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2018年1月25日(木)

障害者殺傷事件 植松被告が「答えなかった質問」

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三條
「あの事件から、明日(26日)で1年半となります。
一昨年(2016年)7月。
知的障害者施設で19人の入所者が殺害され、27人が重軽傷を負った事件。
元職員の植松聖被告は、「障害者は不幸を生むことしかできない」と供述しました。
NHKでは、拘置所にいる植松被告と手紙のやりとりを続けてきました。
これまでに届いた手紙は10通に及びます。」

和久田
「しかし、なぜ偏った考えを持つようになったのか。
今、犠牲者や遺族に対してどう考えているのか。
具体的には分かりませんでした。
そこで繰り返し接見を申し込み、今回、初めて直接話を聞きました。」

黒くなった髪を後ろで束ねる植松被告

拘置所にいる植松被告。
手紙のやりとりを続けてきた記者が、今週、1時間にわたって面会しました。
逮捕時には短い金髪でしたが、伸びて黒くなった髪を後ろで束ねていました。

事件直後と変わらぬ「理由」

まず記者が尋ねたのは、「なぜ障害のある人を狙った事件を起こしたのか」。
事件から1年半たった今、改めて問いました。

植松被告
「罪のない19人の命とか言いますけど、重度の障害者は意思疎通が取れないので存在自体が不幸を作るんです。」

植松被告は、事件直後と変わらぬ理由を口にしました。

「自分の子どもなら?」の質問に口ごもる

19人が殺害された今回の事件。
犠牲者や遺族についてどう思っているのか尋ねました。

記者
「遺族の方は“言葉が話せなくても感情はある、生きているだけで幸せだった”と言っています。」*

植松被告
「それを幸せだと思うのは間違っているんです。
その幸せは、誰かの不幸の上に成り立っているんです。」

記者
「家族の立場になって想像したこと、ありますか?」

植松被告
「それは想像しますよ。」

記者
「もしあなたに子どもがいて、重度障害があったら、同じように殺すんですか?」

植松被告
「ちょっと…んー。」

「自分の子どもだとしたら」という質問に対しては、口ごもり、答えなかった植松被告。
それでも事件に対しては、一貫して「後悔はしていない」と主張し続けました。

きっかけは「施設での出来事」

記者
「なぜそのような差別的な考えを持つようになったのですか?」

植松被告
「施設に勤めなければ思いつかなかったと思います。
彼らと接する中で、徐々に必要ないと思っていきました。」

やまゆり園に勤めていた3年間で差別意識を持ったと主張する植松被告。
先月(12月)届いた手紙では、そのきっかけになったという出来事を記していました。

風呂場で発作を起こし、溺れていた利用者を助けたという植松被告。
しかし、利用者の家族からお礼はなく、助けたことへの疑問を持ったと記されていました。
この出来事について、改めて接見で尋ねると…。

植松被告
「大ごとにならなかったですけど、家族はシカトというか、そんな感じで。」

この一場面を捉えて、障害者は家族にとって不必要な存在だと感じたと一方的な考えを口にしました。

逮捕当時と同じような言葉を繰り返す

三條
「植松被告と接見した、横浜放送局の清水記者です。
差別的な考えは今も変わっていないんですね。」

清水彩奈記者(横浜局)
「こうした考えになぜ至ったのか知りたいと、今回、直接会ってさまざまな質問を投げかけました。
それでも繰り返される言葉は、逮捕された当時の供述と同じようなものばかりでした。
ただ、話している中で疑問や矛盾点について掘り下げて聞くと、答えをはぐらかされることが多かったです。
それはおそらく、自分の考えに固執することでしかみずからの正当性を保てないからではないかと感じました。」

犠牲者や遺族への謝罪の言葉なし

和久田
「犠牲者や遺族への謝罪の言葉はあったのでしょうか?」

清水記者
「明確な謝罪の言葉はありませんでした。
『被害者の存在そのものが幸せだった』という遺族がいるという現実を示しても、受け入れることはありませんでした。
今後も事件の真相を解明するために取材を続けたいと思います。」

犠牲者の人生伝える「19のいのち」

和久田
「NHKでは事件のあと『19のいのち』という特設サイトを開設しました。
遺族や関係者から話を伺い、19人それぞれにかけがえのない人生があったことを伝えてきました。
このサイトには650通を超えるメッセージが寄せられています。」

三條
「その一部をご紹介します。
知的障害がある息子をもつ40代の男性です。
『“障害者は不幸しか作ることができない”…そうでしょうか?少なくとも私の周りではむしろ笑顔が増えている気がします』。」

和久田
「障害がある弟がいる20代の女性です。
『家族の中心にはいつも弟の存在があります。障害を抱えていることは、周りの理解と支えがあればプラスになることばかりです』。」

三條
「こうした中、植松被告が言うような障害者への偏見を少しでもなくしていこうと、動き始めた母親がいます。」

植松被告に憤りを感じた母親

リポート:土橋和佳記者(水戸局)

茨城県日立市に住む向仁子さんです。
息子の壮一朗くんには、重い自閉症と知的障害があります。
向さんは、母親として、植松被告の言葉に憤りを感じたといいます。

向仁子さん
「本当にあの時は、すごくいろんなことを考えました。
“(障害者の家族は)不幸である、親がかわいそうだ”とか言っていましたが、ほんの一部をかいま見ただけで不幸と決めるなと。」

「本人は思いを伝えていた」

壮一朗くんは聴覚が過敏で、外出が苦手です。
学校に行くため起きる時間になっても、なかなか布団から出られません。
向さんは壮一朗くんの心の葛藤を感じとり、無理に起こそうとはしません。

向仁子さん
「焦らない。
今は待てる時期なのでひたすら待つ。」

1時間後。
自ら起きて、制服に着替えることができました。
ところが、学校に着いてからも、なかなか車を降りようとしません。

そこでも向さんはじっと待ちます。
10分後、自分で車を降りて登校することができました。

壮一朗くんの意思を尊重することを大切にしている向さん。
そう考えるようになった、きっかけがありました。
壮一朗くんは2年ほど前まで、かんしゃくを起こして家の壁を蹴るなど、不安定な状態が続いていました。
いやがる学校行事に参加させるなど無理をさせた結果、行動はエスカレートしていきました。

家族の負担も重くなり、思いつめていった向さん。
そんな時、出会った専門家からアドバイスを受け、壮一朗くんの行動の裏にある気持ちをくみ取るようになったといいます。

向仁子さん
「行きたくないんだよという思いを伝えていたんだと思うんですね。
明確に何がいやなのかというのも、私の中で上手に理解できていなかった。
本人を苦しめる要因として、それを取り除けるものがあるならば、まずは取り除こう、その努力をしようと方向転換できた。」

知ってほしい「気持ち伝えあうことはできる」

重い障害があっても気持ちを伝えあうことはできると、多くの人に知ってほしい。
向さんは先月、スポーツを通して障害者と大学生が交流するイベントを開きました。
行ったのは「卓球バレー」。
大学生に障害のある人をサポートしてもらい、一緒のチームでプレーします。

最初はお互いに緊張していましたが、次第に打ち解けて笑顔があふれます。

参加した大学生
「とても楽しいです。」

参加した大学生
「会話が難しくても、スポーツを通してなら一緒に協力できるかなって。」

向仁子さん
「壮一朗を育てていくうえではすごく大変です、もうこれは大変です。
ただ、不幸ではない。
私たちは不幸ではない、そこは間違いないです。
もしそこに親に不幸だと思わせるものがあるとしたら、たぶんそれは、その家族が置かれた環境が周りに認めてもらえない、どこにも頼ることができない、そういう環境が思わせているのだと思っています。
私が『ほら行って来い』と背中を押してあげられるような、場所と人と、そういうものがあったら幸せですよね。」


<関連リンク>
「19のいのち -障害者殺傷事件-」

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