書いた側は「軽い気持ち」でも書かれた方はそうではない
横浜DeNAベイスターズの井納翔一投手の妻に対し、ネットの匿名掲示板(2ちゃんねるではない)に「そりゃこのブスが嫁ならキャバクラ行くわ」と書き込んだ20代会社員の女性が、井納と妻の名誉を毀損したとし、井納投手から訴えられた。この件はこの女性がFRIDAYの取材に答えたもので、記事によると井納投手は通信会社に開示請求をし、この女性による書き込みだと特定。情報開示にかかった費用77万円を含む損害賠償金191万9686円を払うように要求する訴状が女性に届いたのだという。
女性は「書き込んだことは本当に反省していますし、200万円近いおカネも払えないので、どうしたらいいのか途方に暮れています」と同誌の取材に答えた。
この件についてはネットでは「井納、よくやった!」という声と「やり過ぎ・おとなげない」といった両方の声が出ている。前者については、名前を出して活動している人からのものが多い。後者の意見を述べる人は、過去に誹謗中傷を書き込んだことがあるのかもしれない。井納がしたような反撃が自分にも及ぶと思っているのか、「有名でもなんでもない自分だし、匿名だから何を言っても良い」特権を保有していると考えているか、「著名人及びその周辺の人には何を言っても良い。有名税だ」とアホな考えを持っているか、「言論の自由を守れ!」と考える世間ずれした活動家のどれかだ。
今回は井納投手に「あっぱれ」を出したい。一つは、「オレはともかく妻の悪口を書くヤツは許さん!」という男気を感じるからである。同様の件では、高須クリニックの高須克弥院長も1月7日、某ツイッターユーザーに恋人の西原理恵子氏のことを「慰安婦」扱いされ、激怒し謝罪をしなければただでは済まない、と通告した騒動がある。この時も自らに対する侮辱ではなく西原氏への侮辱だったことから高須院長は激怒した。「大切な人は守る」という気概を井納投手と高須院長は持っているのだろう。
もう一つ評価すべき点は、すでに大勢の人が表明していることではあるが、「一罰百戒」の効果が生まれたことにある。正直、ネットの悪口は、書かれる側からすれば、「グヌヌヌヌ」と思うもの。悪口を言う人間が目の前にいるのであれば、反論も可能だし場合によっては謝罪を引き出したり賠償金も取れるかもしれない。相手にもリスクがあるのだ。だからたいていの場合、リアルな場での悪口は慎重になる。だが、匿名のネットの書き込みの場合、相手を追い込むのが容易ではない上に、相手はどうせ反撃されないだろうと軽い気持ちでやっている。この「感情とリスクの非対称性」ともいうべきものがあるからこそ、ネットの誹謗中傷案件においては「やられ損感」と「徒労感」をもたらすのだ。
一方、書き込んだ人間は「はぁ~スッキリした。クソでもすっか」とばかりに書き込んだ暴言のことなど忘れ、スマホいじりながら便所でビビーッと屁をひりクソをブリブリと出し、その後は酒でも飲みながら他の人間の悪口を書いて眠くなったらグースカ寝てしまう。ネットに誹謗中傷を書いた人間は覚えていないし、軽い気持ちなのだろうが、書かれた側にとってはそうではない。