保育園大手のセクハラをめぐるお家騒動(前)~JPホールディングス
創業者と経営者が経営方針をめぐって対立することは珍しくないが、保育園運営大手、(株)JPホールディングス(以下JPHDと略。東証一部上場)は、かなり異質。現経営陣と筆頭株主で創業者との泥仕合の原因は、創業者のセクハラ問題。セクハラをめぐるお家騒動は前代未聞の出来事だ。
臨時株主総会は決着がつかず
JPHDは11月22日、名古屋市内で臨時株主総会を開いた。日本経済新聞電子版(11月22日付)は、途中3回の休会を含む約5時間半のロングラン総会になったと報じた。
創業者の山口洋氏が株主提案として提出した「取締役の解任要件の緩和」「取締役1人の解任」は否決され、「社外取締役1人の解任」は決議されなかった。経過措置を付けて取締役の任期を短縮する会社側議案も否決された。(日経新聞電子版11月22日付)
定款変更や解散・合併など経営にかかわる重要なことを決める特別決議には、3分の2以上の賛成が必要になるが、どちらとも3分の2以上の賛成を得ることはできなかった。創業者と現経営陣との対立は長期戦に突入した。
それでは、JPHDとはどんな会社で、何が原因で対立が生じたのか。
株式会社による保育園事業に参入し急成長
山口洋氏(56)は京都府生まれ。明治学院大学法学部を卒業後、大和証券(株)に入社。8年間勤務。92年に退社。翌93年、(有)ジェイ・プランニングを名古屋市で設立。パチンコ店などの客にコーヒーを給仕するワンコインサービスで急成長を遂げた。96年に(株)ジェイ・プランニング(現・JPホールディングス)を設立した。
転機は2000年の保育所の規制緩和。それまで、認可保育所の設置は市町村や社会福祉法人に限定されていた。しかし、待機児童問題を背景に、認可保育所の設置主体が撤廃され、株式会社も認可保育所を設置できるようになった。
01年保育事業に参入。株式会社による保育園の運営というビジネスが評価され02年ジャスダックに上場。今では、全国で180以上の保育園、80以上の学童クラブ・児童館を展開する最大手に急成長した。
15年2月、創業者の山口氏が退任した。プレス発表によると、「体調不良による入院」が辞任の理由。今回のお家騒動で、「女性社員に対するセクハラ行為が辞任の理由だった」ことを会社側が公表した。
後任社長の荻田和宏氏(52)は関西学院大学社会学部を卒業し、大和証券に入社。99年にジェイ・プランニングに入社。管理部長を務めていた。
社長に就任した荻田氏は、少子化が進むなか、首都圏を中心とした待機児童問題は解消すると見て、民間学童クラブや保育園向けコンサルティングなど周辺事業に参入、ベトナムなど海外に進出するといった多角化を進めた。
しかし、新規事業の展開や、保育士の給与引き上げによる人件費増が重石となり、17年3月期の連結決算は大幅な減益となった。売上高は前期比11%増の228億円だが、営業利益は31%減の12億円、純利益は43%減の6億円と大幅な減益決算。1株あたりの配当を5円から2.5円に減らした。
成長に急ブレーキがかかったことに業を煮やした萩田氏は、6月29日に開かれたJPHDの定時株主総会で、取締役の任期を2年から1年に短縮する株主提案を行った。総会後に提出された臨時報告書によると、任期を短縮する議案は賛成39.03%で否決された。一方、山口氏は、海外進出ではなく、待機児童対策に国内の保育園事業を拡大すべきだと主張。「コーポレートカバナンス(企業統治)が機能していない」として、臨時株主総会の招集を求めたのである。
(つづく)
【森村 和男】
<COMPANY INFORMATION>
(株)JPホールディングス
代 表:萩田 和宏
所在地:愛知県名古屋市東区葵3-15-31
設 立:1993年3月
資本金:16億395万円
売 上:(17/3連結)227億9,900万円