TGV遅延で仏国鉄トップの「神対応」が話題に

車内の乗客に自ら謝罪、異例の「逆走」も指示

緊急停車したTGVは在来線を走り、定刻から約1時間後、パリに到着(撮影:Ante Klecina, Croatia)

事件はフランスで1月16日に起こった。13時13分にリール・ヨーロッパ駅を出発した高速列車「TGV」が、その約25分後に緊急停止。列車は所要1時間1分で、終点のパリ北駅に14時14分に到着する予定だった。

緊急停止の理由は、前方約30km地点で高速列車「ユーロスター」が人身事故を起こしたため。飛び込み自殺だった。これにより、同じ高速線を走っていたすべての列車が緊急停止を強いられ、通常運行に戻ったのは約3時間半後、16時50分ごろのことだった。

この時、リール発のTGV車内では驚くべきことが起こっていた。なんと、その列車に偶然乗り合わせていたフランス国鉄(SNCF)の社長、ギョーム・ペピ氏が、車内でいらだつ乗客の前に姿を現し、「申し訳ありません。私も、皆さんと同じ状況にあります」と謝罪して回ったのだ。

言うまでもなく、SNCFはTGVの運行会社である。そして、社長自ら携帯電話で各所に連絡をとり、刻々と変わる状況を乗客に告げ、さらには各席に食事もふるまった。秘書を付き添わせることもなく、単独で車内を歩き、各乗客に謝罪した。このトラブル対応の姿からは、日本も学ぶべきことが多い。

高速線を逆走させるという“英断”

緊急停止したTGV車内で各乗客に謝罪して歩くペピ社長(撮影:Alexis de Vigan)

このフランスでの出来事の5日前、日本では正反対ともいえるトラブル対応が行われていた。1月11日、新潟県三条市を走るJR信越線の普通列車が大雪で立ち往生。JR東日本が積極的な救助策を取らなかったため、約430人もの乗客が約15時間半にもわたり車内に閉じ込められ、一夜を過ごした。翌12日の記者会見で官房長官が不快感を示したのは周知のとおりだ。

フランスでもペピ社長の行動は、あくまで“異例”として、マスコミ各社は報じている。だが、おおむね称賛の声が多い。「フランスの大企業の社長として、優秀なコミュニケーション力の持ち主」。そう評する声もあった。

SNCFは、この件に関し、追加で公式声明は出していない。ただ、同社広報担当に問い合わせたところ、「彼のとった行動はわれわれの誇り。だが同時に、当然の対応をしたまで。弊社は規則に従い、列車を運行する。そしてトラブル発生時は、組織的に応対に当たる」とクールな回答だった。

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  • NO NAME887a037aac97
    高速線を引き返す運用ができたのも信号方式の違いがあればこそ。
    あちらの線路は双単線であって、渡り線も複数あり、通常オペレーションの範囲で複線を両方向に走行可能なのでは。
    日本では逆走しようにも線路閉鎖が必須となるし、列車の走行頻度や在線数も桁違いで、とてもじゃないけど真似はできない。
    信越線の例でも同様の理由で除雪車の現場到着もままならなかったとされている。
    感情論としてはわからなくもない話だが、鉄道雑誌編集部所属とおっしゃるには、技術的要素を含めて論じないと批判の的になるだけではないか?
    up55
    down7
    2018/1/31 08:52
  • NO NAME106b9af2a7d8
    汝、「神対応」の名をみだりに唱えることなかれ。
    up41
    down2
    2018/1/31 09:00
  • NO NAMEa39b8fa297ee
    「社長他幹部が現場で陣頭指揮」の是非はともかく、新潟の一件でJRが「全員を一度に救助」に拘りすぎたのは確かに非難されるべきかと。もっと柔軟に対応すべきだった。もちろん気候他の条件を考慮の上で。
    ただし、迂回運行は彼の地ならではかと。元々在来線も(速度除き)ほぼ同規格な点や、逆線運行に対応した信号システムなど。
    up39
    down1
    2018/1/31 08:51
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