[ワシントン 30日 ロイター] - 米国のトランプ大統領は30日の一般教書演説で、共和・民主両党に対し移民問題やインフラ投資法案で歩み寄るよう呼び掛けた。両党は昨年、大統領の統率力を巡って激しいつばぜり合いを演じた。
トランプ大統領は下院での演説で「この日、私はすべての議員に対し、意見の相違を超えて合意点を探し、われわれを選出した有権者に提供するため意見を一致させるよう求める」と発言した。
トランプ氏に関しては、2016年大統領選挙へのロシア介入疑惑や職務能力に関する支持率の低さが不信感につながっており、今回の一般教書演説でこれらの懸念を払拭(ふっしょく)する意図があった。半面、政策提案の詳細についてはあまり触れなかった。
大統領が超党派による合意を求めた一方で、共和党と民主党の間に深い溝が存在することは明白だ。演説中、共和党議員らが拍手喝采を浴びせたのに対し、民主党議員らは着席のまま沈黙を守った。
トランプ氏は、株式相場の大幅上昇や失業率の低下などの経済的成果を自らの手柄とし、昨年末に共和党が通過させた減税法案が経済成長に寄与するだろうと自賛。
「米国の素晴らしい時代が来た。アメリカンドリームの実現に、今ほど良い時期はなかった」と述べた。
<インフラ整備を呼びかけ>
また、トランプ大統領は一般教書演説で、新たなインフラ投資へ少なくとも1兆5000億ドル(約163兆円)を投じる法案を承認するよう議会に呼びかけた。
連邦予算からの拠出規模など詳細には言及しなかったが、今こそ米国の「崩壊しつつあるインフラストラクチャー」に対応すべきと主張した。
連邦予算からの支出を大幅に増やすよりも、「州・地方政府、あるいは適切なところでは民間投資も含めて資金を捻出すべき」と提案した。
トランプ政権はすでに、州による有料道路建設や高速道路沿いの休憩施設民営化をやりやすくする計画の概要を発表している。
マッキンゼー・アンド・カンパニーの試算では、2030年にかけて必要な国中のインフラ整備には年間1500億ドル、総額で約1兆8000億ドルが必要とされている。
大統領は、インフラ整備のための法案は規制を緩和したり、プロジェクトの承認プロセスを短縮するものでなければならないと強調。承認にかかる期間を2年、あるいは1年に短縮すべきとの考えを示した。
<北朝鮮に「最大限の圧力」>
一方、北朝鮮のミサイル・核開発問題については、トランプ大統領は「邪悪」と呼び、 北朝鮮の核ミサイル計画が近いうちに米国を脅かす可能性があるとの認識を示した。脅威が現実になるのを防ぐため、引き続き最大限の圧力を掛けると表明した。
北朝鮮を巡っては最近南北間協議が行われ、北朝鮮の平昌五輪参加が決まるなど進展がみられているものの、トランプ大統領の強硬姿勢は緊張が続いていることを浮き彫りにした。
トランプ氏は「北朝鮮の向こう見ずな核ミサイル計画はかなり近いうちにわれわれの本土を脅かす可能性がある」と指摘。「それを防ぐため、われわれは最大限の圧力を掛け続ける」と述べた。
また「米国と同盟国への核の脅威を理解する上で、北朝鮮政権の邪悪な性質に注目する必要がある」と語った。
北朝鮮に具体的にどのような圧力をかけるかは明らかにしなかった。
演説には、北朝鮮に拘束され米国に帰国直後に死亡した米国人のオットー・ワームビア氏の両親や北朝鮮からの亡命者も招待された。
トランプ氏は演説でワームビア氏を追悼した。
トランプ氏は今回の演説で、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を以前のように「ロケットマン」と呼ぶことはなかったが、「北朝鮮の非情な指導部ほど容赦なく国民を抑圧する体制は存在しない」と述べた。
<米国の知的財産守る>
トランプ大統領は、米国の知的財産を守ると表明したが、これまで政権が批判してきた中国の名指しは避けた。知的財産権の侵害や産業の国家補助など、不公正な貿易慣行を強く批判するとみられていたが、貿易に関する言及は3行だけで、詳細には立ち入らなかった。
同氏は「公正で互恵的な」貿易が必要と改めて表明。「悪い貿易協定を修正し、新しい協定を交渉するため作業を進める」とし「我々の貿易ルールの強力な施行を通じ、米国の労働者と米国の知的財産を守る」と述べた。
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