原油市場における「ブラックスワン」は何か?

サウジアラビアの減産はいつまで続くのか

2018.02.02(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52232
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「サウジのバフェット」アルワリード王子釈放 汚職容疑で拘束

サウジアラビアのアルワリード・ビン・タラール王子(2017年7月4日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / ISHARA S. KODIKARA〔AFPBB News

2018年に入り、米WTI原油先物価格は1バレル=60ドル台半ばで堅調に推移している。好調な世界経済がもたらす原油需要の増加期待と、OPECをはじめとする主要産油国の協調減産が下支えとなり、昨年半ばから緩やかな上げ相場が続いている。

 だが、この傾向はいつまで続くのだろうか。

 今年に入ってから、原油価格の上昇は投機資金が牽引する色彩が強まっている。欧米の原油先物市場で、投機資金による買い越しが拡大している(1月29日付日本経済新聞)からだ。米WTI原油先物の買い越し幅は3週連続で増加し、約72万枚と過去最高を更新した(半年前の1.7倍)。北海ブレント原油先物も2017年7月から急増し、半年前の2.7倍となった。

 原油の世界的な需給バランスも不透明だ。昨年第2四半期から第4四半期まで、需給バランスは引き締まった状態が続いていたが、今年第1四半期は昨年に比べて需給が緩むとされている。まもなく暖房油の需要ピークが過ぎガソリン消費が増加するまでの端境期に入ることから、「持ち高調整の売りが出る」との警戒感が出始めている。足元ではシェール企業が増産に備えた「売り」が増加する兆しも出始めている。

 原油の強気相場の最大の功労者であるサウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は、スイスで開催された「ダボス会議」で1月23日、「需給は改善に向かっている」としながらも「マーケットの脆弱性、そして潜在的な『ブラックスワン』を警戒している」と発言した。

 ブラックスワンとは「マーケットにおいて事前にほとんど予想できず、起きたときの衝撃が大きい事象」のことを指す。元ヘッジファンド運用者としての経験を持つナシーム・ニコラス・タレブが2006年に『ブラックスワン』と題する著書を出した直後の2008年にリーマンショックが起きたことから、この言葉は人口に膾炙した。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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