【ニュースの深層】直近の処分たった2人! 教員の「日の丸」「君が代」妨害が沈静化してきたワケ
産経ニュース / 2018年1月29日 14時2分
先生たちが国旗の「日の丸」掲揚を妨害したり、国歌の「君が代」斉唱時に座ったままだったり…。卒業式や入学式での国旗国歌をめぐる混乱。教育現場で長く懸案となっていたが、近年はほぼ沈静化している。文部科学省が昨年12月に公表した調査結果によれば、国旗掲揚と国歌斉唱に関し平成28年度に懲戒などの処分を受けた公立学校の教員は2人のみで、昭和60年度の調査開始以来過去最少となった。背景には、国旗国歌に頑強に反対してきた世代の定年退職に加え、裁判闘争における“敗北”が影響しているようだ。(社会部 寺田理恵)
教員処分はピーク時の100分の1以下
国旗掲揚や国歌斉唱に関し職務命令違反で処分を受ける公立学校の教員数は、増減を繰り返しつつも平成20年ごろから減少傾向にある。
文科省が公表した28年度の人事行政状況調査によると、同年度に処分を受けたのは東京都内で減給1人、大阪府内で戒告1人の計2人(いずれも懲戒)で、前年度の17人(懲戒14人、訓告など3人)から大幅に減少。200人以上の処分者が出た12年度や15年度に比べ、100分の1以下となった。
文科省の担当者は「教員に国歌斉唱時の起立を指示する職務命令が最高裁で合憲と判断され、減少につながった」と分析する。
国旗国歌は「侵略の象徴」? 組合の反発で自殺事件も
厳粛であるべき卒業式や入学式で、国旗国歌が適切に扱われていないという批判は、昭和後期から顕在化していた。しかし平成元年3月改定の学習指導要領に「(卒業式や入学式で)国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする」と規定され、大幅に改善する。小学校入学式の国歌斉唱率は昭和60年度の46・4%から平成2年度の75・1%に、中学は62・3%から76・8%に、高校では49・0%から64・8%に、それぞれ上昇した。
一方、国旗国歌を「アジアに対する侵略の象徴」などと位置づける教職員組合の強い地域では、反対運動がより激しくなっていく。広島県では平成11年、国旗国歌問題で当時の文部省から是正指導を受けた県教育委員会と、反対する組合との板ばさみとなった県立高校長が卒業式の前日に自殺する事件が発生。翌12年には東京都国立市の小学校で、卒業式に国旗を掲揚した校長を、反対派の教員に感化された児童ら約30人が取り囲み、一部が土下座謝罪を要求する事件も起きた。
せめぎ合う教委と組合 現場闘争から裁判闘争へ
処分を受ける教員の人数は、政治や社会情勢によって大きく変動する。
広島県での自殺事件がきっかけとなり、11年8月に国旗国歌法(国旗及び国歌に関する法律)が施行。学校現場での混乱もこの頃がピークで、12年度に処分を受けた教員数は過去最多の265人に上った。
東京都教委が都立高校長に国旗掲揚と国歌斉唱やピアノ伴奏の実施方法を通達した15年度も、反発した都内の教員を中心に前年度比156人増の200人が処分を受けた。
以後、文科省や各教委の指導強化に加え、組合の政治闘争に対する世論の批判が高まったこともあり、卒業式や入学式での混乱は徐々に沈静化していった。
かわって活発になったのは裁判闘争だ。処分を受けた教員らは、国歌斉唱時に起立を指示した校長の職務命令は「思想・良心の自由」を保障した憲法19条に違反すると主張。処分の取り消しなどを求める訴訟が相次いだ。
文科省調査に反映されない「不起立」も
沈静化の流れを決定的にしたのは、こうした訴訟での最高裁判断だ。
小学校入学式で国歌のピアノ伴奏を拒否し、戒告処分を受けた東京都の音楽教師が起こした訴訟で最高裁は19年2月、ピアノ伴奏の職務命令を「合憲」と判断し、原告敗訴の判決を下す。23年5月以降も同様の最高裁判断が相次いだ。
このほか、平成10年代のピーク時に反対運動に積極的に関わった教員が、定年退職などで次々に学校現場から離れていることも、沈静化につながっているようだ。
文科省調査に反映されない“不起立闘争”もあった。教委が処分という手段をとらなかったためだ。
神奈川県教委は18年3月の卒業式から、国歌斉唱時に起立しなかった教職員名を各校の校長に報告させているが、処分はせず、「粘り強い指導」を行う方針をとり、「不起立」を年々減らしてきた。
県教委関係者は「神奈川県でも教員側の敗訴が確定した。それ加えて、教員に指導を繰り返したことで、一部の頑強な教員以外に不起立が広がることはなかった。すでに沈静化しており、もう大きな混乱は起きないだろう」と明かす。
学校現場ではそろそろ、卒業式や入学式の準備が始まる。今年も処分を受ける教員が出るのか。
◇
●国旗国歌法(国旗及び国歌に関する法律)=「日の丸」を国旗、「君が代」を国歌と定めた法律。日の丸と君が代は長年の慣行で国民に定着していたが、一部の勢力は「戦争の象徴である」などとして国旗国歌と認めず、それが学校現場における混乱や不適切な扱いの一因となっていた。平成11年2月に起きた広島県立高校の校長自殺事件などを受けて法制化に向けた動きが急速に進み、同年8月に成立、施行された。同法により、卒業式や入学式での国旗掲揚、国歌斉唱に法的根拠が設けられたが、教職員組合などは同法に反発。各地で妨害活動なども起きた。
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