2月1日
スリー・ビルボード
先日発表された「第90回アカデミー賞」ノミネーションにて、作品賞含む6部門7賞にノミネートした作品がいよいよ公開です。
何が嬉しいって、本命の作品がアカデミー賞授賞式前に観賞できるというのがいいですよね。
モンキーとしては、去年の東京国際映画祭で既に観賞しておりまして、生で町山さんのお話が聞けたこともあり、貴重な経験をしたことも手伝って、非常に心に残る作品となりました。
冒頭からこんなこと言うのもアレですが、非常に面白いです。その辺を感想部分で書いていきたいと思います。
ではいつもどおり作品情報からどうぞ!
作品情報
カナダのトロント国際映画祭で観客賞を受賞したのを皮切りに、ベネチア国際映画祭では脚本賞、ゴールデングローブ賞でも4部門受賞、そして米アカデミー賞に6部門ノミネート今年度の賞レースの大本命ともいえる本作。
田舎町で立てられた3枚の看板のメッセージによって、そこに住む住人達と登場人物たちに徐々に波風が立ち、予想もしない道に逸れていくブラックユーモア満載のクライムサスペンスです。
あらすじ
アメリカはミズーリ州の田舎町エビング。
さびれた道路に立ち並ぶ、忘れ去られた3枚の広告看板に、ある日突然メッセージが現れる。──それは、7カ月前に娘を殺されたミルドレッド・ヘイズ(フランシス・マクドーマンド)が、一向に進展しない捜査に腹を立て、エビング広告社のレッド・ウェルビー(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)と1年間の契約を交わして出した広告だった。
自宅で妻と二人の幼い娘と、夕食を囲んでいたウィロビー(ウディ・ハレルソン)は、看板を見つけたディクソン巡査(サム・ロックウェル)から報せを受ける。一方、ミルドレッドは追い打ちをかけるように、TVのニュース番組の取材に犯罪を放置している責任は署長にあると答える。努力はしていると自負するウィロビーは一人でミルドレッドを訪ね、捜査状況を丁寧に説明するが、ミルドレッドはにべもなくはねつける。
町の人々の多くは、人情味あふれるウィロビーを敬愛していた。広告に憤慨した彼らはミルドレッドを翻意させようとするが、かえって彼女から手ひどい逆襲を受けるのだった。
今や町中がミルドレッドを敵視するなか、彼女は一人息子のロビー(ルーカス・ヘッジズ)からも激しい反発を受ける。一瞬でも姉の死を忘れたいのに、学校からの帰り道に並ぶ看板で、毎日その事実を突き付けられるのだ。
さらに、離婚した元夫のチャーリー(ジョン・ホークス)も、「連中は捜査よりお前をつぶそうと必死だ」と忠告にやって来る。争いの果てに別れたチャーリーから、事件の1週間前に娘が父親と暮らしたいと泣きついて来たと聞いて動揺するミルドレッド。彼女は反抗期真っ盛りの娘に、最後にぶつけた言葉を深く後悔していた。
警察を追い詰めて捜査を進展させるはずが、孤立無援となっていくミルドレッド。ところが、ミルドレッドはもちろん、この広告騒ぎに関わったすべての人々の人生さえも変えてしまう衝撃の事件が起きてしまう──。(HPより抜粋)
監督
今作を手がけたのは、マーティン・マクドナー。
初めて聞く名前の方です。作品自体は知っていたんですが監督までは目がいってなかったですね・・・。
舞台の戯曲からキャリアをスタートしたそうで、劇作家としても高い評価を得ているようです。
長編映画3作目にしてオスカーを獲れるところまで来たってもんのすげ~才能ですよね。
そんな監督の過去作をご紹介。
最初に手がけた短編映画「six shooter」がいきなりアカデミー短編映画賞を受賞したことにより注目されます。
新人ヒットマンが訪れた先で、なぜか味方から命を狙われ巻き起こる攻防を描いたクライムアクション「ヒットマンズ・レクイエム」で長編映画デビュー。こちらもアカデミー賞脚本賞にノミネートされ話題となります。
その後作られたのが、スランプ中の脚本家が悪友のせいで危険な世界に巻き込まれていく様をコミカルに描いたクライムコメディ「セブン・サイコパス」。
2作ともユーモア溢れるクライムモノということで、その軽妙さと凶暴さに楽しめる作品だと思います。
キャスト
主人公ミルドレッド・ヘイズ演じるのはフランシス・マクドーマンド。
鬼の形相・・・。そもそもこの人の笑顔ってのが想像できないw
モンキー的には「ファーゴ」での妊娠中の署長しかイメージがないのですが、今作も「ファーゴ」同様、田舎で正義感を振るう女性ということで、共通点はあれど違う方向性を持った役柄ということで、これまた彼女の代表作になるのではないかと。
そんな彼女の代表作をご紹介。
コーエン兄弟の作品に多く出演している彼女は、デビュー作も彼らの作品。その後兄ジョエルとも結婚しています。
そんな彼らの4度目のタッグ作で、アメリカの雪降りしきる田舎町で起きた偽装誘拐からの惨劇と、それに関わる人々をユニークに描いた犯罪ドラマ「ファーゴ」で、アカデミー賞主演女優賞を獲得します。
その後も、スランプに陥った大学教授兼作家の主人公の身に、災難が降りかかって来るシリアスだけどコミカルなヒューマンドラマ「ワンダー・ボーイズ」、ロックバンドのツアー同行取材を任された15歳の少年の青春映画「あの頃、ペニー・レインと」、全米で最初にセクハラ訴訟に勝ったとされる実在の女性を描いたドラマ「スタンドアップ」など、アカデミー賞を中心に各賞で名前の挙がる活躍をしています。
近年は、テレビや舞台へと活動の幅を広げ、その才能を出し惜しむことなく発揮。そのせいか映画の出演ペースは落ちてはいますが、50年代のハリウッドを舞台に、スタジオ内のトラブルバスターが大物スターの探索をしながらどたばたを繰り返す、コーエン監督のハリウッド愛が満載の「ヘイル、シーザー!」に出演しています。
エピング町の署長、ウィロビーを演じるのはウディ・ハレルソン。
今年度のアカデミー賞、実はこの作品から2人も助演男優賞にノミネートされ快挙になりました。そのうちの一人が彼であります。
正直彼もノミネートされるとは思ってませんでしたが、今回も抑えた演技で存在感をアピールしておりました。
去年は、こんな先生いたら最高じゃん!!だった「スウィート17モンスター」や、それとは真逆のおっかな軍曹を演じた「猿の惑星:聖戦記」に出演。
今年は「スターウォーズ」シリーズスピンオフ作品、「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」に出演、6月公開予定です。
暴力的な白人警官・ディクソンを演じるのはサム・ロックウェル。
彼が出演している作品を見たのはいつ振りだろう・・・「アイアンマン2」以来か?それくらい久々に彼の演技を見ましたが、今回の彼はすごかった!とりあえずそこまで言っておきましょうw
今年度アカデミー賞助演男優賞にノミネートしたもう一人が彼であります。果たして受賞なるか。
とりあえず彼の出演作をサクッとご紹介。
どちらかというと存在感のある脇役というのが彼の持ち味。
刑務所内での物静かな巨体の男が魅せる奇跡を描いたドラマ「グリーンマイル」では凶暴な殺人犯として、放送打ち切り後も人気を博したSFドラマの出演者が、本気で宇宙を救う羽目になるコメディドラマ「ギャラクシークエスト」ではメンバーに入りたいけどひれないイベントMC役として、姿を見せないボスの探偵事務所で働く3人の美女の潜入ミッションを描いた「チャーリーズ・エンジェル」では、通信ソフト会社の創設者で、一癖ある役どころを熱演。
お茶の間の人気者だった男が、CIAの工作員と暴露したした本を基に作られた「コンフェッション」で初主演を果たします。
その後も、潔癖症の詐欺師が突然現れた14歳の娘と共に大仕事に挑む「マッチスティック・メン」、仕事のためたった一人でつきに旅立った男が、不可解な現象に陥っていくSFサスペンススリラー「月に囚われた男」、突如ヒーローとなった男の更なる試練を描いたマーベル映画「アイアンマン2」でトニーのライバル、ハマー役として出演し活躍しています。
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他のキャストはこんな感じ。
ミルドレッドの息子・ロビー役に、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」のルーカス・ヘッジズ。
ミルドレッドの元夫・チャーリー役に、「ウィンターズ・ボーン」のジョン・ホークス。
ミルドレッドに思いを寄せる男性、ジェームズ役に、「ピクセル」のピーター・ディンクレイジ。
ウィロビーの妻、アン役に「ジオストーム」のアビー・コーニッシュ。広告業を営む男・レッド役に、「X-MENファースト・ジェネレーション」、「ゲット・アウト」のケイレヴ・ランドリー・ジョーンズなどが出演します。
ここから観賞後の感想です!!!
感想
あらすじから話がガラリと変わる!田舎町で起きた出来事で人間臭さがにじみ出るユーモア炸裂の人間ドラマでした!!!
以下、核心に触れずネタバレします。
人間の表と裏。
閑散とした町の道路に立てられた真っ赤な大きな3枚の看板。
「私の娘はレイプで焼き殺された」、
「犯人は未だに捕まっていない」、
「警察署長は何をしているのか?」。
殺された娘への悲痛な思いと、黒人ばかり相手して何もしない警察に向けての痛烈なメッセージを、大枚はたいて広告費になげうった主人公。
街は騒然とし、住民の信頼も厚い警察署長が嘆願する。
「我々は決して職務怠慢などしていない。お願いだからはずして欲しい」
それでも自身を曲げない主人公。
娘の犯人は捕まるのか。それとも自ら復讐を実行するのか。
・・・・なんて書いてみましたが、こんな展開になんてなりませんw
見終わった後の感想は、え?ここで終わり?でもなんだろう、すげぇいいもん見た気がする!というようなザックリな気持ちを抱いたのですが。
思い返してみると、当初のあらすじなどから抱いた展開や予想など全く無意味だったことに気づき、 いざ観てみると、暴力がパない!暴言がパない!そこから溢れるブラックユーモアが面白い!と思ったら、センチメンタルな展開!何だそのオレンジジュース!笑えるのにウルウルしちゃったじゃねえか!
でもって、物語があれよあれよと表情を変えていき、人物の立ち位置も変えていき、犯人探しか復讐劇だと思っていた物語は、見事なまでの人間賛歌へと変貌を遂げていました。
何これ、奥が深ぇっ!さすが海外で評価されるだけあるし、アカデミー賞本命にもなるなぁと、あれこれ感じわけであります。
3人の物語。
この映画では、被害者であるミルドレッド、暴力ばかり繰り返すけどオツムの足らない警察官。信頼は厚いけど、実はあるものを抱えている警察署長3人が、見た目のイメージとは違う人間味ある部分を見せていく、というお話でした。
3枚の看板から始まる物語は、この3人の人物が、看板に書かれているような「表」の部分と、何も書かれていない「裏」の部分をみせていくことで、序盤まで見せていた面とは違う面を3人が絡むことで見せていき、それを皮肉さや不可思議さ、強さや弱さ、醜さ、優しさといったあらゆる表情や行動をユーモア満載で綴ったヒューマンドラマでありました。
そして何と言ってもこの映画で特筆すべきなのは、この後の展開が全く読めないということ。
ミルドレッドは、周りがどんなに喚こうが騒ごうが、一転の曇りも無くブレることのない復讐心の固まりなワケです。
悲しみに暮れている場合じゃない。一刻も早く無念を晴らさなければならない。例え周りの奴らが私を差別しようとも。
その勢いで神父が忠告に来ても追い返し、歯医者に行って文句を言われたら徹底的にやり返す。
アレ?この人被害者じゃなかったっけ?全然同情したくなるようなことしてないなぁって見てて思う人もいるかもしれません。
しかしながら、彼女にも弱さが見えてしまう部分が突然訪れたり、今まで暴力で行動してきた彼女が、ある人物によって態度を変えたりと変化していきます。
ウィロビーは、良心的な警察署長ですが、やはり看板を先に見てしまうと彼がちゃんと仕事して内容に見えてくるんですね。
で、今回の騒ぎを早く穏便に済まそうと奔走します。それには深い理由があるわけなんですが、彼のある行動によって事態が大事になっていくのです。
それはよき警察署長である前に、妻と娘の前でもよき父でありよき夫でありたいという願いから来るものだったわけです。
だから事件の早期解決というのは、本当に望んでいたことなんだというのがより理解できるのだと思います。
そして暴力的白人警官ディクソンですが、恐らくミルドレッドよりも彼のほうが主役だったんじゃないかというほど、見た目のイメージとは180度変わり、立ち居地も変わる活躍を見せます。
とにかく頭の悪さが要所要所で爆発するディクソン。国家機密だからいえないといっておきながら砂がいっぱいあるところといわれても、どこのことだかさっぱりわからないおバカっプリに大爆笑なんですが。
そして警察官に逆らうやつはみな逮捕なのだ~みたいな横暴な態度。差別的で暴力的な考えを持つ彼は、ミルドレッドが作った看板を見て、警察への冒涜と捉え様々な嫌がらせをします。
ホント嫌なやつです。
そしてある出来事がきっかけで彼はとんでもないことをやらかすんですね~。
ここからが彼の見せ所になるので伏せますが、序盤は彼の言ってる事やってる事で是非腹を立てておいてくださいw
と、このような人物設定から、徐々に姿を変えていき、人は見た目や言動だけでは図ることが出来ない部分を持っているというのを、この3人を通じて描いていました。
そして最初こそ自分の考えこそ正義と謳い、いがみ合っていた者たちが、年齢や性別価値観を超え、自分を理解してもらうために相手に歩み寄り同じ方向に向いていくという、人間の良心に基づいていくドラマでありました。
気づいてほしいのは、ミルドレッドはあくまで被害者で、事件を解決しようとしない警察は加害者的立ち位置で描かれてるにもかかわらず、実はそうではない事実が明かされ、終盤に向かうと、そこに正義と悪という対立構造は存在しておらず、人間と人間の感情で同じ方向へ向いていくドラマへと変貌を遂げているのです。
こういう映画は中々ない、大袈裟に言えば見たことないというほど、面白みのある作品だったと思います。
役者陣がすんげー!
今回主要人物3人がアカデミー賞主演と助演にノミネートする快挙を成し遂げた今作。
それもそのはず、ミルドレッド演じるフランシスマクドーマンドは今作でほとんど笑いません。常に怒り苛立ち暴言を吐きまくるおばちゃんと化しています。
服に至っては、バンダナにツナギと男らしい恰好。その姿はクリントイーストウッドそのもの、なんて声も聞こえますが、決して間違っていない例えです。
彼女がこの立ち位置で、この感情でやりたい放題しながら物語が進むので緊張感が生まれます。この緊張感を醸し出しながら演じているのが素晴らしかったですね。
ウィロビー演じるウディハレルソンも、ネタバレになりますが、途中でフェードアウトするまでの短い出演時間だったものの、のらりくらりと田舎町の警察署長をやっている風でありながら、実はものすごく街の事を、そして事件の事を考えていたという思いが表情からにじみ出ていました。
正直ね、このいかつい顔はまぁ間違えますよ、色々。しかもこの作品の前「猿の惑星聖戦記」ですからね。そんなこと考えるとナイスキャスティングだったなぁと。
そしてディクソン演じるサムロックウェル。
はい、上でも書きましたが、彼こそこの物語を引っ張っていた立役者だというのが見ているとわかると思います。むっちゃ暴力的で差別主義な不良警官ですよ。おまけに頭が悪い。こっそりABBAなんか聞いちゃってるお茶目な所もあれば、家に帰るとマザコン炸裂。
こんな人物どうやって演じるかってのをサムはやってのけちゃうんですね~。
そして徐々に内面から変わっていく姿や、意を決してミルドレッドのために体を張ってボコボコになる演技も見事。
他にもちょっと小生意気な広告業の男・レッドを演じたケイレヴ・ランドリー・ジョーンズも、どこかボンボンチックで鼻につく若者で、若干面白半分で広告引き受ける感じとかよかったし、ミルドレッドの息子を演じたルーカス・ヘッジズも、母に逆らえない感じとか表情から出ていて好感を持てましたね。
で、モンキー的にはジェームズ演じたピーターディンクレイジが凄く効果的な役回りを見せていて良かったです。彼体が小っちゃいっていう見た目のハンデを背負ってながらも、ミルドレッドを思って積極的にアプローチする役柄を演じていて、後半ミルドレッドに対して三下り半を突き付けるんですね。ここが彼の見せ場になっていてむちゃくちゃカッコイイんです。
あ~いかん、なんて言ってたかセリフを忘れた・・・。これじゃあカッコイイなんて説得力無いなぁ・・・。でもカッケーからw
アメリカの今の問題
さて、日本公開時のタイトルは「スリー・ビルボード」ですが、本国アメリカではタイトルが「Three Billboards Outside Ebbing, Missouri(スリービルボーズ・アウトサイド・エビング、ミズーリ)」となります。
ミズーリ州エビング街の外れの3枚の看板、という意味合いだと思うんですが、エビングというのは実は架空の町の名前だそうなんです。で、ミズーリというのはアメリカのミズーリ州の事を指します。
いやそんな長いタイトルにして~、日本と一緒でスリービルボードの方が覚えやすいじゃん!なんて思う人も多いかと思いますが、実はこの映画にとってミズーリを入れなければならない大きな理由があります。
このミズーリ州という場所は、アメリカ中西部のミシシッピ川沿いにある内陸の州として存在し、そこではかつて南北戦争での分断地点として合衆国から離脱するか、それとも残留するかという選択を迫られた上に、争いが頻繁に行われたという歴史があります。
州内では戦争以外でゲリラ戦が勃発し、無駄な血を流すような小さな争いが絶えなかったそうです。そんな対立が根付いてしまってたこの州では、最近も大きな事件が暴動へと発展してしまう事態がありました。
それがマイケル・ブラウン射殺事件です。
黒人で18歳の少年ブラウンは、大学入学を控えた8月、コンビニから友人と帰宅している最中、白人警官と言い合いになったのち、丸腰であったにもかかわらず発砲され死亡してしまったという事件がありました。
これに対し、地元の黒人たちは抗議デモを起こし反発。しかも、ブラウンくんがコンビニで窃盗したのではないかという防犯ビデオが流出し事態はさらに悪化。ミズーリ州は非常事態宣言を出すなど荒れる一方。
その後白人警官は裁判で不起訴処分となり事態は収まるかと思いきや、陪審員の白人と黒人の比率が平等ではなく、白人の方が多かったとして再び黒人たちが反発。暴動が起こるまで発展してしまう事態となったわけです。
ちなみに、この事件ではありませんが、無抵抗の黒人が白人警官によって射殺されたという実在の話を映画化した作品がありますので気になったら観賞してみてください。
アメリカではこれを機に各州で似たような事件が相次ぎ、アメリカ社会の中で人種問題が再び過熱してしまう事態となっています。
それに加え、トランプ大統領の誕生により、差別意識が高まり社会全体がかつてのミズーリ州のように分断されてしまうかもしれないところまで来ていることを考えると、この映画は非常に意味深いものとして描かれている作品なのではないでしょうか。
また、これを監督したマーティン・マクドナーはイギリス人なんです。イギリス人から見たアメリカという見方もできます。実際劇中では黒人はほとんど出てきません。キーパーソンもいますが、基本は白人たちが中心です。ディクソンも差別主義とは言っていても、黒人を痛めつけるような描写はありません。
ここも一つの見どころだと思います。白人同士がいがみ合っているのですから。きっとアメリカ人監督なら、黒人の比率をもっと高めて人種差別への問題提起なんかを色濃く描くのかもしれないけど、この物語はもっと大きなもの=肌の色以前に人間と人間のことを指している作品なんだと監督が言っている気がします。
そして娘がレイプされたという設定も、現在映画の大物プロデューサーが告発されたことでその声がどんどん大きくなっているセクハラ問題、性差別問題に関わってくるということもポイントになっています。
そういうことを踏まえてみるとこの映画が一体どんなメッセージを発しているのか理解しやすいのではないでしょうか。
それに加えこういった今のアメリカを象徴する作品はアカデミー賞にも有利になりやすいので、作品賞も獲れる、かも。
最後に
なんかすごく褒めまくっていますが、好き嫌いの多い作品かもしれません。どうしたってこういう展開になるんじゃないかってある程度予想しちゃうんで、それと違った展開になった時にどう受け止めるかによって評価は分かれるんじゃないかなと。
僕は初見が東京国際映画祭で鑑賞したので、これといった評判や内容なんかは一切入ってこなかったこともあって、久々にまっさらな気持ちで鑑賞できたこともあって楽しめたんですが、映画ニュースなんか見てるとどうしても色々情報が入っちゃうので、いろいろ想像なんかしちゃう人も多いかと。
逆にがっつりどういう展開になるのか想像しちゃってもいいと思うんですけどねwきっとそう来たか!って思えますから。
とにかくですね、サスペンス要素はそこまで大きくないのですが、全く予想できない展開のヒューマンドラマです。希望でもない、救済でもない、見終わった後にちょっとだけあたる木漏れ日のような、ほんの少しの温かさが残る映画でした。途中までは暴力ばっかりですけどねw
一応甘目で評価をw
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆☆☆☆☆☆★★8/10