ステラエアサービス

作者 有馬桓次郎

93

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★★★ Excellent!!!

こういった作品にしては珍しく、読んでいて非常に軽いです。何行も何段落も設定が書かれたかと思えば、堅苦しい会話が続いて、しかも選ばれる言葉はとりあえず難しいものでげんなり――。ということがないんです!
それは設定が浅いとか手抜きとか言葉を知らないとか、そう言うことでは断じてありません。書きたいことや伝えたいことをはっきりとさせ、楽しませることを考えて書かれていると思いました。

だからこそ、読んでいく中で自分も空へと上がっていくような。物語の加速にあわせて、自分の期待もどんどん加速していくような、そんな作品です。各章各話が短時間でも読みやすい量であり、またそれぞれの区切りで退屈させられないため、空いた時間でどんどん読めます。
まあ、わたしは比較的まとめて読んでしまいましたけれども!仕方ないですよね!だって、心も加速してしまったんですから!

★★★ Excellent!!!

 太平洋戦争の終戦が一ヶ月だけ遅くなった、私達の世界とはほんの少し異なる歴史を辿った日本。その僅か一ヶ月間の違いが、もう一つの戦後日本の民間航空産業の勃興を生む。航空機が遥かに身近な存在で、まるでトラックの個人運送業者、さしずめ映画のトラック野郎のように飛行機で日本各地を飛び回る。そんな設定で始まる、空への憧れと天才的操縦テクニックを持つ、少女の成長物語だ。

 飛行機のコックピット内の操作、操縦中の判断、機体の性能や特性、そして飛行するための環境など、航空に関する知識をストーリー展開の中に自然に盛り込むことで、読む進んで行く内に作品世界のイメージがどんどんクリアになっていく。ストーリー自体は元気一杯の若者の成長物語という王道の展開だが、作品内に盛り込まれた情報が膨大なので、むしろ本筋がシンプルな方が読み易い。この世界に馴染めば、もっと複雑な展開も可能になると思うので、続編も期待したい。
 舞台となる甲府盆地の地理や歴史をリサーチしたらしく、描写にも非常にリアリティがある。現地で丹念に取材したのではないだろうか。

 もう一人の主人公とも言うべき三式連絡機は、どちらかといえばマイナーな機体だが、優れたSTOL(短距離離着陸)性能を持つ先進的な航空機であり、個人的にも好きなので、これが主役だというのは嬉しい。陸軍の機体なのに陸軍(海軍ではない)の空母に艦載機として運用されていたという史実を反映した着艦フックが物語の中で大きな役回りを果たすのも、ファンとしては読んでいてニンマリするところだった。

 続編もさることながら、作中で触れられた昭和21年の東京大空輸(ちょうどベルリン大空輸のような)についても、番外編として書かれるといいな、などと思った。

さんがに★で称えました

★★★ Excellent!!!

 自らが操縦桿を握って空を舞うことのできる人はごく僅か。
それゆえに、パイロットを主人公とする物語に実感を伴って
没入できる人もまた、ごく僅かではないかと思います。

 その乖離を埋めようとして、特に小説はなまじ細かく説明
できてしまうため、必要以上に専門用語を駆使して操縦動作
やパイロットの心理心情描写に行をさき、結果として中々
物語自体が進行せず、読みづらくなっていくことが多いのです
が、本作は異なります。

 本作での描写は主に“飛行機に乗っている者から見える景色”
と“その飛行機を見つめる者”そのものに多くの行をさき、それ
により読者に“一緒にその飛行機に乗っている”浮遊感覚を与え
ることに成功していると感じました。

 この後シリーズが進んでいけば、いずれは細かい専門的な
話題や単語も増えていくことがあるのでしょうが、こうした
手順を踏んで少しずつ加えていくなら、脱落することなく
ついて行けるのではないでしょうか。

 このヒロインと一緒にまた次の空を見たいと思っています。

さんがに★で称えました

★★★ Excellent!!!

好きじゃなかったり専門外の言葉が出てくると、大体1000文字程度で離れてしまう自分。

いつのまにか読むための時間を作り出すことに腐心し、いつのまにか読みきっていた。そんな作品。

機械好きなら細かい用語は、情景が浮かんだら頭の中でリンクすると思う。飛行機から離れても、人から離れても面白くないのだ。

展開はベタかも知れないが、細やかな表現が時に俯瞰、時に隣に居るような臨場感を生みだす。

スッと読み終わるがおかわりの欲しくなる作品でした。

さんがに★で称えました

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★★★ Excellent!!!

甲府盆地の蒼天に飛ぶプロペラ機が瞼に浮かぶ……。

 ――舞台となる山梨県営玉幡飛行場ってだいたいどんなところ?


 山梨県の地理に余り詳しくない人は真っ先に「山梨 玉幡飛行場」のキーワードでググってみるといいと思います。

 http://airfield-search2.blog.so-net.ne.jp/yamanashi-airfield

(とりさんのblog 空港探索・2、より甲府飛行場)

 物語の舞台となる飛行場はかつて存在したこの甲府飛行場がモデルになったものだと思われます。
 今でこそ山梨には日本航空学園か韮崎滑空場ぐらいしかまともな飛行場らしきものが残っていませんが、第二次世界大戦頃には山梨に大きな飛行場が存在していました。それがblogの先にもある甲府飛行場です。
 釜無川の横にあるとされる玉幡飛行場がたぶんこれだとすると、作中に出てくる地名や地所などはほとんど実在するランドマークと一致します。筆者はとんでもなく綿密な取材をしてこの作品を書いたのではないかと伺わせます。

 釜無川の堤防の坂道を渡り鏡中条橋(1-1 曙光行路 http://bit.ly/2F5Qp3I)とかGoogleストリートビューを使って実際の風景と照らし合わせてみると一目瞭然でしょう。筆者は驚くほど正確にカメラワークを意識して精密に物語を描いています。
 GoogleMapから周囲の山の位置、飛行場の位置などを確認しながら照らし合わせて読んでいくとステラの飛行ルート、離発着進入ルートなどもかなり容易に想像できます。これも楽しい。
 これだけでも楽しいのに主人公一家の天羽家の人々の生き生きとした姿が目に浮かぶかのような描写はとても一言では表せません。
 取材費なんかも相当なレベルでかかったんじゃ無いだろうかと思える作品なので「コレ、Webでタダで読ませて貰っていいんだろうか…続きを読む

★★★ Excellent!!!

"空の便利屋"として飛行機による民間の輸送業を営むパイロット達、そのただ中に父の跡を"継いで"大空へ羽ばたく少女がこの物語の主人公です。

東京から近くて遠い古くからの要衝・山梨県の甲府を舞台とし、読み進めていくと自らが赤いステラの操縦席にいるような、まるで主人公の夏海と共にどこまでも広がる空や鳥瞰の山々を見ているような光景が、頭の中に思い浮かびます。
読了ののち甲府へ向かう列車に乗ったら、車窓から赤いステラの飛ぶ姿を探してしまいそうな、爽快な読後感にあふれています。

またメカ好き、飛行機好きの心をくすぐる要素も多分に含み、
機械油のにおいに塗れて整備を手伝いたい気分にかられる作品だとも
言えます。この飛行場のある街に住みたくなる物語です。
とても面白かったです!

さんがに★で称えました

★★★ Excellent!!!

山梨にいったことがあるでしょうか?
私はあります。でも、そんなに土地勘があるわけではありません。
そんな山梨を舞台に描かれる作品。
決してご当地ネタの物語ではありません。
実在する精緻な用語に架空の歴史を交えたこの作品。
丁寧な地の文は、まるで映画を見ているような感覚を
与えてくれます。

あまりネタバレをするようなレビューは苦手ですので、
内容に触れることは避けますが、読んでいるうちに
フワっと空に浮いているような感覚を得られる作品だと思います。

どこかの架空の世界ではなく、つい近所にあるような物語。
もしかしたら、自分も登場人物の一人なのかも知れない。

初めてSFやライトノベルを読んだ時の感覚を、
体験できる、極めてまれな作品だと思います。

さんがに★で称えました

さんがに★で称えました

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★★★ Excellent!!!

春の甲府は詩情にあふれ、南アルプスはけわしく雄大に。冬の早朝の空気は肌を刺し、春の日中の空気は暖かく柔らかで。
空気や水や風の匂いすら感じられる表現力の高さに脱帽しました。

特別な言葉を使っている訳でもないのに、どう書けばこれほどに読者に情景をイメージさせることができるのか?
言葉の選択? それとも使うタイミング?
それほど群を抜く文章表現力です。

もちろんその物語も日常と緊張のメリハリがきいて本当に面白い。
すこし歴史の違う日本で活躍をする女子高生パイロットという非現実の物語だけど、その美しい風景描写があるからこそまるで私達の日常と隣り合わせみたいな読後感があるんじゃないでしょうか。

もう何度読み返したか判りません。お奨めです。

さんがに★で称えました

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