辞書が大好きなサンキュータツオ局員が収録中、「実は広辞苑の執筆に携わった」と衝撃の告白!マキタスポーツ局員、プチ鹿島局員は「嘘だろ?」と疑い、信じようとしません。
タツオ:1月12日に発売された広辞苑第7版というのがあるんですけど…実は僕、これ執筆に携わったんですよね。
マキタ:おおーっ!広辞苑に!?
タツオ:広辞苑にですよ。
マキタ:嘘だろ?なんかの間違いだろ?
タツオ:いや、本当に。
マキタ:嘘だろ?嘘だと言ってくれよ!
(1ヶ所だけ、カタカナゾーンが・・・)
タツオ:最後、ちゃんと執筆者のところに「サンキュータツオ」って。
鹿島 :買った人が間違いだと思って送り返すかもしれないよ。
マキタ:なんでちょっとふざけちゃってるんだよ。広辞苑さんが。
鹿島 :「漢字で書け!」って言われるかもしれないよ。
マキタ:岩波さんでしょう?本物でしょう?相原コージさんの書いた漫画の『コージ苑』じゃなくて?
タツオ:その『コージ苑』じゃないですよ(笑)小学館じゃないです。岩波書店から出ています。
鹿島 :ダンカンさんの息子じゃなくて?
2人 :それ、甲子園!フフフ(笑)
マキタ:声、揃っちゃったよ(笑)
■広辞苑編集部の仕事と編集方針―――
2011年にTBSラジオ『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』で初めて「国語辞典が好きで集めている」と告白してから丸7年。徐々に辞書芸人としてのイメージが浸透してきたタツオ局員に岩波書店から声がかかった模様。タツオ局員が広辞苑編集部の仕事ぶりや編集方針について話していきます。
タツオ:前回の改定から10年で改定しているんですよね。この辞典、何万語ぐらい入っていると思います?25万語入っている。20万語クラスってたぶん普通20年ぐらい、改定にかかるの。だけど広辞苑は猛スピードで10年でやっているの。だからもう、毎日(のように作業)ですよ。
鹿島 :これ、今回出したじゃないですか。(岩波の編集部は)今、何をやっているんですか?10年後に向けて、何か?
タツオ:もう動いていると思う。次の版にどういう項目を入れるか。あと、問題のある箇所を…今だと誤植とか問題が見つかっているんで次の改定でどう書き直すか、みたいな議論から始まっていると思いますよ。
マキタ:意味が10年サイクルで変わっていっちゃう言語があるわけだよな?
タツオ:そういうのは、なるべく入れないという編集方針を広辞苑は立てていたの。
マキタ:移ろいやすいものは省くと?
タツオ:なくなるかもしれない、定着しないかもしれないものは、まず入れない。ちっちゃい辞典だと改定のスパンが早いから「ワロタ」とか「w(草)」とか入れたり。ネット用語とかも入るんだけど。
鹿島 :そこはほら、広辞苑の看板もありますからね。
タツオ:芽が出て木になって葉が生えて、葉が落ちて落ち葉として土に返った瞬間に広辞苑に入れますっていう姿勢だったの。だから死語になったら入れますっていう。
マキタ:それはもう本当に死んだ言葉じゃん。
タツオ:そう。だから50年後とか100年後に「ああ、この時代にこういう言葉が使われていたんだね」っていうのがわかるっていう。
マキタ:その役目があるんだな。なるほどな。
タツオ:それがこのクラスの規模の辞典の役割だっていう考え方でやっていたの。
■広辞苑執筆の経緯―――
そもそもなぜ、タツオ局員が広辞苑の執筆に関わることになったのか。その経緯や、広辞苑ならではの大変さについて話していきます。
タツオ:僕がいろんなところで「辞書が好き」とか言っていたら、漫画・アニメに詳しくて、さらに国語辞典とか辞書に詳しい人っていうことで僕が選んでもらえたわけです。確かに、話を聞いた時、「そう考えたら、いないな」と。漫画・アニメに詳しい人もたくさんいるし、国語辞典に詳しい人もたくさんいる。だけど漫画・アニメと国語辞典の両方に詳しい人はあんまりいないっていう。
鹿島 :広辞苑のために生まれてきた男だな。
タツオ:言いすぎだと思いますけども。で、これは3年ぐらい前から僕、書いていたんですけども。言っちゃいけなかったのよ。次の版が何年の何月ぐらいに発売されるかで他の出版社の辞典の発売タイミングも変わってくるから。だって、広辞苑を買った後はみんなお金がないから、その後に別の辞典を発売しても、たぶん売れないのよ。ってことは、広辞苑が2018年1月に発売なら、その前に出さなきゃ!みたいなことになってくる。だから「私、次の版で書きました」って言っちゃいけないのよ。この3年間、本当に黙っているのが大変だった。
鹿島 :俺に教えてくれればすぐにしゃべったのに。
タツオ:いやいや、本当に危険だった(笑)
マキタ:中にブン屋がいるから(笑)
■言葉が掲載されるまでのプロセス―――
続いて、実際にタツオ局員がどのようにして広辞苑を執筆していったのか?そのプロセスについて話していきます。
タツオ:「この言葉を次に入れません?」っていうので、まず編集部で選別するわけ。今回、僕が提案したのをいくつか…。
鹿島 :『東京ポッド許可局』は入っているだろうな?
タツオ:終わらないと入らない。人間も死なないと入らない。基本的に。存命の人で入るのってノーベル賞受賞者とか。「カミオカンデ」っていう項目で小柴さんが載るとか、そういうぐらいの感じ。まず、提案して書いた項目は「ボーイズラブ」。
マキタ:ちょっと、お前、提案しすぎだよ!やめろよ、ザワザワするよ!ちょっと早えよ!
鹿島 :時期尚早だと思います(笑)
タツオ:いや、今回ダメ元で提案したんだけど、入れてもらえたわけ。だから、相当広辞苑が柔らかくなったぞと。
鹿島 :最初のタツオの案は、いくつか出すんじゃなくて「じゃあ、これをどうぞ」って出したのを、偉い人たちがそれを叩き台にしてできあがってくるってこと?
タツオ:そうです。なので、いろんなジャンルの専門家から、項目と説明を受けて。専門家によってはさ、あれも言いたい、これも言いたいになっちゃうじゃない?なので編集部でそのバランスを取って、「これは入れる、これは入れない」って。あと、加筆っていうのもある。今まであった言葉で、新たな意味ができたもの。僕も今回、やりました。
鹿島 :まず「ボーイズラブ」を聞かせてよ。
タツオ:ボーイズラブは結果、どうなったかと言うと…「和製語。男性同士の恋愛を描く主に女性向けの小説、漫画などのジャンル」と。「主に」が入っているんで、男の僕が読んでも大丈夫という。
マキタ:おおー、短いね。
タツオ:ただね、ボーイズラブが入ったっていうのはかなり画期的。新語をたくさん入れている辞典(三省堂国語辞典)でも、そこに「BL」という項目であったんですけども、「少年同士の恋愛」って書いてあるの。少年愛。まあ、もともとは竹宮恵子先生の『風と木の詩』っていう漫画から出ているから少年たちの恋愛っていうものが…でも、歴史的には今は大人の男性同士の恋愛も描いてますし。「小説、漫画などのジャンル」って言ったことも、実写作品はBLとは言わない。だから厳密に言えば僕はゲイカルチャーとボーイズラブは分けているので。っていうことで、こういう書かれ方になったんじゃないかなと。
■広辞苑項目の加筆―――
さらに、タツオ局員が加筆した項目についても話していきます。
タツオ:広辞苑って、日本でいちばんクレームの電話が多い辞典なんです。ほぼ毎日、「この項目の説明の仕方は違うんじゃないの?」っていうクレームの対処に追われるんです。
鹿島 :やっぱり「広辞苑」っていうビッグネームだから。結局今回、いくつの言葉を担当したんですか?
タツオ:そうですね。「二次元」っていう項目も加筆したんですよ。
マキタ:「二次元」っていうのがすでに項目としてあって、そこに加筆を?
タツオ:ええと、「次元の数が2つであること。長さと幅だけの広がり。平面の広がり」っていう風に書かれてます。味も素っ気もない。これが今回、どうなったかというと…2の意味で、「平面に描写する」というのが書いてあって。「漫画、アニメ、ゲーム、またはそのキャラクター。転じて漫画、アニメなどの架空の世界」。用例で「二次元に恋をする」っていう用例が入りました。
マキタ:ちゃんと君が用例も書いたわけだ。
タツオ:足してくれました。こういう使い方をしますよという。つまり、「二次元キャラ」とか言う時の「二次元」っていうのは別に2つの座標とかっていう意味じゃなくて、漫画、アニメ、ゲームなどのキャラクターっていう意味なんだよと。
マキタ:数学的な意味だけじゃなくて新たな意味が加わってますよというね。
タツオ:僕は対義語に「三次元」を入れたんですけど、それは削除されました。
マキタ:それは削除されるわ。
鹿島 :俺、「四次元」だったら担当できるよ。「タイガーマスクの空中殺法」ってね。
タツオ:アハハハハッ!
マキタ:見たからね。
鹿島 :見たから。俺、見たもん!あれ、四次元でした。古舘さんが言っていました。「四次元だ」って。
■広辞苑執筆の苦労、契約、ギャラ―――
続いて、広辞苑トークはもっと下世話な領域へ。執筆していて苦労したことや契約、そしてギャラなどについてマキタ局員、鹿島局員が追求していきます。
鹿島 :契約みたいなのはあったんですか?「立ちションベンはしないでくださいね」とか、そういうイメージを損なわないようにとか。
タツオ:ああ、それは守秘義務。発売までは言わないでって。やっぱり発売のタイミングがバレるようなことは言わないでと。
鹿島 :じゃあそれ以外、今日明日以降はヤンチャしてもいいんですか?
タツオ:ヤンチャはできないよね。さすがに。
マキタ:タツオ、あれじゃない?我々、適当に有識者コントみたいな形で元号を考えるってやったけど、それに近いことをやってんじゃん。完全にインサイダー側じゃん。
タツオ:インサイダーですよ。だから、あなた方のような下々の者とはあんまり話せないんですよ。
マキタ:何がいちばん苦しかった?
鹿島 :ギャラはいくらなの?
タツオ:どうだったんだろう? 俺、ちょっとわかんなくて…
マキタ:取っ払い?
鹿島 :取っ払い? いい仕事してんなー。闇営業だ、これ。
マキタ:何に最も苦労したんですか?
タツオ:他の辞典がどう書いているか。あるいは入れてるか、入れてないかも含めて全部調べた上で項目を書くので。
マキタ:そんなの、ある程度わかっているんだったら向こうでやってよってことじゃないの?
タツオ:だから、載ってないのを探す方が難しいわけ。みんなが使っている、あるいは一般的に知られている言葉で、辞書に載っていないものを探すって結構大変なことなの。だけど、耳にする。
マキタ:まだブチ抜かれていない的(まと)を探さなきゃいけないわけだね。なにが楽しかった?具合がよかったですか?
タツオ:ずっと楽しかったですね。これを書いている時は。苦しい、楽しい両方ですね。ネタを作るのと一緒だから。
鹿島 :これ、「広辞苑、ここだけの話」で営業を回れるよね。
マキタ:なるべく多く採用された方が嬉しいの?言葉を削られないで。
タツオ:うーん…今ある項目を書き換えられる方が大きいですよ。だからね、僕は「ハナ肇」の項目にこれまでだと「タレント、俳優。東京生まれ。コミックバンド クレイジーキャッツのリーダーとして活躍」まで入っていたんですけど、僕は「ギャグ『アッと驚く為五郎』が流行語にもなっている」という情報を入れればどうですか?って。流行語になっているから。「『ガチョーン』を入れてください」とはちょっと違うから。流行語になっているから、「アッと驚く為五郎は流行語にもなった」ってちょっと書き加えたんですけど…却下されました!
鹿島 :あらっ!それに「かくし芸で毎年銅像をやっていた」とかまでやると、おもしろ辞書になっちゃうわけでしょう?
タツオ:そうなの。おもしろ辞書にね。
■ラジオクラウドで、ロングバージョンのトークを公開中!