杉田水脈公式サイトより
今月24日「『待機児童』なんて一人もいない。待機しているのは預けたい親」という主張をtwitterに投稿した杉田水脈衆院議員(自民党)に批判が殺到している。杉田議員は他にも「子どもはみんなお母さんといたいもの」「子供の成長に何がいいのか、一番わかるのはお母さんですよね」といったツイートを行っていた。
この件についてはwezzyでも、杉田議員の主張が、子供が3歳になるまで母親は育児に専念するべきだという「三歳児神話」に過ぎないことなどを指摘している(杉田水脈衆院議員が「待機児童なんて一人もいない、子どもはお母さんといたい」、背景に三歳児神話)。本記事では、「新しい歴史教科書をつくる会」の理事を務め、以前より慰安婦問題について「慰安婦は性奴隷ではない」「強制連行はなかった」などの主張を行うなど、保守的な思想を持つ杉田議員の「女性観」を紹介したい。
先日の記事でも軽く触れた通り、杉田議員は歴史観だけでなく、女性観も非常に保守的なものだ。
例えば、杉田議員は昨年12月23日に出演した生配信番組『みのもんたのよるバズ!』(AmebaTV)の翌日、「日本は江戸時代からの男尊女卑がまだまだ続いている。男性ばかりが決めていると戦争になる。男女平等にして女性の意見も取り入れないとダメだ」というみのもんた氏の発言に一番反論したかった、という内容のブログを投稿している。「江戸時代は男尊女卑ではなく男尊女尊。武家でも財布の紐は女性が握っていた」と解釈する杉田議員の主張はこうだ。
「男女の役割分担ができ、女性や子供がとても幸せな時代。飢饉で娘を売るような辛いこともあったけれども、それは自然災害や天候のせいで、政治や行政が悪いわけではないことを民衆も解ってた。何より、男性ばかりが国を治めていたのに250年間、戦争をしていない。ここの認識が違うから、『日本は男尊女卑』という人とは意見が噛み合わなくなるのです。外国の指標に左右されず、日本女性が幸せであればいいのでは?これ、キチンと言いたかった。次、頑張ります」(昨日のよるバズ、一番反論したかったこと〜日本は江戸時代からの男尊女卑?)
江戸時代はわざわざ例に出すまでもなく、大阪の陣、大阪夏の陣、戊辰戦争など、国内でも戦争は複数起きており、「男性ばかりが国を治めていたのに250年間、戦争をしていない」ことを根拠に「『日本は男尊女卑』という人とは意見が噛み合わなくなる」といっている杉田議員の歴史認識こそが間違っている(ちなみにツイートでは400年間と書いていた)。鎖国により他国とは戦争していなかったと言いたいのだろうか。
江戸時代は男尊女尊だったという主張がまさに杉田議員の認識や女性観を現しているが、こうした主張をこれまで幾度となく繰り返してきたことは、ブログ記事や書籍などからも一目瞭然だ。以下、長くなるが杉田議員の主張を引用する。
「女の子は本来『俺の可愛い女』って言ってくれる男とずっと一緒にいたいものです。本能に逆らうとGAPが出てきてしまう。日本全体がそんな状態になっちゃってしまっている。そんな気がします」(2010年11月25日掲載「足るを知る」)
「『男子厨房に入らず』でも、外では自分の奥さんのことをよく言わない男性でも(これは武士道の精神です。本当に身内だと思うから外で自分の家族を褒めない。)、死ぬまで添い遂げて『この人と結婚してよかった』とお互い思えた時代。子育ても家事も全部分担。おまけに相手の姓を名乗るのは嫌とかで『選択性男女別姓』が議論される時代。気がつけば離婚率は3割を超えています。さらに、行き過ぎた『男女共同参画』のせいで、若い女性の専業主婦願望は増加の一途です。一方で男性は『結婚するなら働く女性がいい』という傾向が強まっています。これで本当にいい日本になったと言えるのでしょうか?」(2011年2月21日「男女共同参画なんて要らない!」)
「そもそも昔の日本は夫が外で働き、お金を稼いで妻にわたし、家計のやりくりをしていました。ところが女性が社会に進出して経済力を持つと、そうした役割分担が崩れ、男性の役割が小さくなっている部分があるのです。【中略】家庭の役割における男女平等なんてありえません。男性は男性の役割があり、女性は女性の役割があります」(2017年刊行『なぜ私は左翼と戦うのか』青林堂)
「女性が輝けなくなったのは、冷戦後、男女共同参画の名の基、伝統や慣習を破壊するナンセンスな男女平等を目指してきたことに起因します。男女平等は、絶対に実現しえない反道徳の妄想です。女性にしか子供を産むことはできない。こんな当たり前のことに目を背けた政策を続けた結果、男性ばかりか当の女性までが、女性にしか子どもが産めないことをネガティブにとらえる社会になってしまいました。その結果、ドメスティックバイオレンスが蔓延し、離婚が増加。少子化や子どもの貧困の原因となっています」(【書き起こし】「本来日本は、女性が大切にされ、世界で一番女性が輝いていた国だった」次世代の党・杉田水脈議員質疑)
「(強姦)事件を起こす男性達もみんな母親から生まれてきます。子宮の中で10ヶ月育って産道を通って。自分がお腹を痛めて産んだ子供が強姦魔になるなんて、母親も居た堪れない」(2016年10月13日「強姦事件を起こす男性の心の中には確かに「男尊女卑」や「女性蔑視」が存在する」)
このように杉田議員の女性観は徹底的に保守的である。まとめると、「女の子は本来『俺の可愛い女』って言ってくれる男とずっと一緒にいたい」もの。男女共同参画が進んだために「離婚率は3割を超え」ており、「ドメスティックバイオレンスが蔓延し、離婚が増加。少子化や子どもの貧困の原因」になっている。「男女平等は、絶対に実現しえない反道徳の妄想」で「男性は男性の役割があり、女性は女性の役割」がある。「お腹を痛めて産」むことに過剰な意味を見出し、「女性にしか子供を産むことはできず」、「子供の成長に何がいいのか」を「一番わかるのはお母さん」だという母性神話を信じている。
外で稼いでくる男性がいなければ女性が生存できないのだとしたら、女性は男性に庇護されなければ生きていくことが出来ず、生存そのものを脅かされるだろう。杉田議員の主張は、あらゆる男性が暴力を振るわず女性を可愛がる前提で成立しているが、現実にはそうでない男性も存在することは様々な事件を見るまでもなく証明している。「最近の」傾向ではなく、男女平等などあり得なかった「昔から」だ。
杉田議員は、「若い女性の専業主婦願望は増加の一途」であることを、社会が“本来の男女役割”を無視していることへの反動と捉えているのだろう。一方で、「今の政策は『働く女性の支援』にばかり重点が行き過ぎていると感じています。自分の意志で『仕事を辞めて子育てや介護、家事に専念する』方々も輝く女性です。私は『女は仕事なんかせずに引っ込んでろ!』とは一言も言っていません。『専業主婦』という選択肢を日本から無くすべきではないと訴えているだけです」とも主張する(「女はみんな専業主婦になれ」なんて私は一度も言ってないし思ってもいません。)。しかしこれまで引用してきた彼女の言葉は、『女は仕事なんかせずに引っ込んでろ!』と同義だった。そして男女共同参画は専業主婦という選択肢を無くすべく推進されているものではない。むしろ女性に専業主婦以外の選択肢を“増やす”ものだ。杉田議員こそ何か大きな誤解をしているのではないだろうか。
そもそも杉田議員自身、「行政の役割は『選択肢を増やす』ことだと思っています。結婚したら専業主婦になりたい、結婚しても働き続ける、子供を生んだら仕事を辞めたい、子供を育てながら働きたいこれは全て個人の選択です。個人が責任を持って自分の生き方を選択すれば良いと思います」(同上)と記している。であれば、選択肢の狭かった江戸時代の社会情勢を「男尊女尊」で安定していたなどと礼賛することは誤りだと、自ずからわかるはずだ。
それとも、杉田議員は「専業主婦という選択こそが最も尊い」と信じ、その他の選択をする女性は蔑ろにしても良いとの考えで政治活動を行っているのだろうか。男を立て、可愛らしく、母性をもって家事育児に専念する女性こそが「社会の安定のため」に最適であると信じればこそ、「待機児童問題」は本来こなすべき仕事を行わない女性たちのわがままなのだ、などという“誤解”に満ちたツイートをしているように見えてしまう。
専業主婦も就労女性もどちらも輝けるというならば、まず杉田議員自身が「選択肢を増やす」行政の役割を全うすべきであろう。結婚してもしなくても、働きに出ても出なくても、誰もが当たり前に生活できるよう選択肢を増やし、女性や男性が「女らしさ」「男らしさ」に縛り付けられず自由に自身が望む生き方を選べるように、政治家として活動すればよいのではないか。
昨年の衆院選で国会議員となった彼女の影響力は決して微々たるものではない。「炎上商法だ」などといって見くびらず、批判すべき点はしっかりと批判しなければならない。
(wezzy編集部)