企業・経営

この10年、日本の大企業で「品質問題」が続発する理由がわかった

カギはP→D→C→Aの「次の文字」
井上 久男 プロフィール

これは日本全体の問題だ

現場の課題が上層部に伝わっておらず、伝わっていたとしても、徹底した議論をして再発防止をしないから同じような事故が起こる。これは品質問題にも通じることだ。神戸製鋼の関係者は「現場の課題を訴えられるような組織風土ではないし、意見を言う人間は排除される傾向にある。そして短期的な利益を求めるために安全は後回しになっている」と訴える。

TQM活動は工場など生産現場だけに必要なことではない。事業環境の変化が激しい現在だからこそ、会社の方向性を決める企画や開発の仕事にも必要だ。TQM活動は、技術革新によってビジネス環境が変化すれば、組織を挙げてそれに対応していくための「武器」の一つになる。

品質トラブルが続発する事態にデミング賞を主催する日本科学技術連盟(理事長=佐々木眞一・元トヨタ自動車副社長)は危機感をおぼえ、昨年10月、企業のトップが品質と経営について議論する「品質経営懇話会」を創設。委員長には坂根正弘・小松製作所相談役が就いた。

さらに、日科技連、日本品質管理学会、日本規格協会(JIS)の3団体が来年秋をめどにバーチャル組織「JAQ(Japan Association of Quality)」を新設することも検討している。3団体の施策を統一し、改めて品質管理の重要性を産業界に訴え、かつ日本の活動を世界にアピールしていく狙いだ。

日本はいま、かつての米国のように、国を挙げて品質問題に対峙する局面にあるではないだろうか。

記事をツイート 記事をシェア 記事をブックマーク