2018年1月31日、有限責任監査法人トーマツ(以下、トーマツ)が「企業のリスク・クライシスマネジメント実態調査」2017年版の結果を発表した。これは、国内上場企業における「リスクマネジメント」の認知・認識と対応状況を把握するため、2002年より調査を始めている。2017年版の調査対象は日本に本社を構える上場企業上位約3000社で、そのうち有効回答数454社の内容をまとめたものだ(調査期間は2017年8月~9月)。
なお、本調査では危機が起きる前に管理するもの、対策や準備などをリスクマネジメント、実際にクライシスが起きた後の対応をクライシスマネジメントと定めている。
本調査によると、国内で最も優先すべきリスクは「地震・風水害等、災害の発生」が35.9%、「法令順守違反」が29.3%と続き、2年連続トップ2となった。また、国内外ともに「人材流出、人材獲得の困難による人材不足」への課題意識が高まっているほか、国内では世間的に関心を集めていることもあり、「過労死、長時間労働などの労務問題の発生」が前回の10位から7位に上昇したのが特徴的だ。
一方の海外拠点は、子会社に対するガバナンス不全、法令順守違反、品質チェック体制の不備がトップ3と、海外進出やM&Aが増えた影響を反映した順位になった。
トーマツのディレクターであり、デロイト トーマツ 企業リスク研究所 主席研究員の 茂木寿氏は、「業界別にリスクの対象を見ていくと、情報・通信業は情報漏えいやサイバー攻撃といった事業の根幹に関わるリスクを筆頭に、人材の流出や風評被害もリスク管理の対象とする傾向が見られ、製造業は災害対策が中心だが、製品やサービスの品質問題、サプライチューンの寸断などが挙げられている」とし、「優先して対応が必要と思われるリスクでは、情報・通信業は情報漏えいやサイバー攻撃への優先順位が高く、人材の対応を急務とする意識が反映された結果になった。製造業はやはり災害対策が中心となるが、品質チェック体制の不備が高くなっている」と指摘。
これらのリスクに対して、リスクマネジメントプランの策定はどうなっているのだろうか。調査では、国内本社において「策定している」「一部策定している」が合計で約90%と高水準で、国内子会社でも同72%と高い結果になった。一方、海外に目を向けると子会社統括拠点、海外子会社とも57%台と2016年版と同様に策定途上傾向にあった。
特に、海外子会社では32.5%の企業が「策定していない」と答えており、改善の余地があるという(茂木氏)。
発生した年に関わらず、過去に災害や情報漏えいといったクライシス経験についての設問では、約半数(50.4%)にあたる229社で「経験あり」と回答があり、業種別では電気やガス業が80%、金融業が66.7%、陸・海・空運が61.5%と高かった。
注目は、過去にクライシスを経験した229社と経験のない225社の意識の差だ。
危機発生時の初動から事態の沈静化までの成功要因を、クライシス経験あり/経験なしで比較したところ、前者は経営トップのリーダーシップ、迅速に必要な資源を投入できたこと、トップの方針に従った現場のアクションが適正だったことがトップ3だったのに対し、後者は事前の準備ができていること、クライシス発生に備えた事前の枠組みができていること、情報ルートの整備を挙げた。
茂木氏は、「未経験企業は、危機管理マニュアルや事業継続関連の書類を作るのが大事と考えているケースが多いが、マニュアル通りに危機が起きた事例は過去にない。全ての面でトップによる意志決定が非常に重要であり、それを反映した順位になっている。さらに、リスクコミュニケーションが実際にできていないという認識がありながら、その対策が後回しになっている傾向があるのも気になった」と警鐘を鳴らした。
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