強欲企業が生んだタイタニックの悲劇、事故対策は欠如
「失敗の歴史」ともいえる人類の歴史の中で、悲惨な事件・事故は数知れない。それが人間の欲望や過失に起因するものであるなら、我々は過去を振り返り、二度と過ちを起こさぬよう学ばなければならない。
ナショナル ジオグラフィックの書籍『失敗だらけの人類史 英雄たちの残念な決断』(ステファン・ウェイア著)でも、そのような歴史的な事件・事故は多く取り上げられている。1912年に起きたタイタニック号の沈没事故もその一つだ。あまりにも有名な出来事ではあるが、人類が犯してきた「失敗」の代表格として、ここで改めて紹介しよう。タイタニック号を沈没へと導いた異常な自尊心と傲慢は、繰り返し語られてしかるべきだろう。
下層デッキへの浸水を許した設計ミスは、それほど馬鹿げた過ちではない。航路の選択にしてもそうだ。あの宿命的な夜に1500人あまりもの命を奪ったのは、事故の可能性を無視して十分な救命ボートの装備を怠った、タイタニック号の設計者と所有者のとてつもない愚かさにほかならない。
究極の豪華客船
タイタニック号は、大西洋横断航路の独占を目指す3隻の姉妹船のうちの一つだった。建造事業は、イギリスの海運会社ホワイト・スター・ライン社と造船会社ハーランド・アンド・ウルフ社とで行われた。1万4000人を動員して3年がかりで建造されたタイタニック号は当時、動く物体として世界最大だった。
タイタニック号は「絶対に沈まない」とうたったことは、誇大な宣伝の古い例として、当然のことだったのかもしれない。当時、ホワイト・スター・ライン社はキュナード・ライン社と熾烈な競争を繰り広げており、この競争に何が何でも勝たねばならないとの決意で、究極の船の建造を決めたのだ。