橋下徹氏が今年9月あたりを予定している大阪都構想の住民投票について、浸透しきっていないなどの理由から「先送りした方がいいのではないか?」とTwitterで述べた。

それに対して大阪の松井知事は「選挙の時に約束した以上、約束を果たすのは政治家として当然」と現状の予定を大きく変更する意思はない模様。

橋下氏の意見は至極当然の提案だし、むしろ一般の感覚には近いのではないかと思う。松井知事の姿勢は政治家として素晴らしいものだし、選挙に掲げた以上は当然のことでもある。なのでこれは両者ともにお互いの立場の上で信念を貫かれればよいのだと思うし、外野がどうこう言うものではないと思う。

ところで、この一連の橋下氏のTwitterの中でで強く共感を覚えた記述があった。

大阪都構想は維新を支持していない大阪市民の理解も必要になる

この一文はキャスターとして取材した3年前の大阪都構想の住民投票の際に、強く感じた感覚だった。

誤解を恐れずに言う。

当時の維新のメンバーは、自分たちは必死にやっているつもりだったろうが…「維新ファン」「橋下ファン」を集めて、すでに目の前の人たちは全員知っている「都構想」についての話をしているシーンが目立った気がする。死ぬ気で色んな場所に突っこんでいっていたのは橋下氏と一部の議員だけだったように私の目には映ったシーンが少なからずあった。

大阪自民や共産党はどうだったか?

私のニュース番組に橋下氏と大阪自民・大阪共産党の議員が出演して下さったときがあった。
当時の私は公共の電波を預かるキャスターという立場であり、放送法4条の観点からもそれぞれを主張を聞く以上の仕事は不可能であった。

私の目の前で共産党の議員が言う。

「都構想が可決されてしまえば、救急車が来なくなる懸念があります!」
「都構想になれば、今まで入れていた保育所も入れなくなる可能性があるのです!」

正直ずっこけた。

おいおいおい、何処まで暴走するんだ?このウソつき議員は?
何も言えない。キャスターなので橋下氏が反論するのを待つしかない。が、橋下氏もあまりの作り話に戸惑っている。ほぼ「魔女の証明」。いくらなんでも作り話が過ぎる。

大阪都構想は東京のシステムをほとんどそのまま持ってくるだけだ
東京で起きてない問題など基本的に起きない。東京で救急車が来ないのか?大都市って大変だな、おい。

大阪自民の議員まで
「『大阪会議』で二重行政は対応可能なのです」
などと主張している。これも同じ。絶対そんなので対応できる訳はないのだが「未来の話」なので、橋下氏も「まだ起きていない未来」について反論できない。

そんなふざけた番組のキャスターをやってたんだ。そりゃあ、全部捨てて政治家になろうと考えるだろ。ウソだらけ放送をした責任者なのだし。

が、丁寧に取材していると大阪自民や共産党の連中は…良くも悪くも

必死

だった。当たり前だ。都構想とは市議会議員が全員クビになるって話だ。「職業:政治家」の皆さんにとっては生活が成り立たなくなる。彼らにとっては「命がけ」の話なのだ。

なので、特に自民は自分たちが普段から予算をばらまき、癒着している企業や団体を丁寧に回りまくっていた。特にバックにいる安倍政権をちらつかせながら、自民党と仲良くしたかったら都構想に反対をすべき、と徹底的に地上戦を展開していた。とにかく「足を使って」いたという印象。

そして共産党は相も変わらず大ウソとレッテル貼りの連続。
まぁいつものことだが、徹底的にウソを盛り込み印象操作しまくったチラシを「新聞赤旗」で得た収益を使ってバラマキまくっていた。

嘘つきだし、恥ずかしい連中であることは間違いないのだが…大阪自民や共産党は…生活が懸かっているので

「必死」

だった。そこは間違いのない事実だった。

対して維新は橋下氏人気で、何処に行っても必死の動員をかけなくても人は集まる。橋下氏ファンが声援を送ってくる。街を歩けば、エールが送られる。維新のメンバーは自分たちはとても必死にやっていたと感じていたのだろうと思うが…正直に言って「両方を」取材した人間に言わせれば…

「必死さ」は大阪自民や共産党の連中の方が確実に上だったことは間違いなかった。

ウソだろうが何だろうが、とにかく生活と家族を守るために「必死」だった。そこは確かだった。

あれから3年もたった。
橋下氏の去った後、橋下氏のお陰で政治家になれた維新の政治家は本当に「命がけ」で「都構想の重要性」をこの3年間毎日、説明して回っていたのかな…。反対派の住民の集合体の中に、何度突っこんでいったのだろうか?

堺市長選でも感じたことだが、維新のメンバーはマイクを持って大きな声で演説をしていることが多いが、自民の面々のようにひざを突き合わせて「大阪都構想に反対の住民」の中に入っていって、人と人として訴えていたのかな。大阪自民や共産党のウソつき連中と同じような必死さで、3年間訴えてきたのだろうか。

本当にそうやって訴えてきたのであれば、今の世論調査の結果になっているだろうか…?

ひょっとして、昔と同じように「維新ファン」「橋下ファン」の前でだけ話をしてないだろうか?だとしたら支持は広がらない。絶対に。なぜなら支持を広げるためには…「反対派の住民」と徹底的に顔と顔を合わせて話をしなければいけないからだ。

少なくとも橋下氏は反対派の住民も全員呼んで、タウンミーティングを繰り返していたように見えた。反対派が嫌がらせの質問をしてきても、必ず一言目には「ご質問ありがとうございます」と言ってから論破していた。

今の大阪維新のメンバーは毎日何人の「反対派」に会っているのだろう?
今の維新ファンに会っても票は伸びない。
今、会わなければいけないは「都構想反対派」である。忙しい時もあるだろうが、1週間に何人の「反対派」に会って話をしているのだろう。そして1週間で何人の説得に成功しているのだろう?




大阪都構想。

普通のことしか言ってない。
3年前も、全国的に「大阪都構想を支持するか?」というアンケートがどこかで行われていたが、賛成が70%を超えていた。そらそうだ。大阪府の下に大阪市なんていらない。人口270万人の行政区なんて絶対いらない。当たり前のことしか言ってない。

が、敵は必死なのだ。命かけている。

私は千葉に住んでいるし仕事も家族を守るために仕事している以上、大阪にずっと張り付くわけにはいかない。
が、心配にはなる。
大阪の維新のメンバーは『命かけている』のか?相手はマジで「命をかけて」反対運動しているんだが、正しいことを言っていることに甘えていないだろうか?

1月ももう終わる。
あと8か月ほどだ。
歴史が動く時が来るのだろうか。