水質汚濁防止法では、施設の破損などの事故が発生し、有害物質等が河川等の公共用水域や地下に排出されたことにより、人の健康や生活環境に被害を生ずるおそれがあるときには、事故時の措置(応急の措置を講じるとともに、その事故の状況等を都道府県知事等に届け出る)をとることを義務付けています。
大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律(平成22年法律第31号)により水質汚濁防止法が改正され、平成23年4月から新たに指定物質についても事故時の措置が必要になりました。
事故時措置
- Q1 事故時の措置を講じる必要がある人はだれですか。
- A1 これまでは、[1]と[3]の方が対象でしたが、新たに[2]の方が対象となります。
- [1] 特定施設を設置する工場又は事業場の設置者
- [2] 指定施設を設置する工場又は事業場の設置者
- [3] 貯油施設等※を設置する工場又は事業場の設置者
- ※貯油施設等:原油、重油、潤滑油、軽油、灯油、揮発油及び動植物油を貯蔵する貯油施設又は処理する油水分離施設
- Q2 新たに規制の対象となる「指定施設」はどのようなものがあるのですか。
- A2 [1]有害物質(A3参照)を貯蔵又は使用している施設、[2]指定物質(A3参照)を製造、貯蔵、使用又は処理する施設が指定施設になります。
- Q3 有害物質と指定物質はどのようなものがあるのですか。
- A3 有害物質は、カドミウムなどの人の健康に被害を生ずるおそれがある物質として28種類あります(表1)。
指定物質は、有害物質や油を除き、公共用水域に多量に排出されることにより人の健康や生活環境に被害を生ずるおそれがある物質として56種類あります(表2)。
表1 有害物質一覧 有害物質 CAS番号 1 カドミウム及びその化合物 2 シアン化合物 3 有機燐化合物(ジエチルパラニトロフエニルチオホスフエイト(別名パラチオン)、ジメチルパラニトロフエニルチオホスフエイト(別名メチルパラチオン)、ジメチルエチルメルカプトエチルチオホスフエイト(別名メチルジメトン)及びエチルパラニトロフエニルチオノベンゼンホスホネイト(別名EPN)に限る。) 4 鉛及びその化合物 5 六価クロム化合物 6 砒素及びその化合物 7 水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物 8 ポリ塩化ビフェニル 1336-36-3 9 トリクロロエチレン 79-01-6 10 テトラクロロエチレン 127-18-4 11 ジクロロメタン 75-09-2 12 四塩化炭素 56-23-5 13 一・二―ジクロロエタン 107-06-2 14 一・一―ジクロロエチレン 75-35-4 15 一・二―ジクロロエチレン 540-59-0 16 一・一・一―トリクロロエタン 71-55-6 17 一・一・二―トリクロロエタン 79-00-5 18 一・三―ジクロロプロペン 542-75-6 19 テトラメチルチウラムジスルフイド(別名チウラム) 137-26-8 20 二―クロロ―四・六―ビス(エチルアミノ)―s―トリアジン(別名シマジン) 122-34-9 21 S―四―クロロベンジル=N・N―ジエチルチオカルバマート(別名チオベンカルブ) 28249-77-6 22 ベンゼン 71-43-2 23 セレン及びその化合物 24 ほう素及びその化合物 25 ふつ素及びその化合物 26 アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物 27 塩化ビニルモノマー 75-01-4 28 一・四―ジオキサン 123-91-1 表2 指定物質一覧 指定物質 CAS番号 1 ホルムアルデヒド 50-00-0 2 ヒドラジン 7803-57-8 3 ヒドロキシルアミン 7803-49-8 4 過酸化水素 7722-84-1 5 塩化水素 7647-01-0 6 水酸化ナトリウム 1310-73-2 7 アクリロニトリル 107-13-1 8 水酸化カリウム 1310-58-3 9 アクリルアミド 79-06-1 10 アクリル酸 79-10-7 11 次亜塩素酸ナトリウム 7681-52-9 12 二硫化炭素 75-15-0 13 酢酸エチル 141-78-6 14 メチル―ターシヤリ―ブチルエーテル(別名MTBE) 1634-04-4 15 硫酸 7664-93-9 16 ホスゲン 75-44-5 17 一・二―ジクロロプロパン 78-87-5 18 クロルスルホン酸 7790-94-5 19 塩化チオニル 7719-09-7 20 クロロホルム 67-66-3 21 硫酸ジメチル 77-78-1 22 クロルピクリン 76-06-2 23 りん酸ジメチル=二・二―ジクロロビニル(別名ジクロルボス又はDDVP) 62-73-7 24 ジメチルエチルスルフイニルイソプロピルチオホスフエイト(別名オキシデプロホス又はESP) 2674-91-1 25 トルエン 108-88-3 26 エピクロロヒドリン 106-89-8 27 スチレン 100-42-5 28 キシレン 1330-20-7 29 パラ―ジクロロベンゼン 106-46-7 30 N―メチルカルバミン酸二―セカンダリ―ブチルフエニル(別名フエノブカルブ又はBPMC) 3766-81-2 31 三・五―ジクロロ―N―(一・一―ジメチル―二―プロピニル)ベンズアミド(別名プロピザミド) 23950-58-5 32 テトラクロロイソフタロニトリル(別名クロロタロニル又はTPN) 1897-45-6 33 チオりん酸O・O―ジメチル―O―(三―メチル―四―ニトロフエニル)(別名フエニトロチオン又はMEP) 122-14-5 34 チオりん酸S―ベンジル―O・O―ジイソプロピル(別名イプロベンホス又はIBP) 26087-47-8 35 一・三―ジチオラン―二―イリデンマロン酸ジイソプロピル(別名イソプロチオラン) 50512-35-1 36 チオりん酸O・O―ジエチル―O―(二―イソプロピル―六―メチル―四―ピリミジニル)(別名ダイアジノン) 333-41-5 37 チオりん酸O・O―ジエチル―O―(五―フエニル―三―イソオキサゾリル)(別名イソキサチオン) 18854-01-8 38 四―ニトロフエニル―二・四・六―トリクロロフエニルエーテル(別名クロルニトロフエン又はCNP) 1836-77-7 39 チオりん酸O・O―ジエチル―O―(三・五・六―トリクロロ―二―ピリジル)(別名クロルピリホス) 2921-88-2 40 フタル酸ビス(二―エチルヘキシル) 117-81-7 41 エチル=(Z)―三―[N―ベンジル―N―[[メチル(一―メチルチオエチリデンアミノオキシカルボニル)アミノ]チオ]アミノ]プロピオナート(別名アラニカルブ) 83130-01-2 42 一・二・四・五・六・七・八・八―オクタクロロ―二・三・三a・四・七・七a―ヘキサヒドロ―四・七―メタノ―一H―インデン(別名クロルデン) 57-74-9 43 臭素 7726-95-6 44 アルミニウム及びその化合物 45 ニツケル及びその化合物 46 モリブデン及びその化合物 47 アンチモン及びその化合物 48 塩素酸及びその塩 49 臭素酸及びその塩 50 クロム及びその化合物(六価クロム化合物を除く。) 51 マンガン及びその化合物 52 鉄及びその化合物 53 銅及びその化合物 54 亜鉛及びその化合物 55 フェノール類及びその塩類 56 1,3,5,7-テトラアザトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン(別名ヘキサメチレンテトラミン) 100-97-0 - Q4 指定施設の設置者はどのようなときに届出を行うのですか。
- A4 施設の破損などの事故が発生し、施設から有害物質を含む水や指定物質を含む水が河川などの公共用水域か地下に排出され、人の健康や生活環境に被害を生ずるおそれがあるときに、都道府県知事(又は水濁法施行令で定める市の長)に届出を行う必要があります。
- Q5 事前の届出は必要ですか。
- A5 有害物質貯蔵指定施設の設置者は、都道府県知事等に対し事前の届出が必要です。
(参考) - Q6 どれくらいの量の物質が漏れたときには措置と届出を行うというような、基準はないのですか。
- A6 事故時において、排出先の河川等の水量や排出された物質の濃度や量を量っている余裕はないと考えられるため、Q4の回答を踏まえ、対応していただくことになります。「人の健康や生活環境に被害を生ずるおそれ」があるかどうかについても、事業者の方において判断していただくこととなります。
- Q7 指定物質をごく微量しか扱っていない施設、固体や気体でしか扱っていない施設も、対象施設となりますか。
- A7 なります。ただし、応急措置や届出を行っていただくのはA4のようなときに限ります。