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2018年1月25日(木)
<ツイセキ>ジャパンライフ 全国で被害
記者「ごめんください」
取材班が訪ねたのは、奈良県に住む90代の夫婦。
玄関の扉を開けると、目に飛び込んできたのは、「ジャパンライフ」と書かれた商品の数々でした。
記者「ご主人の付けているこれ(ネックレス)はいくらぐらいで買ったんですか?」
被害者「100万」
記者「100万!?」
記者「いくらジャパンライフに預けてたんですか?」
被害者「3億8000万ほど。もうはらわた煮えくり返るほど腹立つわ」
全国の顧客から巨額の資金を集めた会社は、先月、事実上倒産。
しかし…!
【ジャパンライフ事業部長(説明会の音声 今月19日)】
「倒産をしないで、ジャパンライフが再建して復活して、
皆さんに返済をしていくのが、一番本当は最高の話なんですよ」
一体、何が起きているのでしょうか。
問題となっているのは、健康機器の販売会社「ジャパンライフ」。
1974年に創業し、主に「磁気治療」をうたった商品を販売。
パンフレットには、数百万円もする“超高額商品”が並んでいます。
さらに、ジャパンライフが、巨額の資金を集めるためのある方法が…
「オーナー商法」
「オーナー商法」の仕組みはこうです。
まずはオーナーとなる顧客が商品を購入。
商品はジャパンライフに預けます。
ジャパンライフはその商品を別の顧客に貸し出し、
そこで得られるレンタル料を、オーナーに「配当」として還元するというものです。
商品の購入代金に対し、年6パーセントほどの利息を
1か月ごとに分割して支払っていました。
被害者の佐藤さん(仮名・90歳)
「(職員から)「オーナーにしろ」って言われて。利息でもらえるから、増やしててん」
奈良県に住む佐藤さん夫妻(仮名)。95歳と90歳の2人暮らしです。
25年ほど前、友人から「無料で昼食が食べられる」と誘いを受けて訪れたのが、ジャパンライフの会合でした。
記者「初めて買ったものは?」
佐藤さん「お布団。行った日の夜買ったわ、2人分。
1人分で50万どころじゃ済まんかったやろうな」
その後も「健康のためなら」と、色んな商品の購入とレンタルを繰り返してきました。
佐藤さん「これ(ブレスレット)も20万」
記者「20万、40万、60万、80万、100万。
(ご主人)100万円分付けてるんですね!これはネックレス?これも100万ですか?」
記者「これは何ですか」
佐藤さん「ベスト」
記者「今は着てないんですか?」
佐藤さん「着てない。重たいし暑い」
さらに、「銀行預金や保険よりも断然お得だ」と職員から勧められたのが、
「オーナー商法」を始めとする資産運用でした。
記者「いくらジャパンライフに預けてたんですか?」
佐藤さん「3億8000万ほど」
記者「利息は月いくらぐらいもらってたんですか?」
佐藤さん「190万ほど入っててん。入ってくるお金を毎月100万積み立てて、
それをまた短期の(運用)に入れててん。(追加で)70万円(入れる)月もあるし、80万円(入れる)月もあるし」
つまり、月々の配当およそ190万円も、ほとんどを職員に再び預けて、
運用を任せるほど、信用していました。
しかし、ジャパンライフは先月、事実上の倒産。
その商法が法律に違反するとして、消費者庁から1年間で4度の行政処分を受けていたのです。
負債総額は2400億円以上にのぼり、配当も完全にストップしてしまいました。
記者「今、口座いはおいくらぐらいお金が入っているんですか?」
佐藤さん「100万ほどあったけどな。年金を取り崩してやな、ちょっとずつ。
死んだら葬式代もだいぶいるんやな。厳しいわ」
【兵庫弁護士会の無料相談】
「もしもし、ジャパンライフ110番です」
全国の消費生活センターには、過去10年間で2300件近い相談が寄せられていました。
契約者の平均年齢は73.5歳、
平均の契約金額がおよそ1900万円にものぼる“異例の高額被害”だといいます。
消費者問題が専門で、ジャパンライフの被害弁護団の一員でもある向来(こうらい)弁護士は、
「『濃密な人間関係』が被害の高額化につながっている」と指摘します。
【被害者弁護団 向来俊彦弁護士】
「地方だと、自分の買い物に行くときとか病院に行くときの足がないと、
送り迎えまでジャパンライフの担当者がしてくれるという事案もあったようですね。
保険も解約させられて、定期預金も解約させられて、ジャパンライフに全部つぎ込んでいると。
全財産失いましたっていう方が結構おられますね」
事実上の倒産に追い込まれたジャパンライフは、ことしに入り、新たな動きを見せています。
【つくば店説明会 事業部長の音声】
「ジャパンライフの基本的な考えは、倒産をしないということ、
潰さないということ、これが最大のポイントです」
全国各地で開いている顧客に対する説明会。
そこで語られた驚くべき展開とは?
これから流すのは、今週月曜日、名古屋市での説明会の音声です。
【事業部長】
「様々なジャパンライフに対しての、情報、報道、マスコミ、ネット等で、皆様は大変不安になられたと思います。
『事実上の倒産だ』と、こういう言葉を皆さんは非常にご覧になられたと分かります。
不渡りにはなりましたけど、凍結はもう解除になっていますから、通常の営業はできています。
よって一般で言う倒産には値しませんと、こういう話です」
冒頭で、倒産を否定した事業部長の男性。
そのうえで起死回生の一手を打つと宣言します。
【事業部長】
「事業計画及び返済計画書、三か年計画。
まず左上のところに『販売体制の構築について』と書いてあります。
一番、新販売会社『KEN-SHIN」の設立」
なんと、“販売専門”の新たな会社を設立し、
多額の投資をしている顧客に、さらに商品の購入をもちかけたのです。
【事業部長】
「600万の商品は右側にありますように、新価格は100万円になりますよと。
100万円の商品が、右側の新価格で30万円でお求めになれますよ。
随分購入しやすい価格になりましたと。皆さんの協力も必要ですよと。
なぜ?協力をしていただければ、返済がさらに早まりますよと」
こうした売り上げを原資に、1年目には40億円、2年目に100億円、
3年目には140億円を返金。
5年で返済することが目標だと話しました。
こうしたジャパンライフ側の説明を、顧客はどう受け止めるのか!?
愛媛県松山市の会場では、この問題を象徴するような場面がありました。
【四国地方の説明会の音声(今月20日)】
「必ずやります私は、一つお助け下さい、よろしくお願いします」(拍手)
先月、事実上倒産したジャパンライフ。
にもかかわらず、倒産を否定し、必ず返金すると訴える顧客への説明会。
現実味はないように見えますが、愛媛県松山市の会場ではこんな場面が…
【顧客の男性】
「配当金が無くなったらもう何もないんですよ。食べるものも無いんですよ。
どうしていくか。きょうでも返してほしい。
悔しさ、虚しさ、この悲しさを受け取ってもらって、一銭でも、一秒でも早く、
私たちの手元に送り付けて欲しいんです、お金を」
返金を訴える顧客の悲痛な叫び。
しかし、新会社の会長とされる人物が口を開くと、空気が一変します。
【新会社の会長】
「私はね、(事業)部長が元気で、これだけの全国で、あの騒動の中で一人一人堂々と話されて。
なんでこの方が、ここまで言われなきゃいけないのかと。
私は本当に奮い立って頑張ります。部長きょうはありがとうございます」(拍手)
「必ずやります私は、一つお助け下さい、よろしくお願いします」(拍手)
顧客からは拍手が起こりました。
参加した人によると、説明会の後には、「連絡網代わりに書いてほしい」と依頼された
新会社の「活動申込書」に記入する人の姿が目立ったと言います。
【顧客の男性】
「(ジャパンライフは)『返済をする』と。『払うことを、本社が検討している』と」
【顧客の男性】
「一生懸命頑張って、これから3年ないし、5年計画で
返金は少しずつでもしていくからということで。期待は持ってるけど…」
しかし、弁護士は…
【被害者弁護団 向来俊彦弁護士】
(Q.専門家の目から見て、返金は現実的だと思いますか?)
「いやー、無理でしょうね。これができるのであれば、今までだってやっていたわけで。
いま、何千億という債務超過になっている会社が、いきなり来年から今年から、
80億、180億という利益をあげるのは、到底無理だと思いますね」
被害の連鎖を生まないためには、どうすればいいのでしょうか。