大工は去れ!




マニュアルを作らない社風

葬儀業界でも時代の流れに合わせて必要なスキルは変わる
そして老害は迷惑という話です。
大工さんを非難する話ではありません(^^;)

先日こんな記事を書きました。
大手互助会アルファクラブ武蔵野さんが運営する葬儀社さがみ典礼が「また」やらかした理由 | 考える葬儀屋さんのブログ
↑この記事で述べた理由の根拠が↓この記事です。
さがみ典礼さんのマニュアル不要論の不思議 | 考える葬儀屋さんのブログ

この「マニュアルを作らない」社風の原因となっていると思われる経営陣について、上記企業のOBと思われる方からコメント欄で「現役のときは自宅葬などで活躍し優秀な葬儀屋さんだった」という話をうかがいました。
これが事実かどうかはさておき、一般論として葬儀業界ではありがちな病理として論じたいと思います。

大工マインド

私が葬儀業界に入ったのは20年以上も前ですが、その当時も自宅葬「命」という先輩社員が結構居ました。
当時は都市部とはいえ自宅でお葬式をするケースもまだ2割ほどあったのです。
自宅でお葬式をするのはちょっとした引っ越し騒ぎで、葬儀屋さんには下記の能力が求められました。

  • 祭壇を設置するメインとなる部屋を決める
  • 受付や会食の場所を決める
  • 受付から焼香までの動線を決める
  • テント張る
  • 室内の装飾を行う。

当時は角材を家中張り巡らして幕をこれでもか!というくらいに張っていました。
最終的に設営をどれだけ早くきれいにできるか、つまり「大工仕事」が当時の葬儀屋としてのアイデンティティだったのです。

一方でそんな大工タイプは接客やコンサルティングやマネジメントがまったくと言っていいほどできていない人が大半でした。
敬語はヘンだし、遺族の事情お構いなしに自分の型にはめようとするし。
後進の教育も全然できていませんでした。する気も無かったでしょう。

私は手先が不器用なこともあってそんな先輩社員から「これだからインテリは使えねぇ」(注:当時葬儀業界で大卒は希少種)と罵声を浴びせられていました。
ここで脱落して辞めていく若手社員も何人かいました。

時代は変わる

しかし当時トレンドとして自宅葬が葬儀に占める比率は下がっており、どんどん会館葬に取って代わられていました。
インターネットが登場してデジタルデバイド(情報格差)が起こり始めていました。
死亡人口が増えて、葬儀業界も人手不足になってくると、普通の人がすぐ担当持てるように効率的体系的に育成する必要がでてきます。

てことは、まてよ、あと自分が10年生き残れば、立場逆転するんじゃね?と思い始めたのです。
とはいえ当時自分が数年持つかすら自信はなかったのですが(^^;)
結局先輩社員は素行が不良だったので、たやすく社会人の一線を越えてしまい、淘汰されることに。

その結果、私は戦略的に(といいたいところですが、かなりラッキーな側面が多い)生き残ることができたのです。
幕を張るのは今でも下手です。
というかそんな機会はほとんどなくなりました。

そして老害に

残念ながらそんな先輩社員が運悪く現在まで生き残ってしまった葬儀社というのも当然あります。
そういう先輩社員が生き残るくらいですから基本的に年功序列の社風。

そんな人達は成功体験や自分が苦労して得たスキルを手放そうとしません。
おそらく改善に対して最後まで抵抗してきたはずです。
「オートマのトラックがほしい?マニュアルで運転しろ!」
「ナビだぁ?道ぐらい覚えろよ!」
「仕事は見て覚えるもんだろ!」
「とりあえずガタイのいいやつ採用しとけ!」
「パソコンばっかりやってんじゃねぇ」

これ実際私が耳にしたセリフです。

そして今でもこう言います。
「マニュアルなんかに頼るな!俺が現役の頃はその家の間取りを見たら、自然と参列者の動線が頭の中にうかんできたもんだ。」

私と先輩社員、どちらが正しかったかは現役の葬儀屋さんがジャッジしてください。




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