ネコのもふもふとしたかわいらしい手(前足)に関する新たな研究が、学術誌『Animal Behaviour』に発表された。大半の飼いネコに、左右どちらか好んで使う手、つまり「利き手」があるという。しかも利き手は性別によって異なり、オスは左手を、メスは右手を使う傾向にある。
利き手の性差は人間にも見られ、人間の男性には女性と比べて左利きが多い。「この違いは性ホルモンに関連するものだと考えられています」と、論文の著者で英クイーンズ大学ベルファスト校の心理学者デボラ・ウェルズ氏は語る。ただしその仕組みや原因については、まだわかっていないという。
今回の結果はまた、ネコがストレスにどう対処しているかを知る手がかりにもなる。人間に関する過去の研究では、左利きであることと、統合失調症などの疾患へのかかりやすさには相関関係があることがわかっている。(参考記事:「脳科学で克服する依存症」)
科学者たちは何世紀も前から利き手に注目していた。人間には左右どちらかの手を優先的に使う傾向が明らかにあり、字を書いたり歯を磨いたりする際、10人中9人は右手を使う。
人間以外の動物の利き手が研究されるようになったのは1970年代。これまでにクジラ、カンガルー、霊長類、さらには線虫までがその対象となってきた。こうした利き手の研究が目指しているのは、それがどのように発達するのか、また脳内でその発達を引き起こしている要因は何かを解明することだ。(参考記事:「クジラにも利き手が? 海面近くでは、ほぼ左回り」)
トイレに入るときは?餌を取るときは?
ネコの利き手を知るために、ウェルズ氏のチームは、北アイルランドの家庭で飼われているネコ44匹(うちメスが20匹)を対象に、それぞれの自宅で調査を実施した。(参考記事:「カンガルーは左利き、有袋類の利き手研究」)
3カ月にわたる調査においてウェルズ氏らが注目したのは、以下に挙げるネコの3つの行動だ。トイレに入る際にどちらから踏み出すか、階段を降りる際はどうか、そして、寝転がるとき体のどちら側を下にするか。ウェルズ氏らはまた、狭い穴に手を差し入れて餌を取り出すときに、ネコがどちらの手を使うかも調べた。