本音と建て前。これらをうまく使いこなすのは、社会人にとって、生きていくうえでも必要なスキルだろう。しかし、「本当にうまく使いこなせてもいいのだろうか?」と、時には悩むこともある。
▼インタビュー!東京カランコロン、メジャーレーベルで何があったんですか?
上記のような「そんな悪口言って大丈夫なの?」と思うような、ドキッとする記事タイトルが並ぶメディアが「BASEMENT-TIMES」だ。「音楽、バンドをより楽しむためのウェブマガジン」をコンセプトに、2014年サイトをオープンした。
インターネットでは、極端な物言いをしたり過激なインタビューを掲載したりすると、激しく炎上してしまうケースもある。こんなきわどい記事を出し続けたら、嫌われてしまう気がするけれど……なぜこのウェブマガジンは、建前のない本音全開の記事を公開し続けるのだろうか。編集長の谷澤千尋さんに話を伺った。
「より広く読まれるもの」を求めたら、今の形になった
――以前から「BASEMENT-TIMES」を個人的によくチェックしていました。インパクトのある記事がずらりと並んでいますが、そもそもどうしてこのウェブメディアを作ろうと考えたのでしょうか? サイトオープンの経緯を教えてください。
きっかけは、大学生のときの同級生の集まりです。いまメインで記事を書いている石左(いしひだり)が、周りに声をかけて始まりました。自分は「就職したくないな」と思っていたので、ちょうどいいやと思って参加して……。当時は5~6人いましたけど、どんどん就職して辞めたり、就職しながら続けていたけどケンカして辞めたりしました。残っている創業メンバーは、石左と自分だけ。あとは今年の頭に知り合いが1人参加して、今はこの3人で運営しています。
――音楽好きの仲間が集っているというのがコンテンツからも感じられるのですが、最初はなにか意気投合をして、始めたってことでしょうか?
いや、全然。石左のことも、初対面から嫌いでしたよ(笑)。でも、今はたまたま方向性が似ているのか、あんまり喧嘩しなくなりましたね。最近は仲良いですよ。関わる人は、みんな我が強いタイプなので、まあケンカ別れも想定の範囲内でした。
――2014年からだと、オープンして3年ですね。谷澤さんは現在、どんな仕事をしているんでしょうか?
ベースメントタイムスでは、なんでもやっています。記事を書きたいわけでもなかったので。始めてからわかったんですけど、文字を書くにも音楽と同じようにある程度の才能が必要なんだなぁと思って、今年から自然とサポート側に回るようになりました。連絡や請求書の発行、サイトのコードいじり、記事編集、あとは手が空いたら原稿を書くくらいで。基本的には、石左に取材や執筆を任せています。攻撃力の強い石左が前線に立って、自分は回復魔法をかけてあげるイメージですね。
――サイトは、ミュージシャン側に媚びないのを大切にされているのかな、と思ったのですが、サイトの運営で大切にしているコンセプトはありますか?
音楽業界って先細りじゃないですか。明るい話題もないし。しかも、音楽のコミュニティってだんだんマニアックになっていって、身内だけで喜べればいいってものも多いと思うんです。運営するうえで大切にしているのは「より広く読まれるもの」ということ。あとは、学生に読んでほしいですね。高校生のときに聴いていた音楽って、その後の人生を左右するものだと思うんですよ。これから音楽を始めようって人もいるかもしれない。なので、若い人が、クリックしたくなるような企画や切り口を心掛けています。
建て前だけではおもしろくない
――「あ、バンドマンの元カレを殺したい!バンドマンの元カレを殺す5つの手法」「RADWIMPSの歌詞は恋愛でベロベロに酔っぱらった状態で書かれているからすごい」など、インパクトのあるタイトルが多いですよね。これは、「読まれよう」と思った結果ということなんですね。
そうですね。誰かを煽ろうという意識は、あまりなく、自然と今の形になったので。読者からはよく「タイトルでけなしておいて、本文で褒める」パターンが多いとは言われますね。最後までけなしきっているものも少なくないんですけど。建て前だけのインタビューやレビューがないから、そういうタイトルになるのかもしれないです。
――建て前ですか。
最近、インタビュー記事を読んでいると、建て前が多くて、お利口すぎるというか……。悪口が一切ないし、きれいすぎておもしろくないんですよね。読者もバカじゃないので、嘘臭さを敏感に感じ取るものだと思っています。本音と建て前のギャップがあればあるほど、つまらないじゃないですか。だから、全部本音で書いています。
メディアは成長して関係者が増えるにつれて、建前を使わないといけなくなってくる場面が増えてくるものだと思うんです。でも、自分たちはもともと思いっきり本音でしか書いていないので、むしろ関わる人が増えても、逆に「いつもの」本音で書くのを求められますね。
――取材相手の本音を引き出すコツってありますか?
場合によってはお酒を飲みながらのインタビューをします。あとは、雑談が多いです。ほとんど音楽とは関係ないような雑談を終えてから、いよいよ本題ってパターンもよくあります。
――確かに相手も話しやすくて、思わず出てきてしまう話もありそうですね。ちなみに、インタビューではなく、コラムを書いたときにファンから怒られたりしないんですか?
意味の分からないメールはたまに来ますが、実際に真剣に怒られることはないですよ。あとは、ちょっと悪口っぽくなるときには「あくまで主観です」という部分を強調しています。たとえば、「デブ」「くさい」のような悪口って、その通りだったら反論できないじゃないですか。だから、そういった悪口ではなく、つっこみができる悪口です。「こう思う」という自分たちの主観をあくまで提示するようにこだわっています。読者に気を遣って自分たちの考えを曲げたりはしませんが、読者の主観を否定することもありません。
自分たちの記事は、友達との居酒屋での会話だと思ってもらえるといいですね。「広く読まれたい」「盛り上げたい」「おもしろいと思われたい」と思ったら、建て前は邪魔なんじゃないですかね。
(文・取材:松尾奈々絵/ノオト)
取材協力:▼BASEMENT-TIMES
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