞せよ!友達と行っても、帰りに会話なくなるぞ!その後食事になんかいけないぞ!

印象を一言で?:目を背けたくなるほど痛い、悪寒が走るほど怖い、吐き気がするほど気持ち悪いけど、アノ美しき狂気がどこまで行くのか見届けたくなる…

グロテスクですか?:その辺で量産されているB級ホラーのゴア表現よりも、本作のほうが余程グロテスクです。女性は特に注意してください。


◆synopsis◆


徹底した菜食主義をとっている一家があった。

その家族の16歳になったジュスティーヌは、両親と姉と同じ獣医科大学に入学することになる。

初めて親元を離れて、見知らぬ新しい環境である大学の寮で暮らし、生活する不安に駆られる彼女。

両親に車で寮まで送ってもらうが、寮にいるはずの姉アレックスに電話をかけるもつながらない。

途方に暮れつつも、仕方なく一人で寮に向かいルームメイトと対面するが、女性との相部屋を希望したはずなのに、そこにいたのはアドリアンという男性。

「俺はゲイだから」と言われてもなんの慰めにもならない。

さらに追い討ちをかけるように、『フルメタル・ジャケット』も真っ青の上級生による新入生歓迎のハードコアな儀式としごきが突然始まり、地獄の日々が幕開け。

ようやく姉と出会えて安堵するが、狂乱かつ過酷な日々が続く。

そんな中、彼女は上級生となんと姉から仲間に馴染むために「動物の肉」を食べることを強制されてしまい・・・・

※公式HPより

※一部文月加筆訂正


◆comment◆


さて、皆様、準備はいいですか??

おフランスからとんでもない作品がやってきました。
2018.2.2から公開の本年屈指のイカれた作品でした

公式サイトのコピーである

「究極の愛」の物語というコピー

これには完全にやられました。

秀逸です。

鑑賞されたみなさまはお解りだと思いますが「本作で1番すごいのは文句なしにお父さん」ですな。

衝撃のラスト、とはこの作品の様な映画でこそ用いられるべきものです。

最後の最後に本当にトラウマ必至のラストカットが飛び込んできます。

究極の愛のひとつの完成形が観られます。

おそらく2018年前半屈指の、もしかしたら本年ダントツの狂気の世界、ぜひご堪能ください。

わたしがものすごくオススメしている「キュア〜禁断の隔離病棟」を遥かに超えて恐ろしいです。


怨霊、悪魔、モンスターといった「作られた」あるいは「想像上の」恐怖とは、それが非人間であるからこそ怖いと感じるのですが、ここに来て改めて「人間が本来持っている恐ろしさ、狂気」について思い知らされました。

鑑賞後に爽快な気分になることは、まずあり得ません。

本当にご注意ください。

下手すれば素敵な週末を暗く淀んだ気分で埋め尽くしてしまうかもしれません。

決して男性諸君は彼女や奥さん、家族を連れて鑑賞に行かないように。

PTAに禁止処分を喰らうこと10000%保証します(笑)


…とはいえ、本作の本質というか、何をもって恐怖とするのかという点については改めて考えさせられました。

単純な事象(出来事、事柄)単体を怖いと思うのか、その奥に広がりを見せる闇を怖いと感じるのか。

この作品はそのどちらも凄いのですが、わたしとしては断然後者を知ったときのおぞましさに鳥肌が立つ思いでした。

しかし、しかし、ですよ。

この映画を単純に「怖っ!グロ!キモ!」で片付けるのはあまりにも芸がない。

わたしたちの最も身近な行為である「食」

とりわけ誰もが口にする「食肉」

この作品で描かれていることというのは実は最も単純でありながら、人間的な良識からすると「ありえない」「怖気立つ行為」「イカれている」と感じさせるものになっています。

が、それって自然界では普通に行われていること。

なんですよね。

わたしたちの生活に目を向けてみてください。

スーパーで、コンビニで、レストランで、ファーストフード店で、そこかしこで「最初の原型など解らないように加工され」「おいしく味付けされ調理された」食肉を食べていることにこんな感情を抱くことは、まず無いでしょうな。

本作で主人公ら姉妹が見舞われる狂気と、わたしたちが普通に行っている食事のどこが違うというのでしょうか?

という強烈な問題提起がここにはあるのです。

本作を「狂気」と表現するのなら、わたしたちは食そのものを見直す必要がありますし、先述したようにそこら中で見かける肉食そのものを糾弾しなくてはならなくなります。

わたしたちが怖気立つとすれば、それはもっぱら「常識」「モラル」のフィルターを通して物事を観ているということに他なりません。

言ってみれば、自分の良識が世界の最小公倍数からブレていないか?

を確認するための作品という見方もできます。

同じ方面の作品である『グリーンインフェルノ』だとか、その他、いわゆるこっち方面の作品の根底にはある種自分たちの優位性を逆説的に表現しているという穿った感覚も内包されていて、それと同時に「人間も所詮は自然の一部」であるという本能的な面を単に表現しているだけに過ぎません。

怖いもの見たさ、というよりは、自分たちも恐ろしい行為をしていることを確認して、安心する過程こそが『きちんとした向き合い方』なんでしょうな。

主人公の姉妹が何で獣医学部なんかに…

え、そう言えばこの一家は獣医の家系なのか…

…ということは、まさか、うっ、ぶべら!!!!!

弱肉強食、食物連鎖、成長と性の目覚め、そして食べる≒生きるということを描くのに、かくも美しき姉妹をモチーフに描いたことが、本作品が描く人間の本質とは実に官能的であると表現しているのですな。

狂気と美は紙一重。

ストーリーラインとしては非常に単純です。

年頃の妹が獣医学部へ入学し、そこで家の規律を破っている姉と遭遇。
通過儀礼と称したある行為をきっかけに、自分の変化に気がついていく。

通過儀礼というのも、映画『キャリー』をモチーフにしたようなもので、
さらに動物の内蔵を食べさせるという、これが日本なら即拡散、即炎上、即まとめサイト立ち上げ、即首謀者特定、即大学が記者会見レベルのえげつないもの。

主人公の少女が見舞われる変化が普通の娘と違うのは、食わず嫌いだったという言葉では表現できないほどの食肉への渇望となって現れてしまうところにあるのです。

そして、それが異性への関心に結びつき、爆発してしまう。

気がつけばアレもこれも、食べる食べる…。

本当に美味しんでしょうね。

ゾンビ映画とは別のインパクトを感じる強烈なシーンが多いです。

本作で描かれるベッドシーンはラブシーンというよりも、ジャングルで獲物に組み付く肉食獣の恍惚さを想起させます。

肉が好きなのか?血が好きなのか?

いいえ、全部好きなのです。

たとえそれが、見ず知らずの人であっても…

肉親であっても…

好きになった相手であっても…


姉妹はもはや自分だけでは抑えきれないほどの衝動に苦しみ、それがぶっ飛んだ日常を送っているだけの馬鹿な若者ではないからである、とわたしたちが気がついた時に、それを受け入れるのか、拒絶するのかの2択に迫られます。

どちらがその選択をするのか、非常に見応え…というか、怖いけど早く結論を見せて
…とこちらも渇望。

そして語られる事実。

あぁ、そうなんだ、なんてこった…と落ち込んでいたところにあのラスト。

ここまで観客を突き放し、拒絶したまま走り抜けた制作陣の勇気に賛辞を送りたい。

最後にもう一言。

この映画を考えなしに狂っていると片付けるのは、本質的には間違いです。

彼女たちが間違っているというのであれば、明日から本当に菜食主義者になるしかありません。

単純なホラーではなく、実に深い、そんな一本。

2018年映画鑑賞 34本目
#トラウマ映画
post from #pixelbook

◆overview◆


・原題:Grave 2016年公開(フランス)
・上映時間:98分
・監督:ジュリア・デュクルノー
『Junior』『Mange』
・脚本:ジュリア・デュクルノー
     

・メイン・キャスト
ガランス・マリリエール
エラ・ルンプフ
ラバ・ナイト・ウフェラ

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