本格的に取り組む企業が増えてきたIoT。今後の数年間で、国内のIoT市場はどの業界が伸び、またどの業界が伸び悩むのか。株式会社ウフルIoTイノベーションセンター所長として、大手企業や地方自治体にアドバイザリを行なう八子知礼氏が、各種統計資料を参照しつつ語る。

注目は運輸、エンタメ、製造

IoTビジネスが、2017年から本格的な取組として紹介されることが多くなってきた。政府も「Connected Industries」というコンセプトを発表し、1つの企業や業界でつながるのみならず、様々な会社が業界をこえてつながる時代を見据えた取組を加速させ始めている。

そんな中で、IoTへの取組を加速させて市場規模が伸びる業界と、意外にも市場規模が伸びない業界があることをご存じだろうか。

まずは伸びる業界に注目してどのような領域に市場性があると期待されているのかについて解説し、その後、市場が伸びにくい業界についても言及していきたい。図1を見てほしい。

図1 2017年版IoT関連市場の将来予測

出典:総合プランニング「2017年版IoT関連市場の将来予測」2016年11月

国内におけるIoT市場でどの業界が伸びるのかを直近5年で予測している、2016年発表のチャートである。伸びると予測されている業界の第1群は運輸(自動車を含む)、エンタメ、製造業の3業界である。次いで、物流、エネルギー、レンタル・リース、旅行、情報通信となっている。

それぞれについてどのような領域に着目すべきかを、様々な産業のアドバイザリに関与している筆者の見聞と、実プロジェクト傾向などに基づく見解で解説していきたい。

伸びる業界(1) 運輸(自動車・鉄道を含む)

言うまでもなく、今から3〜5年ほどの間の最大の関心事は自動運転車の登場である。自動運転車が登場することによって、自動車は「移動する車室内空間の販売ビジネス」となってしまう。

おりしも2018年1月にラスベガスで開催されたCES(Consumer Electronics Show)で、トヨタ自動車は自動車メーカーではなく、「モビリティサービスのプラットフォーマーになる」と宣言して、他業界のビジネスを車室に持ち込むことが可能なスケルトンカーのプラットフォームモデル「e-Palette」を発表したことも記憶に新しい。

 

よって、このクルマに関連する業界には車室内がつながるのみならず、車室外の様々な業界とつながることが期待されているため、2020年に飛躍的に市場が伸びると予想されているわけだ。

自動車産業が一大産業クラスターとなっている日本にとっては、まさに空前絶後の大チャンスとも言えるだろう。

伸びる業界(2) エンターテイメント

IoTでエンタメと言うと首をかしげて「パチンコ?」という質問を受けることもよくある。だが、エンタメ業界で期待されているIoTの形は、IR法(Integrated Resort)の成立によって日本でも本格的に導入整備が始まる、リゾート型の「スマートシティ」の整備についてだ。

ここで言う「スマートシティ」とは、カジノの併設などを伴う大規模な国際会議場、国際展示場、ホテル、娯楽・遊園施設、ショッピングモール等が一体となった複合商業施設のことである。

これまでのエネルギー管理中心のスマートシティから、滞在経験価値の最大化をねらった商業中心のスマートシティへと大きく変化していることがポイントだ。シンガポールのマリーナベイサンズ、マカオのカジノコンプレックスなどがイメージしやすいだろう。

カジノフロアには数平方メートル当たりに1台、フロア全体では数百台規模の監視カメラが設置され、入退館に際しても個人認証やセキュリティ確保のソリューションがしっかりと番人の役割を果たす。

さらに、各商業施設間はスマートフォンと連動したデジタルサイネージへの広告・コンテンツ表示などによる顧客誘導が行われるようになる。

また、それらがすべて統合的なネットワークに接続され、位置情報と連動した顧客動線の分析とマーケティングメッセージの最適化が行われるなど、複数のビルや空間をまたいだ街全体での大規模なIoT化が実現される見通しだ。ここに大きな市場が存在すると予測されているわけだ。