ノブレス・オブリージュ。「ネット配信」がアニメ界の救世主たらんことを。
みなさん、アニメの観かた(と作りかた)がガラッと変わりそうですよ。この度、アニメ制作会社のProduction I.G.(プロダクションアイジー)とbones(ボンズ)がNetflixと業務提携を結び、世界に向けたアニメの共同制作を始めることを発表しました。そして、その配信はもちろんNetflix。
Production I.G.:『攻殻機動隊』『PSYCHO-PASS(サイコパス)』『ハイキュー!!』『君に届け』といった名作を手がけたスタジオ。子会社であるWIT STUDIO(ウィットスタジオ)からは『進撃の巨人』も出ている、日本トップクラスの制作会社グループです。
bones:「骨のあるアニメを作りたい」という社長のもと、『血界戦線』『鋼の錬金術師』『エウレカセブン』『GOSICK』などを手がけてきた、強い軸のある制作会社。
この発表を受けて少しさみしく感じた方もいるかと思います。「日本のアニメは日本の土壌で育ってほしいなぁ…」、なんて。でも、制作会社にはそうもいってられない事情があります。ズバリ、お金です。アニメ市場全体の売り上げは上がっているものの、実際にアニメをつくっている制作会社にはそのうるおいが届いていません。「制作会社や下請けの4社に1社が、赤字」という調査結果も明らかです。この状況を招いているのが「製作委員会のシステム」であり、それを良しとしてきた日本のアニメ業界です。観る側がアニメを愛してきたのは常ですが、それだけに作る側全体からの愛を感じ取れないこの状況は、とてもつらく感じます。
そこに現れたのがNetflix。「2018年は80億ドル(約8700億円)を30の新たなアニメシリーズと80の映画にあてるよ」というのです。アニメの制作会社にとって、これに乗らない手はありません。
十分な予算に支えられながら、こだわったコンテンツ作りに集中できて、世界中のアニメファンに届けられる。制作会社にすればこの上ない話です。
これまでのカツカツ予算でも名作を産んできた制作会社です。予算がかけられるようになったら鬼に金棒、タチコマにゴースト、エドワードに賢者の石です。もうどんな作品を作ってくれるのか気になって仕方がない!
Netflixのロバート・ロイ(グローバルアニメの責任者)からは:
日本のアニメは独自のビジュアルインパクトやストーリーの深さが世界中のアニメファンから定評があります。このたびI.G様およびbones様と提携させて頂くことで、アニメ作品のプロデュースから配信にまで携わらせて頂くことを大変嬉しく思います。Netflixが日本のアニメ文化の発展、また国や言語を超えるグローバルな配信に貢献できれば幸いです。
制作会社がハッピーになることとアニメを広めてくれることは嬉しいんですが、これから共同制作されるアニメは世界向けであって、もう日本向けじゃなくなってしまうんですよね。日本人にしかわからない表現・ユーモアや、時事的な国内ネタなどとはおさらばです。
その代わりに国籍、年齢、言語を問わない作品が作られるわけですが、これが「固定観念にとらわれない独自の世界観があるアニメ」であることを期待しましょう。だって、日本人も楽しめる作品じゃなかったら日本外向けですから。
とはいえ、これを機に日本のアニメ業界が健全化してくれたらベストなんですけどね。やっぱり、アニメーターの心配をせずに見れるアニメが「良い」アニメです。
制作関係者・配信会社・視聴者がwin-win-winになれますように!
Image: Shutterstock
Source: Netflix Press Release
(西谷茂リチャード)