審判は試合以外では何をしている?気になる収入は?
1月の自主トレから審判の1年は始まる
選手と同じように、審判も1月中旬の自主トレからシーズンをスタートさせる。試合中は立ちっぱなしで走り回る場面も多い審判は、体づくりも仕事のうちなのだ。また、球審はボールをピッチャーまで投げられなければならないので、肩を作っておくために審判同士でキャッチボールすることもあるという。
2月になると選手と一緒に審判もキャンプイン。各球団のキャンプ地に派遣されて練習に参加する。ブルペンで勢いよくストライクコールをする審判の姿は、キャンプ情報を伝えるスポーツ番組などでよく見られる場面だろう。練習試合、オープン戦と審判も実戦を積んで、万全の状態でジャッジができるようシーズンに向けて調整していく。
シーズン中は球審と各塁審をローテーションで担当
シーズンが始まると、カードごとに球審、一、二、三塁の各塁審、それから控え審判の5人でチームを組み、それぞれのポジションをローテーションして試合に臨んでいく。5人の審判団で4カードほどの間ローテーションを繰り返し、次の1カード3日間が休みというスケジュールが基本だ。試合の日は2時間から3時間前までに球場入りし、試合後は審判団でその試合の反省を含めてミーティングを行う。
レギュラーシーズンが終了すると経験の長い審判はポストシーズンに、若手は教育リーグなどに参加する。完全なオフ期間は12月頃から。仕事は試合中の数時間のみ、シーズン以外は休み、と思っている方もいるかもしれないが、審判も選手と同じような年間のスケジュールをこなしているのである。
一軍審判になると年収1千万円超えも
審判の給料は年俸制で、NPBと1年ごとに契約を更新していく。最低年棒は345万円、一軍での累積試合出場数が500を超える一軍審判は750万円が最低年棒となる。
それから1試合ごとに出場手当、また宿泊費など各経費も支払われる。出場手当は1試合につき球審が3万4千円、塁審が2万4千円、控え審判が7千円、二軍では一律で2千円。審判の一軍二軍については後述していくが、給料面で大きく差がある形だ。一軍のレギュラー審判になると、だいたい1千万円から2千万円の収入になると言われている。
プロ審判への第一歩「NPBアンパイア・スクール」の存在
では、プロ野球の審判を目指したいという方はどうすればいいのか。採用のルートに関しては、過去には元プロ選手やアマチュア審判のスカウトなどのルートもあったのだが、2014年からは「NPBアンパイア・スクール」という養成講座を経てのルート一本となっている。
この養成講座はスクールと名がつくものの、プロの審判を目指す人にとっては試験のようなものだ。年に一度、シーズンオフの期間に1週間ほどの講座が開催され、審判としての素質、実力が認められると春季キャンプに参加することができる。キャンプでは採用試験が行われる。
スクールの応募資格は?野球、審判経験は問われる?
スクールの応募資格は高卒以上のみ。野球経験、審判経験、また性別も問われていない。過去に例はないが女性でもNPBの審判になることは可能で、昨年のスクールには女性が2名参加した。
ただ実際の採用基準に関しては、公表はされていないがなんらかの基準が設定されている可能性はある。過去の採用試験では身長175センチ以上、裸眼視力1.0以上、パ・リーグでは野球経験者であること(以前はリーグで採用が別だった)といった条件が設定されていた。採用かどうかという段階になると、やはり身長、視力、野球経験は重視されるのかもしれない。
またスクールは応募すれば必ず参加できるというものではなく、書類審査が行われる。昨年は65人の定員に対し110人の応募が集まった。その65人の中から春季キャンプに進めたのはわずか6人。さらにキャンプでの試験に合格できたのは4人である。プロ審判への入り口は非常に狭き門となっている。
日程、受講料などスクールの詳細
一例として、第4回となる昨年のスクールの詳細を紹介しておく。昨年は埼玉県さいたま市のロッテ浦和球場で、12月17日~23日に6泊7日の日程で開催された。1日のスケジュールは、9時から16時まではグラウンドで実技、19時から21時半までは宿泊するホテルで座学となっており、泊まり込みの環境で朝から晩までみっちりと学ぶことになる。
受講料はホテル、食事代込みで8万3千円。審判の用具は無償で提供され、春季キャンプに参加することになった場合、往復の旅費や宿泊費、食事代などはNPBが全額負担してくれる。応募期間は6月7日から8月31日までだった。
採用後は育成審判、研修審判からスタート。一軍デビューまでは先が長い
スクールで認められ、キャンプでの試験に合格してからも、一軍の試合に出場するまではまだまだ先が長い。
スクール修了生は経験、実力に応じて育成審判、または研修審判という形でNPBと契約を結ぶ。育成審判は二軍戦、研修審判は四国アイランドリーグplusなどの独立リーグで経験を積む。研修審判は1年から2年ほど独立リーグの試合に出場し、そこで認められれば育成審判に昇格。育成審判になってから正審判への昇格は3年ほどの期間が必要だ。
さらに、正審判となってからも一軍の試合に出場できるまでには平均で3,4年ほどかかり、そこで評価されれば正審判6年目あたりでようやく一軍定着となる。一軍では、最初は塁審からのスタート。球審は塁審で経験を積んでから担当することになる。
というのが一軍審判への道のりだが、必ずしもそこまでたどり着けるとは限らない。一軍審判に定着することができても、ミスが続けば二軍へ降格させられることもある。野球ファンの方々は名前を覚えている審判も何人かいるだろうが、彼らは一つひとつの正確なジャッジを積み重ね、審判同士の厳しい競争を勝ち抜いてきた男たちなのだ。
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