マーク・ザッカーバーグが薦める「23冊の必読書」(後編)
Business Insider
2016/06/25
「世界中の人々を結びつけること」をミッションとするFacebookのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)。彼が開設したブッククラブ「ア・イヤー・オブ・ブックス」には「異なる文化、信念、歴史、技術」に主眼を置いた本の数々が並ぶ。ザッカーバーグCEOが2015年の終わりまでに紹介した選りすぐりの23冊から、最後に7冊を紹介しよう。
前編:マーク・ザッカーバーグが薦める「23冊の必読書」(前編)
中編:マーク・ザッカーバーグが薦める「23冊の必読書」(中編)
17『世界の技術を支配する ベル研究所の興亡』 ジョン・ガートナー著
『ファスト・カンパニー』誌の編集者ジョン・ガートナーが2012年に上梓した『世界の技術を支配する ベル研究所の興亡』(邦訳:文藝春秋)は、1920年代から1980年代までのベル研究所の歴史をたどる1冊だ。
ベル研究所はこの時代に、トランジスタの発明によってテクノロジーの世界に革命をもたらし、現在のシリコンバレーを支配するイノベーション育成重視の経営スタイルを初めて発達させた。ベル研究所は史上最も多くのノーベル賞を受賞した研究所となり、物理学賞7つ、化学賞1つを獲得した。
ザッカーバーグCEOによれば、この本を選んだのは「イノベーションを引き起こすもの――どのような人、疑問、環境がそれを生んでいるのかにとても興味がある」からだという。
18『The Three-Body Problem』 劉慈欣(リウ・ズーシン)著
『The Three-Body Problem』(邦訳なし)は、中国で2008年に出版された『三体』の英訳版だ。2014年に刊行された英訳版は、1年で最も優れたSF作品に贈られる2015年のヒューゴー賞(長編小説部門)を受賞した。
毛沢東の文化大革命の時代を舞台にした『三体』は、中国政府がひそかに宇宙へ送った信号を受け、異星人が地球侵略を決めたところから始まる。この作品が注目に値するのは、中国の文化的な変化を暗示していると見られるためだ。中国では急速な現代化と進歩により、国民の想像力が刺激されている。
この小説はブッククラブで読んできた重めの本の合間の楽しい息抜きになると、ザッカーバーグCEOは書いている。
19『ヤバい社会学』 スディール・ヴェンカテッシュ著
コロンビア大学の社会学教授ヴェンカテッシュは、ラディカルな社会学実験として1990年代にシカゴのギャングに身を投じた。その体験をまとめたのが本書『ヤバい社会学』(邦訳:東洋経済新報社)だ。
ザッカーバーグCEOによれば、ヴェンカテッシュの物語は経済や文化の壁を超えたコミュニケーションと理解をめぐる感動的な物語だという。
「みなが自分の見方を伝えるための声を持つようになれば、お互いにより共感し、お互いの権利を尊重できるようになる」とザッカーバーグCEOは書いている。
20『ゲーム・プレイヤー』 イアン・M・バンクス著
1988年に最初に出版された『ゲーム・プレイヤー』(邦訳:角川書店)は、「カルチャー」シリーズの第2作にあたるSF作品だ。人間の欲求をかなえるための技術が極度に進歩し、それが人間の能力を超えてしまったとしたら、文明はいったいどのような姿になるのかを突きつめている。
ザッカーバーグCEOによれば、SF作品を手にとるのは「気分転換」のためだという。テスラ・モーターズとスペースXのイーロン・マスクCEOも、この小説をお気に入りの1冊に挙げている。エンターテイメントでありながら、技術の進歩を説得力のある形で掘り下げているからだという。
21『Orwell’s Revenge』 ピーター・フーバー著
マンハッタン研究所政策研究部門の研究員フーバーは、ジョージ・オーウェルによる『一九八四年』の非公式な続編として、1994年にこの本『Orwell’s Revenge』(オーウェルの復讐:邦訳なし)を発表した。
当時はインターネットと電気通信の技術により、新たなコミュニケーション手法が開拓されつつあった。この小説で描かれる世界では、市民たちがかつて自分たちを縛りつけていた技術を利用してみずからを解放しようとする。
「歴史が実際にどう展開したかを目にしたあとに書かれたフーバーの小説では、インターネットのような道具が人々に恩恵をもたらし、社会をより良い方向へ変えていく過程が描かれている」とザッカーバーグCEOは書いている。
22『エネルギーの不都合な真実』 バーツラフ・シュミル著
2006年に最初に出版された『エネルギーの不都合な真実』(邦訳:エクスナレッジ)は、まずエネルギーとは何かについて基本的な説明をしたのち、効率的で環境志向的な燃料の探求といった、より複雑なテーマを論じている。著者のバーツラフ・シュミルはマニトバ大学の教授で、ビル・ゲイツのお気に入りの著述家のひとりでもある。
「エネルギーの仕組みやエネルギーの生産と消費の進化、そしてそれが気候変動に与える影響などの重要なテーマが掘り下げられている」とザッカーバーグCEOは述べ、同じくシュミルの『Making the Modern World』(邦訳なし)も読むつもりだと書いている。
23『儀式は何の役に立つか――ゲーム理論のレッスン』 マイケル・S‐Y. チウェ著
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で経済学を研究するマイケル・S‐Y. チウェ教授が書いた『儀式は何の役に立つか――ゲーム理論のレッスン』(邦訳:新曜社)は、ソーシャルメディアの最善の利用方法を学ぶうえで役立つはずだとザッカーバーグは言う。
「この本は『常識』という概念をめぐるものだ。人々は世界を処理する際に、自分が個人的に知っていることだけでなく、他者が知っているはずのことや共通の知識をも基盤にしているという考え方が描かれている」とザッカーバーグCEOは書いている。
チウェの考え方は複雑に思えるかもしれないが、基本的には公共の場における他者との交流の背後にある心理を解剖し、人々がそうしたコミュニティや儀式を利用してみずからのアイデンティティを形成する仕組みを説明している。
※ 前編:マーク・ザッカーバーグが薦める「23冊の必読書」(前編)
※ 中編:マーク・ザッカーバーグが薦める「23冊の必読書」(中編)
原文はこちら(英語)。
(原文筆者:Richard Feloni、翻訳:梅田智世/ガリレオ、写真:FLDphotos/iStock)
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