中央アジアのカザフスタンで、深刻な絶滅の危機に瀕しているウシ科の動物「サイガ」。2015年に発生した大量死の原因が、ようやく判明した。(参考記事:「絶滅危惧種サイガが大量死、生息数が半減」)
2015年の春のこと。カザフスタンの草原には何キロにもわたり、至るところにサイガの死体が転がっていた。全世界の生息数の半分以上にあたる20万頭以上のサイガが、原因不明の病に倒れたのだ。(参考記事:「動物の大量死で何が起こる?イノシシ3トンで実験」)
ヤギと同程度の大きさで、思わず笑ってしまいそうな外見をしたサイガは、ゾウの鼻を押しつぶしたような柔らかい鼻を特徴とする。その大量死したサイガの死体を科学者が詳細に調べた結果、死因はパスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)血清型Bという細菌による出血性敗血症だったことが明らかになった。この調査結果は、1月17日付の科学ジャーナル「Science Advances」に発表された。(参考記事:「ペットとのキスはどれほど危険なのか?」)
パスツレラ菌は、サイガの大きな鼻に常に存在しているとみられ、おそらく生まれたときから存在する。しかし、例年にない高温多湿の気候が続いたことで、細菌が異常に増殖し、サイガの体が抵抗しきれなくなり、死に至ったのではないかという。
現在、およそ10万頭のサイガが生息していると考えられている。過去数十年の間に、肉や角を狙った狩猟や、人間の活動による生息地の分断で数が激減していた。フェンス、道路、線路、パイプラインの建設などによって、群れの移動が妨げられているのだ。(参考記事:「群衆に火をつけられ、逃げるゾウの親子」)