日銀がマイナス金利政策を導入して2月で丸2年になる。金融機関の経営を一時圧迫してでも企業の資金需要を喚起し、デフレ脱却につなげることを目指したが、長期戦に突入。平均の貸出金利は1%割れが定着し、預金と貸出金の金利差からくる利益は2年間で14%減った。大手銀の2017年4~12月期の決算は基礎体力の低下を色濃く映す内容となった。
みずほフィナンシャルグループ(FG)が31日発表した預金と貸出金の利ざやという本丸の収入が主体の資金利益(みずほ銀行とみずほ信託銀行の合算)は5%減の5264億円だった。預金利回りはほぼゼロ%なのに対し、国内の貸出金の利回りは下げ止まっていない。
みずほFGのほか、同日決算発表した三井住友FG、三井住友トラスト・ホールディングス、りそなホールディングスの4社のうち資金利益が前年同期に比べて増えたのはりそなだけ。4社合計の資金利益は1兆6400億円で、マイナス金利政策導入前の15年4~12月期から14%減った。経費などを除いた実質業務純益はこの2年間で28%も減った。
相場環境で大きく振れる投資信託の窓口販売などの手数料収入と違い、資金利益は貸出業務から得られる銀行にとって基礎的な利益だ。全国銀行協会によると貸出金はマイナス金利政策の導入前から4%増えたが、お金の「値段」である貸出金利は低下。日銀によると貸出約定平均金利は2016年12月に初めて1%を割り込んでから、低下に歯止めがかかっていない。
銀行と企業の貸出契約は2~3年ごとに更新するのが一般的だ。マイナス金利政策の導入から2年が経過したことを考えると、高い金利での貸し出しの多くが「マイナス金利時代」の契約に切り替わっており、時間が経過するほど銀行収益へのインパクトは大きくなる。「銀行だけ課税されているようなものだ」(メガバンク幹部)
全国銀行協会の平野信行会長(三菱UFJフィナンシャル・グループ社長)は年頭の賀詞交換会で「昨年は銀行界にとっては長引く超低金利環境下で厳しさが増す一年だった」とチクリ。一方、日銀の黒田東彦総裁は「デフレ心理はなかなか解けない。当分、粘り強く金融緩和を続けていかなければならない」と応じて笑いを誘った。
マイナス金利が金融機関の体力を奪っているのは事実だが、人口減少や少子高齢化が続くなかで、預金と貸出金の利ざやに頼った事業モデルは転換を迫られている。マイナス金利を奇貨として、経営合理化や収益源の多様化といった構造改革を進められるかが、今後の収益力を左右する。