一面地震調査委「不十分」 大飯原発の揺れ計算手法三月に再稼働を予定する関西電力大飯原発(福井県)の安全審査で主要な判断基準だった地震時の基準地震動(最大の揺れ)の算定方式をめぐり、策定元の政府の地震調査委員会内で、原子力規制委員会の認識を否定する見解が示されていたことが分かった。大飯原発の地震想定に関しては、専門家から過小評価の可能性が指摘されている。 本紙が情報公開請求で入手した、地震調査委の部会や分科会の議事録で判明した。規制委は二つある計算手法のうち一つだけで再稼働を認めたが、算定方式(レシピ)を定めた調査委は「一つでは不十分」との考えを示していた。 レシピに記載されている計算手法は(1)地震を起こす活断層の形状をあらかじめ設定して算出する(2)地表で確認できる活断層の長さから算出する-の二つ。双方による算出は義務付けられておらず、大飯原発の安全審査で関電は、(1)による想定しかしていなかった。 しかし、規制委が審査中の二〇一六年九月、地震調査委の強震動評価部会では、(1)の手法について、委員から「知見が不足している」との指摘や「間違いではないが、不確実性がまだ残っている。両方やることには賛成」との意見が出た。より精度を高めた計算手法の確立には「三年ぐらいはかかる」との見方も示されていた。 二カ月後、レシピの修正案を検討する強震動予測手法検討分科会でも、事務局が(1)の手法に関し「併せて(もう一方の)方法についても検討して比較するなど、結果に不自然なことが生じていないか注意しながら検討していただきたい」とし、事実上、二つの併用が望ましいとの解釈を示した。レシピは分科会後に修正版が公開されたが、こうした見解は明示されなかった。 規制委は昨年五月、関電の想定を了承、再稼働を認めた。地震調査委の検討内容を規制委が把握していれば、審査に影響した可能性があるが、規制委事務局は取材に「(検討内容について)調査委に問い合わせはしていない」と回答した。 規制委の更田豊志委員長は、二つの手法でも計算するべきだとの指摘に関し「(適用は)難しいところがある」と述べ、関電が採用した計算手法で信頼できるとの見解を示した。 (中崎裕) <地震調査委のレシピ> 正式名称は「震源断層を特定した地震の強震動予測手法」。調査委が各地の断層が起こす地震の揺れを予測する手法として公表している。2016年6月に6年半ぶりに改定され、同年12月に一部表現が修正された。修正版では、二つの手法のうち関電が大飯原発で採用した手法を使う場合「諸知見を吟味・判断して震源断層モデルを設定する」とし、新たに「吟味」という表現が盛り込まれた。 今、あなたにオススメ
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