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2015/06/21

むやみな「ポジティブ思考」があなたのやる気を削いでいる!?

いつも楽観的でいなければ、夢は実現できず、人生も変えられないのではないか。そんなふうに自分を縛るのをやめて、目標達成のために「正しい楽観主義」を身に付けましょう。
From The Atlantic(USA)
Text by Maggie Puniewska
「ポジティブ思考」や「楽観主義」という概念は、太古から議論されてきました。古代ギリシャに起源を求める説すらあります。そして今日でも、「ポジティブ思考」は支持されている考えかたのようで、この単語は書店からヨガスタジオ、企業の研修室まであらゆる場所で目にします。実際、ポジティブ思考が免疫力を高めたり、仕事の遂行能力を上げたりすることもわかっています。
しかし、もしポジティブ思考をするだけですばらしい結果を生み出すことができるなら、なぜ仕事やプライベートの目標を達成するのに、私たちはこんなにも悪戦苦闘しなければならないのでしょう。禁煙やダイエットすら、いくらポジティブに考えても失敗するではありませんか。
楽観主義の陥りやすい罠
実は、いくら物事を明るく捉えても、前向きな姿勢をとっても、私たちの行動は変わりません。私はポジティブ思考の効果を20年以上にわたって研究してきました。そこでわかったのは、ポジティブ思考のネガティブな側面です。
楽観的に夢を描くだけでは、目標達成のために行動を起こしたり、戦略を立てたりするのに必要な意欲を削いでしまうということです。その結果、いつまでも達成されない壮大な夢だけが残される──理想を思い描くことと、それを実現することは、まったく別物なのです。
なぜ、楽観視するだけでは、目標を達成できないのでしょうか。それは、ポジティブな理想ばかりを思い描いていると、「頭の中ですでにその未来を手に入れてしまっている」からです。そのため、実際に目標のための具体的な行動をしなくなってしまうのです。
この現象は、私が行った実験結果の多くに見られました。たとえば、ダイエットに取り組んだ人の場合は、痩せた自分の姿を想像したことで、実際に痩せようとする行動に移らなくなったのです。
それだけではありません。ポジティブな未来を想像しただけの被験者は、片思いの相手をデートに誘うことや、新たな仕事に応募することなどでも、実際の行動に移さない傾向が強かったのです。特に就職活動では、自分の実力を過大評価したために、ポジティブ思考の持ち主が次々と失敗していきました。
体にも反応が出る
そこで私は、ポジティブ思考と血圧の関係についても研究してみました。血圧は、人のエネルギーや意欲を示す最も基礎的な指標の一つです。心が目標を達成するための準備を始めると、私たちの体は、より多くの酸素や養分を吸収し、より大量の血液を体内に送り出します。継続する行動に体が備えようとするためです。このプロセスが体内のエネルギーを高め、血圧をわずかに上昇させるのです。
では、将来についてポジティブな想像だけをした人の血圧はどうなったでしょうか。明らかに下がる傾向があることが判明しました。リラックスしすぎてしまい、それが検査の結果にも表れたのです。
これはまさに、目標に向かって取り組もうとするときに「避けたい状態」そのものです。望ましいのは、頑張ればハードルを乗り越えられそうな、多少のプレッシャーを感じて、やる気が湧いてくる状態です。人は、「何とかなる」と安心しすぎると、かえって行動を起こさなくなってしまうのです。
一方、理想を思い描くことが、それだけで効果的な場合もあります。それは、自分の力ではどうにもできない、待つしかない状況のときです。たとえば、試験の結果を待っているときなど、「目標のために行動を起こす」選択肢すらない場合には、理想の結果を思い描くことだけでも、気がまぎれるというメリットがあるのです。
つまり、ポジティブ思考も状況とやりかた次第で効果があるのです。「理想の未来を想像することで、自分が本当にやりたいこと、あるいはやりたくないことがわかる」ようになるのなら、それはいいポジティブ思考といえるでしょう。
想像するメリット
たとえば、あなたが大学生で、卒業後のキャリアを考えているところだとします。そこで、看護師という職業が候補に浮かんだとしましょう。患者と関わり、お世話をする仕事ができたら、どんなにすばらしいことか──と思うかもしれません。生物学の授業も好きだから、ぴったりだと。
ですが、自分が病院で働く姿を詳細に思い描いたとき、同時にこう気づくかもしれません。「勤務時間は長いし、多くの看護師は燃え尽き症候群になっているな。同じ医療分野でも、勤務時間が朝9時から夕方5時までの仕事に就くのが理想だ」
すると、あなたの願いは看護師になることから、「医療分野のなかでも、プライベートな時間がたっぷり取れる仕事を見つけること」に変わります。このような考えかたをすれば、理想を思い描くだけでも、自分の興味や関心を探る充分な手助けになります。やりたくないことも含めて未来をイメージするのです。

願いを叶えるプロセス
さて、次の段階に進みましょう。理想を思い描いただけの時点では、まだあなたは「障害」について深く考えていません。自分の本当の願いを実現するには、この障害に対応するプロセスが必要なのです。
そこで、現実的で効果的なアプローチが、「メンタル・コントラスティング」と私が名づけた手法です。自分が望む未来を目標として思い描き、続いて障害をイメージする、というものです。
誰もが、目標を達成したときの幸福な自分の姿を思い描くことがあるでしょう。まず、それを実行するのです。目標の大小は問いません。プライベートでも仕事でも構いません。たとえば、会社で昇進して角部屋の広いオフィスをもらうことができたら、あるいは体重が5㎏減ったら、異性にモテる外見になれたらどんなにいいだろう、というように。
ですが、そこに適度な現実主義を「障害」として加える必要がある、というのが私の持論です。ひとしきり自分の理想像を思い描いたら、このメンタル・コントラスティングという作業も行うべきです。なぜなら、立ちはだかる障害を理解した上でポジティブに考えたほうが、ポジティブ思考だけで目標の達成に挑むより、ずっと成功しやすいからです。
たとえば、私たちは数週間もしくは数ヵ月後に、前述のダイエット対象者の追跡調査を行いました。すると、メンタル・コントラスティングをした参加者は、ポジティブな未来を思い描いただけの参加者よりも、減量のための具体的な行動を起こす傾向が強いことがわかりました。彼らは、ポジティブ思考だけの参加者よりエクササイズを日常に多く取り入れ、30%も多く野菜や果物を食べるようになっていたのです。
私たちは往々にして、一度にたくさんの目標を達成しようとします。しかし、まずどれから取り組むべきなのか、あるいは自分に取り組めるだけの能力があるのか、多くの人が整理することさえできていません。
ネガティブも悪くない
その点、メンタル・コントラスティングは、目標の取捨選択を助けてくれます。障害を目標達成のための不可欠なステップと認め、前進の手助けをしてくれるからです。
しかし、何が目標の達成を阻んでいるのか直視することは、決して楽しい作業ではありません。自分の弱点と向き合うには勇気が要りますし、多少の痛みも伴います。障害とは、そもそも本質的にネガティブな観念だからです。
また、最近の自己啓発本は、ポジティブ思考をあまりにも強く推奨しているため、ネガティブな概念やアイディアを「悪」としがちです。だから、私たちは無意識のうちにネガティブな考えかたを遠ざけてしまうのです。誰もが学校でも職場でも「ネガティブな人」と言われたくないのはこのためでしょう。
しかし、私の研究によれば、それはあまり有意義なことではありません。自分の弱点や、立ちはだかる障害をはっきりさせることは重要なのです。必要以上に悩み過ぎないかぎり、ネガティブな考えかたは「悪」にはならないのです。
私に大きな影響を与えた研究は、1990年代にニューヨーク大学でペーター・ゴルヴィツァー心理学教授によって行われた「条件付き行動計画」です。彼は、「もしXだったらYをする」というように、特定の事態が起きた際の行動を、あらかじめ計画に組み込んでおき、その影響度を調べたのです。すると、「Xだったら」と条件を付けた計画を立てた人たちのほうが、目標を達成する可能性が高いことがわかりました。
特に、トラブルを起こしがちで、目標を達成できないような人に対しては効果的でした。麻薬中毒者を対象にしたリハビリ施設の実験があります。禁断症状が出たらどうするか、といった対策を決まった時間に提出したグループは、ほぼ全員がそれぞれの目標を達成できましたが、「いつまでに何をするか」を決めなかったグループは、誰も目標を達成できなかったのです。
一方、私の研究では、障害を考えるメンタル・コントラスティングが人々の行動を変化させることがわかりました。そこで私は、メンタル・コントラスティングと条件付き行動計画の理論を組み合わせ、「WOOP」という具体的な4つのステップを考案しました。
WOOPで夢を実現
このステップは簡単です。まず願いを明確にし、それが叶ったときの結果を想像します。そしてその成果を得るために、目標達成までに立ちはだかる最大の障害を特定し、乗り越えるための計画を立てるというものです。私はドイツと米国の中学生にこれを実践してもらいました。その際に、次のことを書くよう伝えました。
「自分が目標とする成績は何か」「その際に誘惑や障害になるものは何か」「それを克服するために、いつ、どんな予習をしておいたらいいか」といったメモです。そして最後の「障害を乗り越えるための計画」には、ゴルヴィツァー教授の条件付き行動計画を取り入れたのです。その結果はすばらしいものでした。両国の生徒とも、宿題を早く終わらせるようになり、試験でも好成績を残したのです。
メンタル・コントラスティングや、WOOPから得られる効果は無限大です。これまで述べたことのほかにも、パートナーと建設的かつ前向きな関係性を保てたり、慢性的な腰痛が軽減したり、日常生活のあらゆることについて効果を得ることができました。また、職場でのストレスをうまくコントロールできたという報告もあります。
夢や理想のような、定義しづらいものを見極めることは大変な作業です。それでも、自分の目標が達成できた場面を想像し、立ちはだかる障害との関連性を見出すことで、私たちはより意欲的になり、目標に対しても熱心に取り組むことができるでしょう。
目標がない、という人も大丈夫です。日々のふとした瞬間に目標をイメージできるチャンスが潜んでいます。それを逃さずにWOOPを実践しましょう。この方法により、あなたが一歩でも自分の理想像に近づくことができるよう祈っています。
【Profile】
bookガブリエル・エッティンゲン
Gabriele Oettingen
ドイツの大学で生物学の博士号を取得。米ニューヨーク大学と独ハンブルク大学にて心理学の教鞭をとる。著書『成功するにはポジティブ思考を捨てなさい』(講談社)が6月11日に発売。

Illustration by Andrew Joyce for COURRiER Japon
© 2014 The Atlantic Media Co., as first published in theatlantic.com. All rights reserved. Distributed by Tribune Content Agency
【Profile】
ガブリエル・エッティンゲン
Gabriele Oettingen
ドイツの大学で生物学の博士号を取得。米ニューヨーク大学と独ハンブルク大学にて心理学の教鞭をとる。著書『成功するにはポジティブ思考を捨てなさい』(講談社)が6月11日に発売。
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