第2回では入試改革以後の問題傾向や必要な能力について説明しました。
今回の第3回ではもう少し細かい制度の変更点などを確認していきたいと思います。
変更点を大きく3点に分けてみました。
① 「高校生のための学びの基礎診断」を導入
全国の高校生の基礎学力定着を測定するために導入される試験です。
2019年度に高校2年生になる学年から受験可能になるようです。
まだ未決定の部分もありますが、「全国一斉学力テスト」みたいなものでありながら、大学入試に用いられる可能性もあると言われています。
用いられる可能性の一例としてAO入試との併用などが考えられます。
推薦・AO入試では知識を問う学力試験がない大学が多いのですが、今後はそれを認めず、この「高校生のための学びの基礎診断」の結果を共通して用いることなどが検討される可能性があります。
但し2022年度まで(制度定着確認・調査研究完了まで)は入試に利用しないという旨の記載が現時点ではありますで、現在(2017年度時点)の中学2年生までは大学入試とこのテストは実質無縁となる可能性が高いと言えるでしょう。
② センター試験 ⇒ 「大学入学共通テスト」 に変更
第2回にも説明した通り、センター試験が生まれ変わります。
2020年度受験者から新試験となり、変更点は下図のようになります。
※2024年度からは学習指導要領が変更に伴い、大学入学共通テストも変更となり科目数などが簡素化される予定です。
大きな変更点は「記述式問題」が導入される点です。
第2回に述べたB領域の能力を測定するために導入されるもので、既に例題も発表されています。
実は今年のセンター試験でも新傾向への布石のような出題がありました。
ただ、難易度のハードルが急激に上がるというわけではなく、少々対策・訓練をすれば解答は作成できる内容だと感じています。
またマーク式問題の中でも「思考力・判断力・表現力を一層重視した問題」の出題が検討されており、現在モニター調査が実施されています。
例えば国語では「短歌と論評」「古文とそれについての対談」を読ませ、複数の情報を総合して捉える力を問う問題が公開されています。
確かに切り口は新しいものですが落ち着いて今まで通りのやり方で対処すれば十分に得点可能な内容です。
③ 英語の4技能重視→民間試験の利用
2020~2023年度試験では大学入学共通テストの英語の成績か民間試験のどちらかの成績を利用することができますが、その内容は各大学の入試要項次第です。
2024年度以降は共通テストの英語科目は廃止され(センター試験から英語がなくなり)民間試験の成績を利用するのみになります。
現状でも民間試験を導入している大学学部は増えてきていますので馴染みはあるかもしれませんが、4技能とは英語を「読む」「聞く」「書く」「話す」4つのスキルを指しています。
今までの日本の英語教育・大学入試では主に「読む」「聞く」が重要視され、ペーパーテストとリスニングテストが主流でした。
しかしグローバル人材とは世界で自己表現ができなければならず、書いたり話したりして自分の意志を英語で相手に伝えなければなりません。
そのような背景から4技能が全て重要視されることとなりました。
しかし共通テストで4技能を測るのは大変なので、民間試験の結果を柔軟に入試に取り入れるよう、下図のような対照表を政府が作成しています。
正式にどの民間試験を利用可能とするかは未定です。
また大学学部がどのランクまでの成績を求めるのかも随時変化するでしょう。
高校3年生の4~12月の間で2回受けることが許されるため高得点を狙うチャンスが2度あります。
ちなみに表1番左のCEFR(セファール)とはヨーロッパを中心に用いられている言語習熟度の尺度です。
ヨーロッパは多言語ですから、例えば「私はドイツ語がC1で英語がB1でイタリア語がA2」みたいな表現で自分の語学レベルを表現することができるわけです。
一般的には「B2」レベルで、その言語での大学の講義が理解できるレベルだと言われているようです。
以上のように、しばらく変化がなかった大学入試が大きな変化点を迎えようとしています。
第4回では入試改革後の大学受験に挑む受験生が今からどのような対策を練っておけばいいのかについて考察してみたいと思います。