マーク・ザッカーバーグが薦める「23冊の必読書」(中編)
Business Insider
2016/06/18
「世界中の人々を結びつけること」をミッションとするFacebookのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)。彼が開設したブッククラブ「ア・イヤー・オブ・ブックス」には「異なる文化、信念、歴史、技術」に主眼を置いた本の数々が並ぶ。ザッカーバーグCEOが2015年の終わりまでに紹介した選りすぐりの23冊から、今回は新たに8冊を紹介しよう。
前編:マーク・ザッカーバーグが薦める「23冊の必読書」(前編)
9『宗教的経験の諸相』 ウィリアム・ジェイムズ著
テネシー大学がまとめた「インターネット哲学百科事典(Internet Encyclopedia of Philosophy)」によれば、ウィリアム・ジェイムズ(1849~1919年)は「最も洞察の深い刺激的なアメリカの哲学者であると、多くの人によって考えられている」哲学者だ。
ジェイムズの講義録をまとめた『宗教的経験の諸相』(邦訳:岩波文庫)は宗教意識について検証し、人々が宗教を人生の意義の源として利用し、活力と目的を持って人生を前進するための原動力とするメカニズムを掘り下げている。
「『Sapiens』を読んだ際、人類の生活において宗教がもつ役割の進化に関する章が特に興味深かったので、もっと深く知りたいと思った」とザッカーバーグCEOは書いている。
10『科学革命の構造』 トーマス・S・クーン著
物理学者の読むべき哲学書があるとすれば、それはおそらく『科学革命の構造』(邦訳:みすず書房)だろう。
「スタンフォード哲学百科事典」の解説によれば、科学の進化と現代世界に及ぼすその影響を検証した本書は、1962年に初めて刊行されて以来、「史上もっとも多く引用された学術書の1冊」となっているという。科学の飛躍的な進歩が社会的発展の触媒になっていると意識することは「社会的利益を実現するための力」になりうると、ザッカーバーグCEOは考えている。
クーンによるこの本は「パラダイムシフト」という概念を提起したことでよく知られている。この言葉は、科学史上の出来事によってものの見方が根本的に変わった瞬間を表している。たとえば、量子物理学がニュートン力学に取って代わったときなどがそれにあたる。
11『Dealing with China』 ヘンリー・ポールソン著
ザッカーバーグは数年前から、中国文化におおいに魅了されている。標準中国語の会話を学んでいるほか、中国政府を説き伏せて中国国民のFacebook利用を認めさせることが長期的目標のひとつだとも述べている。
元アメリカ財務長官ヘンリー・ポールソンによる『Dealing with China』(邦訳なし)は、近年における中国の国際的影響力の拡大と、それが世界に与える影響を考察している。
「中国はここ35年、人類史上屈指の大きな経済的および社会的変化を経験している」とザッカーバーグCEOは書いている。「何億もの人が貧困から抜け出した。これは多くの指標によって示されていることだが、人々を貧困から脱出させるうえで中国が果たしてきた貢献は、世界のほかの地域をすべて合わせたものよりも大きい」
12『無限の始まり――ひとはなぜ限りない可能性をもつのか』 デイヴィッド・ドイッチュ著
ザッカーバーグが2015年の最後に選んだ1冊は、オックスフォード大学の物理学教授デイヴィッド・ドイッチュによる『無限の始まり』(邦訳:インターシフト)だ。科学革命以後の人類の進歩を広範囲にわたって考察したこの本は芸術や科学から政治、哲学に至るまで、ありとあらゆる分野に触れている。
人類の可能性は無限だと、ドイッチュは結論づけている。「ア・イヤー・オブ・ブックス」で選ばれた本にはいずれも人類の運命を楽観的に捉えているという共通点があるが、『無限の始まり』はおそらくその楽観主義を最も純粋に表現したものといえるだろう。
13『暴力の人類史』 スティーブン・ピンカー著
ハーバード大学の心理学教授による『暴力の人類史』(邦訳:青土社)は、800ページ(原書)に及ぶデータ満載の大著だ。近寄りがたく見えることはザッカーバーグCEOも認めている。
だが、文章は意外と読みやすい。ピンカーは本書で、暴力が時代とともに減少してきた経緯を掘り下げている。「24時間」という新たなサイクルとソーシャルメディアにより実像よりも大きく見えているものの、暴力は実際には減少しているというのだ。この研究から得られる視点は人生を変えうると、ザッカーバーグCEOは考えている。
注目すべきは、ビル・ゲイツも本書をこれまでに読んだ最も重要な本の1冊としている点だ。
14『ゲノムが語る23の物語』 マット・リドレー著
リドレーは、ザッカーバーグCEOのリストに2度にわたって登場した唯一の著者。1990年に刊行された『ゲノムが語る23の物語』(邦訳:紀伊国屋書店)は、遺伝子の進化と遺伝学分野の成長を探究した1冊だ。
「この本の狙いは、社会学ではなく遺伝学の観点から人類の歴史を語ることにある」とザッカーバーグCEOは書いている。「2015年に読んださまざまな歴史書を補完してくれるに違いない」
15『権力の終焉』 モイセス・ナイム著
ザッカーバーグのブッククラブの幕開けを飾ったのは、元世界銀行理事でカーネギー国際平和財団のシニアフェローでもあるナイムによる、この高邁な1冊だった。
『権力の終焉』(邦訳:日経BP社)は「権力」が独裁的な政府や軍、大企業から個人へと移っていく経緯を歴史にもとづいて分析している。そうした権力移動のプロセスは、いまやシリコンバレーの常套句となった「破壊的スタートアップ」のなかにも明らかに見てとれる。
「人々に対してより大きな権力を与える潮流は、正しいものだと心から信じている」とザッカーバーグCEOは書いている。
16『On Immunity』 ユーラ・ビス著
アメリカやヨーロッパの各地で「反ワクチン運動」が起きていることを考えれば、予防接種の利点を研究したビスの『On Immunity(免疫について)』(邦訳なし)は必読の書だとザッカーバーグCEOは言う。
「科学的にはまったく明白だ。予防接種には効果があり、人間社会の全員の健康を守るうえで重要なものだ」とザッカーバーグCEOは述べ、この本は科学者や公衆衛生の仕事をする人たちから強く薦められたと付け加えている。
「この本は、一部の人たちがワクチンに疑問を抱く理由を検証したうえで、その疑いが根拠のないものであり、ワクチンは実際に効果的で安全だということを論理的に説明している」とザッカーバーグCEOは書いている。
※ 前編:マーク・ザッカーバーグが薦める「23冊の必読書」(前編)
※ 後編:マーク・ザッカーバーグが薦める「23冊の必読書」(後編)
原文はこちら(英語)。
(原文筆者:Richard Feloni、翻訳:梅田智世/ガリレオ、写真:Erik Khalitov/iStock)
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