2018年01月27日

◆ 仮想通貨の巨額損失は詐欺?

 仮想通貨取引所のコインチェックが、巨額の損失を出した。金を盗まれた被害者だと見えるが、この会社はもともと詐欺師みたいなものだ。

 ──

 仮想通貨取引所のコインチェックが、巨額の損失を出した。
  → 仮想通貨取引所コインチェック 不正アクセスで580億円相当流出 | NHK
 
 報道によると、金を盗まれた被害者だと見える。だが、この会社のセキュリティはもともとずさんであったことが判明している。
 大手仮想通貨取引所のコインチェック(東京都渋谷区)は26日、外部から不正なアクセスを受け、顧客から預かっていた仮想通貨「NEM(ネム)」約580億円分が流出したと発表した。
  仮想通貨ではこうしたトラブルを防ぐため、ネットからのアクセスを遮断したコンピューターでデータを保管するなどより安全な対策をとっている取引所が多いが、コインチェックはNEMについて対応していなかった。「(ネット遮断した)オフライン(で保管)にするには技術的な難しさがある。人材が不足していた」(和田社長)と説明した。
( → コインチェック、580億円分の仮想通貨流出 社長謝罪:朝日新聞 2018-01-27

 しかしながら、会社側はオフラインでやっていた、と宣伝していたようだ。複数のサイトで、「オフラインです」という紹介記事が見つかる。
 コインチェックは「コールドウォレット」と呼ばれるオフライン管理方法が導入されているため、万が一ハッキングにあったときにも大半の資金が保護されます。
( → 仮想通貨取引所「コインチェック(coincheck)」の登録方法&購入方法

 コインチェックでは、秘密鍵をオフラインで管理する方式(コールドウォレット)を取ることで安全性の確保に努めています。
 コールドウォレットを採用することで、万が一ハッキングが行われたとしてもネット上から秘密鍵を隔離している形となるので資産を奪われるという心配はなくなります。
( → コインチェックは安全?

 後者は、現時点ではすでに取り消し線が入って否定されているが、報道前までは取り消し線は入っていなかった。
 つまり、どうやら虚偽宣伝をしていたらしい。詐欺師みたいなものですね。

 セキュリティがずさんだという点については、社長の言葉がある。

 たったの1ヶ月しかかけないのだから、セキュリティなんて、ボロボロのずさんなものであることは、透けて見える。
 実際、冒頭の記事で引用したように、
 「(ネット遮断した)オフライン(で保管)にするには技術的な難しさがある。人材が不足していた」
 なんていう状況になってしまうわけだ。「人材が不足していた」なんて他人事みたいに言っているが、要するに、開発のための人員を投入しないで、セキュリティはガバガバのまま事業を運営していた、ということだ。

 この点については、まともな人はすぐに気づいていたようだ。気づいて、さっさと撤退したそうだ。(昨年5月)
 私が撤退した理由はいくつかあるのですが、結論から申しますと、コインチェックさんは日本で一番危ないと思う取引所だからです。
 コインチェックさんの出金セキュリティですが、現在の仕様だとアカウントハッキングされれば取引所内に置いてる通貨を全て盗まれてしまいます。
( → コインチェックでの取引を完全に撤退した理由 | 貯金1000万を仮想通貨に換えた男のブログ

 セキュリティがゆるくて金を盗まれるはずだ、ということは、とっくに指摘されていたわけだ。

 ──

 別の点でも、いかがわしいところがある。
 そもそも、実績もないでたばっかりの新興企業が、どうして急成長できたのか? 「取引所としては、最大手のbitFlyer(ビットフライヤー)と並ぶ存在感を示していた」(上記)何て言うことが、どうして可能だったのか? 
 それは、「年利5%」という異常な高金利を謳っていたことだ。(1年間を預けた場合の金利。定期預金金利みたいなもの。)
  → Coincheck(コインチェック)が最大金利5%の貸仮想通貨サービスを開始!?

 現時点でも、ホームページ で年利5%を謳っている。

coincheck.png


 年利5%。これは、高すぎる利率だ。
 なるほど、たまにこのくらいの金利を謳う事業者もいるようだ。だが、そのほとんどが詐欺師だと見なせる。だいたい、そんな利率を払えるはずがない。払うとしたら、自転車操業で、元金を利率に回しているだけだ。最終的には、破綻するしかない。それでいて、目先の金をどんどん集める。……これはもう、ただの詐欺である。
 つまり、コインチェックが年利5%を謳っていた時点で、この会社はもはや詐欺師であると判明したようなものだ。
( ※ 過去に似た例がある。マイカルという会社が、高い利率で社債を大量発行したあげく、倒産した。高い金利で多額の金を集めたあげく、金を返せなくなるわけで、もはや詐欺に近い。異常な高金利を払う会社というのは、どこか不正があるものだ。)

 ──

 では、こういう状況について、監督官庁はどうしていたか? こうだ。
 取引所としては、最大手のbitFlyer(ビットフライヤー)と並ぶ存在感を示していた。その一方で、同年9月以降、取引所は「仮想通貨交換業者」として金融庁への登録が義務付けられたが、同社については「審査中」の状態が続き、「みなし仮想通貨交換業者」としての運営が続いていた。
( → 仮想通貨580億円流出のコインチェックとは? アルトコインの取扱いで急成長 | BUSINESS INSIDER JAPAN

 金融庁への登録が義務付けられていたにもかかわらず、「審査中」の状態のまま営業を続けた。
 これはもう、金融庁の公認の「法律違反」である。政府のお墨付きを得た違法行為だ。呆れる。
 つまり、コインチェックは、単なる被害者ではないのだ。もともとセキュリティがずさんなまま、違法状態で営業していたのだ。しかも、それを許していたのが金融庁だ。
 おまけに、「5%」という高金利で多大な客を一挙に集めるという、いかにも詐欺的な商法をも認めていた。
 この金利で最大手になった企業に対して、登録もしないまま違法営業を認めていたのだ。ここではもはや、金融庁の責任はあまりにも大きい。

     《 注記 》

     ここで言う「違法」とは、「本来の法からの逸脱」という意味です。「政府が勝手に裁量している」と言い換えてもいい。「警察に逮捕されてしまう」という意味の違法ではありません。
     つまり、ここで批判されているのは、コインチェックの側ではなく、勝手に裁量して特例扱いしている金融庁の側です。すぐ上で、金融庁を批判しているとおり。(コインチェックは違法行為をしているからけしからん、と批判しているわけではありません。)




 [ 付記1 ]
 盗まれた金は、電子マネーなので、追跡が可能らしい。(紙幣のような匿名性がない。)
  → NEMの日本人開発者がハッカーを追跡中
 だから、売却不能となる。盗んだ金を自由に使えるわけではないようだ。
 とはいえ、盗んだ金が塩漬けにされれば、盗まれた金が戻ってくることもない。盗まれた会社に預けていた人は、金を失ったままとなる。
 この点を妥協するために、「身代金の支払い」のような形で、数分の1ぐらいの金を犯人に渡すこともあるかもしれない。
 先行きは不明だ。

 [ 付記2 ]
 盗んだ方は、あらかじめ空売りしておけば、暴落後に買い戻すことで、すでに巨額の儲けを得ることができた。実際にそうしたかもしれないらしい。
 ただ、そのためには、もともと手持ちの巨額資金が必要だから、巨額の儲けといっても、たかが知れているだろう。数百億円の利益が出たということはあるまい。
 ま、こういう話は、細かな話であって、付随的な話だから、どうでもいいかもしれない。

 [ 付記3 ]
 コインチェックは被害者に「全額返金」を打ち出した。
  → コインチェック、NEM保有26万人に返金へ 460億円:日本経済新聞

 これで事業継続を見込むという。
 500億円近い返金ができるのは、なぜか? 
  ・ 他の通貨を保有している(預かっている)ので、巨額の手持ち資産がある。
  ・ 仮想通貨が急上昇しているので、値上げ益を見込める。

 という二点によるのだろう。

 前者は、自分の利益で返金するのではなく、他の顧客の金を一時的に転用するだけだから、自転車操業に近い。これは、他の顧客が逃げ出したら、もはや成立しない。会社は返金不能となって、破綻する。
 後者は、顧客の資産を一部食いつぶすことで成立する。多くの顧客が逃げ出したがったら、全額を返金せず、8割りぐらいを返金する。それでも顧客は、値上がり益の一部を食いつぶされるだけで済むから、あまり文句は言わない。( NEM は1年で 200倍にも上がったそうだから、顧客は損するわけではない。)

 今回、全額返金は可能かもしれない。ただし、他の顧客がいっせいに逃げ出すと、会社の存続そのものが危うくなる。
 私だったらどうするか? 安全管理がダメだ、とわかったのだから、さっさと全額を引き上げますね。取り付け騒ぎみたいなものだ。つぶれる前に全額を引き上げるのが利口だ。……で、みんながそうしたら、会社はつぶれる。「全額返金」も不可能となりそうだ。
 さて。どうなることやら。高みの見物としよう。

 《 加筆 》

 手持ち資金(預かった資金)を使うのかと思ったら、「自己資金を使う」と会社が声明した。
補償時期等 : 補償時期や手続きの方法に関しましては、現在検討中です。なお、返金原資については自己資金より実施させていただきます。
( → コインチェック株式会社

 会社の保有資産が仮想通貨で、その値上がり益で返済が可能だ、ということらしい。
 仮想通貨バブルが、不正の損失をすべて帳消しにしてしまう……ということか。
posted by 管理人 at 23:00| Comment(3) | コンピュータ_04 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
> 違法状態
登録申請中の特例に該当するので、審査が完了するまでは適法です。(法的に仮想通貨交換業者とみなされる。)
Posted by yasu at 2018年01月28日 02:18
> 特例に該当する

 それはわかっているんだけど、「特例に扱う」ということ自体が、適法からの逸脱だ、という意味です。
 実際に「違法」であるというのとは違うのだ、という意味で、オブラートをかぶせて「違法状態」という言葉を使ったが、ちょっと言葉遣いがまずかったかな。
 最後のあたりに注記しておきました。
Posted by 管理人 at 2018年01月28日 06:55
 最後に [ 付記3 ] を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2018年01月28日 07:07
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