寝る前10分のルールを決めて人生の満足度をアップさせよう

寝る前の10分、何してる?

みなさんは寝る前の10分、何をしていますか?もしスマホやPCで仕事のメールチェックをするのが習慣になっている場合は、即刻やめてしまいましょう。

実はこの10分をどう使うかで、その夜の眠りの質ばかりか、次の日の良し悪しにも影響が出ることがわかっているからです。その影響が毎日に及ぶと考えれば、寝る前の10分は人生の満足度さえ左右します。

以下では「寝る前10分」が人生にどのような影響を与えるかを解説しながら眠りの質を改善し、かつ人生の満足度をアップさせる方法を紹介します。

「寝る前10分」が人生を変える理由

●寝る直前の時間は「記憶のゴールデンタイム」

精神科医であり作家でもある樺沢紫苑さんは『脳のパフォーマンスを最大まで引き出す 神・時間術』の中で、寝る前の15分は「記憶のゴールデンタイム」であり、学習効率が非常に高い時間帯だといいます。

寝る前の1時間〜2時間を「記憶のゴールデンタイム」とする研究者もいるため、具体的な時間にはばらつきがあるものの、寝る直前の時間が記憶にとって非常に重要な時間であるとしている点には違いありません。

というのも寝る直前に記憶した情報は、そのあと眠ることによって他の情報とごちゃまぜになりにくいからです。眠りには記憶のバックアップ機能がありますが、ごちゃまぜにならずに済んだ情報はそのままスムーズに保存されるため、効率的に記憶できるというわけです。

またこれと関連して心理学に「特別無条件同化暗示感受習性」という言葉があります。これは寝る前に人間が示す性質で、寝る前に考えたことが潜在意識に定着し、その人間の人となりを作る状態を示します。

つまり「記憶のゴールデンタイム」に何をするかは、学習面だけでなく、人生における個人のあり方にも大きく関わってくるのです。

●上質な眠りがもたらす効果と「黄金の90分」

スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所所長を務める西野精治さんの著書『スタンフォード式 最高の睡眠』には、眠りが持つ5つの機能が紹介されています。

1.脳と体に「休息」を与える
2.「記憶」を整理して定着させる
3.「ホルモンバランス」を調整する
4.「免疫力」を上げて病気を遠ざける
5.「脳の老廃物」をとる
※前掲書p69〜75から抜粋

しかしどんな眠りでもいいから、とにかく眠ればこれらの機能がきっちり働くわけではありません。眠りは量よりも質が重要で、特に西野さんが「黄金の90分」と呼ぶ、入眠直後の90分は眠り全体の質を大きく左右するとされています。

ではどうすればこの90分に質の良い眠りを得られるのでしょうか。西野さんは「答えはいたってシンプルだ」として次のような条件を挙げています。

・毎日同じ時間に起きて、同じ時間に寝る。
・ベッドに入るのは日付が変わる前。
・ベッドから出るのは日が昇り、朝が来るタイミング。

ただ、西野さんがこれらの条件を書いたあとすかさず補足しているように、普通に働いている人にとってこんな条件は到底実行できません。

これは西田さんの出した結論ではありませんが、仕事に加えて、家族や友人との時間、そして自分の時間、それらを考慮したうえで今すぐ眠りのために割ける時間の目安は、10分程度が妥当でしょう。

だからこそ、その10分をどう過ごすかが重要になってくるのです。

「寝る前10分」でできる科学的睡眠術

●「寝る前10分」でやることを決める

西野さん曰く、より質の良い眠りを得るためには「脳のスイッチ」と「体温のスイッチ」を眠りのモードに切り替える必要があるとしています。

しかし寝る前に頭を興奮させたり、体を動かしすぎたりすると、スイッチが眠りではなく覚醒のモードになってしまい、眠れなくなってしまいます。

そのため寝る前10分でやることは1つに絞り、最終的には頭で何も考えずに実行できる状態を目指すべきでしょう。以下では科学的根拠のある様々な睡眠術を紹介します。実際に生活に取り入れる場合はどれかを選ぶようにしてください。

●眠りの質を向上させる「足湯」

寝る前の入浴が体に良いという話は聞いたことがあるかもしれません。スタンフォード大学の実験データによれば、40℃のお湯に15分浸かると深部体温が0.5℃が上がり、それが元の体温より下がっていくのが入浴後90分以降とされています。

つまり寝る90分前に15分の入浴をしておけば、眠りの質が向上するというわけです。しかしこれでは時間がかかりすぎるうえ、手間もかかります。

そこで「足湯」の出番です。足湯は最も手っ取り早く入眠前の深部体温の低下を促す方法なのです。というのも人間の深部体温が下がるのは、手足から熱が放散するからです(子供が眠くなると手足が熱くなるのはこのため)。

この原理を利用して足を直接温めて血行を促進し、熱の放散が起きやすくするというわけ。簡単で、しかも寝る直前でも効果があるため、寝る前10分の習慣としてぴったりといえるでしょう。

●気持ちよく眠るための「楽しいことだけ日記」

「楽しいことだけ日記」は文字どおり、楽しいことだけをノートに書き出す日記です。「お昼に食べた定食が美味しかった」「仕事がうまくいった」「帰りにスーパーに寄ったら野菜が安かった」などなんでも構いません。

大切なのは寝る前の頭の中を、心地よい情報だけで満たすことです。

これは前述した「特別無条件同化暗示感受習性」を利用したものです。「楽しかった」「幸せだった」という記憶を脳に定着させ、気持ちよい眠りだけではなく、自分の人生に対する認識もより前向きなものに変えられます。

●人生を変える「瞑想」

全米で個人・企業向け健康アドバイザーとして活躍するショーン・スティーブンソンさんの著書『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』によれば、瞑想(マインドフルネス)は眠りに対して高い効果を発揮します。

初歩の瞑想は思考を意図的にストップさせて、呼吸や身体感覚などに意識を集中させて行います。これによって会得できる集中力を、そのまま眠ることに差し向ければ、これまでよりも簡単に入眠できるというわけです。

瞑想の熟達者は何時間でも瞑想していることができますが、最初のうちは5分や10分集中するのが精一杯だという人が多いようです。そのため寝る前10分に瞑想をして心を落ち着け、そのあとベッドに入ればちょうどいいでしょう。

瞑想で身につけた集中力は、眠りだけでなく仕事やプライベートにも大いに役立ちます。文字どおり寝る前10分で行う瞑想が、人生を変えるかもしれません。

●入眠作用もある「ストレッチ」

ストレッチには筋肉の緊張をほぐし、血行を促進する効果がありますが、同時に自律神経を整えてストレスを軽減する効果もあるとされています。

あまりハードにやると頭と体温のスイッチが覚醒モードに切り替わってしまいますが、動きや手順を単純にしておけばリラックスしてベッドに入ることができます。

おすすめなのは1ヶ所につき30秒、全部で20ヶ所の筋肉を伸ばすメニューの組み方です。具体的な部位としては以下の20ヶ所が挙げられます。

<首(4ヶ所)> 前後左右
<肩(2ヶ所)> 前後
<肩甲骨(4ヶ所)> 前後上下
<背中(2ヶ所)> 左右
<太もも(2ヶ所)> 前後
<下腿(膝から下の部分、2ヶ所)> 前後
<股関節(4ヶ所)> 前後、内側、外側

最初は上半身だけにして、慣れてきたら下半身にするなど、できるだけ頭の興奮につながらないよう調整しましょう。また、「ストレッチはめんどう」という人はストレッチポールに寝転がるだけでも、筋肉のリラックス効果を得ることができます。

●心身を落ち着かせる「マグネシウムオイル」

スティーブンソンさんは前掲書の中で、マグネシウムオイルが眠りにもたらす効果について触れています。マグネシウムには自律神経に作用して筋肉の弛緩や血糖値・血流・血圧の正常化などの役割がありますが、現代人のほとんどがマグネシウム不足状態なのだそうです。

このマグネシウムを効率的に摂取できるのが肌を通じて吸収するマグネシウムオイルです。製品によってはオイルに含まれるマグネシウムを100%近く吸収できるものもあると言われています。

筆者も実際に使っていますが、睡眠計で経過を観察すると、ベッドに入ってから深い眠りに落ちるまでの時間が短く、しかも深い眠りの時間は長くなっています。

もちろん個人差はあるでしょうが、10分どころか1分で塗布できるので、かなり手軽な習慣といえます。日本では手に入るお店があまりありませんが、iHerbなどの海外通販サイトなら手軽な価格で手に入れることができます。

●「寝る前の哲学書」は脳内麻薬を促進する

脳内麻薬「βエンドルフィン」は、モルヒネの6.5倍もの鎮痛作用を持つ物質です。分泌が活発になれば肉体・精神両方の痛みを鎮めるほか、幸福感に包まれるとされています。

そしてこのβエンドルフィン、私たちが苦痛を感じると活発化します。私たちは難しい内容の映画や結論の見えない会議などに直面すると、思わず眠たくなってしまいます。これは脳が苦痛を感じて、βエンドルフィンを分泌しているからです。

これを寝る前10分の時間に応用しましょう。寝る前に哲学書や医学の専門書など今の自分では理解が難しい本を軽く読むのです。するとβエンドルフィンの分泌量が増え、結果的にリラックスして眠りに入ることができるというわけです。

●「頭を冷やす」で脳の代謝をスローダウンさせる

昼間の上司との口論や、次の日の会議でのプレゼンの不安などから、頭がぐるぐると考え続けてしまって眠れない。そんな夜に効果的な方法が「頭を冷やす」です。

米Cereve社の不眠症治療装置Cereve Sleep Systemは、前頭部を冷却して前頭前皮質の温度を下げて脳の活動レベルを下げ、睡眠の導入をスムーズにするという装置です。

この装置はすでに臨床試験で効果が実証されており、FDA(アメリカ食品医薬品局)による認可も受けています。このことから文字どおり「頭を冷やす」という方法は、ともすればヒートアップしがちな睡眠前の頭をクールダウンし、眠りに導いてくれることがわかります。

実践方法は非常に簡単。保冷剤や市販の小豆などをタオルや保冷パックに包んで、おでこや後頭部に乗せればOKです。特に小豆は15%が水分で、冷凍庫で冷やしておくだけで、ちょうどよい保冷効果が20〜30分持続します。

●「ブラーマリー呼吸法」で余計な思考を追い出す

ブラーマリー(蜂の羽音)呼吸法とは、「ムーン」という音を眉間に響かせる呼吸法を指します。やり方は以下の通りです。

1.両手の親指を左右の耳の穴にはめこんで、残りの指で両目を覆う。
2.鼻から息をゆっくりと吐きつつ、ハミングをするように「ムーン」という音を出す。
3.この音が頭のなか、最終的には全身に響くような感覚を目指す。
4.これを1分〜5分程度、寝ながら行う。

この呼吸法を行うと頭の中がすっきりとして、余計な思考が追い出されていくのを感じるはずです。「今日は嫌な日だったな」などとネガティブな気持ちでベッドに入らなくてはいけないときなどにおすすめです。

●「片鼻呼吸」でリラックス神経のスイッチを入れる

鼻を使って行う呼吸のうち、右の鼻の呼吸は交感神経、左の鼻の呼吸は副交感神経に通じているとされています。リラックスして眠りの質を高めるのはこのうち副交感神経です。

そのため睡眠に入る前は、左の鼻の呼吸をスムーズにしておく必要があります。それをチェックするとともに、副交感神経のスイッチを入れるのが「片鼻呼吸」です。

1.左手の人差し指で右の鼻を押さえ、左の鼻から4秒かけて息を吸う。
2.人差し指を離し、親指で左の鼻を押さえ、右の鼻から4秒かけて息を吐き切る。
3.そのまま右の鼻から4秒かけて息を吸う。
4.親指を離し、人差し指で右の鼻を押さえ、左の鼻から4秒かけて息を吐き切る。
5.1〜4を10回繰り返す。

これを行うと体がリラックスするだけでなく、終わったあとの鼻呼吸が深くなるのを感じるはずです。すると眠ったあともリラックス状態が続くのか、朝の疲れがいつもより取れていることに気づきます。

●「家庭用プラネタリウム」で睡眠の質を引き上げる

セガトイズの家庭用プラネタリウム「HOMESTAR AURORA」を使った検証実験によると、「寝つきが良くなる」(入眠平均時間が42分から29分に短縮)という効果と「眠りが深くなる」(深い眠りの時間が平均30%向上)という効果が確認されています。

このうちの「深い眠り」とは徐波睡眠と呼ばれるもので、私たちの新陳代謝を高めて疲労回復を促す成長ホルモンは、この徐波催眠を合図として分泌されます。

「HOMESTAR」シリーズは標準モデルで1万円前後で購入できるので、睡眠の質を引き上げたいという人だけでなく、星が好きだったり、ずっと家庭用プラネタリウムに憧れていた人は、この機会に購入を検討してみてはいかがでしょうか。

●「睡眠専用コスチューム」に着替える

上下が揃ったパジャマでなくとも、「この服を着て眠る」という睡眠専用のコスチュームを決めておくと、それを着ただけでも脳の睡眠スイッチが入ります。またこのコスチュームの選び方も重要で、できるだけ締め付けの少ないもの、生地は柔らかく心地よいものを選ぶようにしましょう。

女性ならブラジャーやショーツ、男性ならボクサーパンツなど、胸郭や局部を締め付ける服を着て寝ると、体がリラックスできません。ある実験によれば、締め付けの強い服を着て寝ると深部体温の低下が遅れ、睡眠の質が低下することもわかっています。

おすすめは大手ファストファッション店などで取り扱いのあるステテコと、1サイズか2サイズ大きめの薄手のTシャツの組み合わせです。上下揃いのパジャマで着心地の良いものとなると意外と値が張りますが、これなら何セットか揃えても大した出費にはなりません。

●「ハーブティ、たんぽぽコーヒー、白湯」で体を温める

ハーブティ、たんぽぽコーヒーはノンカフェインでリラックス効果が得られる飲み物です。これらの香りは心身をリラックスさせ、睡眠への良い導入になってくれます。

また足湯のところでも言及したように、私たちの体は一度温めると、次に体温を戻そうとするときに、元の体温よりも少し低くなります。ハーブティ、たんぽぽコーヒーにはこの過程で深部体温を下げる働きもあると考えられます。

「ハーブティやたんぽぽコーヒーを入れるのが面倒だ」という人は、単に水を沸かしただけの白湯でもかまいません。体温より少し温かいくらいの白湯には、内臓機能回復の効果もあるとされています。飲み会が連日続いた夜などにもおすすめです。

●1分間の「照気法」で目と脳の疲れを取り除く

照気法は目と身体の疲れをとる効果のある「眼ヨガ」の呼吸法です。何の道具もいらず、両手さえあれば実践できるうえ、1分だけでも効果があるという優れものです。やり方は以下の通りです。

1.仰向けに寝転ぶ。
2.手を擦り合わせて温める。
3.手をお椀型にして、眼の上に手のひらの中央がくるように当て、両目を閉じる。
4.眼にきれいな空気が入るイメージで鼻から息を吸う。
5.老廃物を吐き出すイメージで口から息を吐く。
6.4〜5を3〜4回繰り返す。

多少リラックス効果は落ちますが、座ったままで上を向いてやっても眼がすっきりとして気分が良くなります。

●「顎と眼球」をほぐして全身の緊張をほぐす

精神的な緊張状態になると、私たちはつい顎に力が入ります。これをそのままにしていると全身に力が入ったままになるので、心地よく眠りに入ることができません。また目は「むき出しの脳」と呼ばれるくらい、脳と密接につながっている器官です。

そのため眼球周りの筋肉をパソコンやスマホなどで緊張を強いられたままにしていると、同じように脳も緊張したままになってしまいます。

そのため寝る前10分は、この顎と眼球をほぐして心身ともにリラックスさせる必要があります。方法は以下の通り。

1.仰向けになって顎の力を抜く。
2.うまく抜けないときは顎周りの筋肉を手で触りながら、「ここの力を抜く」と意識する。
3.首を揺らして顎がぶらんぶらんと揺れるのを感じる。
4.目を閉じ、眼球を意識する。
5.眼球の周辺についていて、眼球の裏側に伸びている6本の筋肉「外眼筋」をイメージする。
6.外眼筋の奥にあり、外眼筋を束ねている「総腱輪」をイメージする。
7.総腱輪から外眼筋までの力を抜くよう意識する。

うまくそれぞれの筋肉を意識できない人は、ネットなどで解剖図などを見るとよりわかりやすくなります。

「寝る前10分」の習慣づけに全力を注ごう


習慣を変えるのは誰にとっても難しいことです。しかし長い目で見たとき、寝る前10分の良い習慣が人生にもたらすメリットは計り知れません。ここで挙げた習慣のうち、どれでも好きなものを試してみてください。

そのうえでもし「これはイマイチだな」と感じたのであれば、やめてしまってもかまいません。かといって習慣づけ自体をやめるのではなく、自分にしっくりくる習慣を見つけるまでトライアンドエラーを繰り返しましょう。

そうして手に入れた寝る前10分の習慣は、きっとあなたの人生を変えてくれるはず。そのためにも多少の苦労はいとわずに、全力で習慣づけに取り組みましょう。

Career Supli
ベッドに入ったら難しいことは考えないと決めるといいと思います。
参考文献『スタンフォード式 最高の睡眠』『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』『脳のパフォーマンスを最大まで引き出す 神・時間術』

[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部

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