2006-05-24 ペルー日本大使館公邸占拠事件4 

それは12月31日に突然起きた。ペルー警察が、報道関係者に対し、正面玄関から公邸の外観を撮影することを許可したのだ。各メディアは数班毎に分けられ、それまで近寄ることの出来なかった公邸の正門前を通過しながら撮影することになった。第1班、第2班、第3班・・・・何事も無く淡々と取材がすすんでいた。そして第4班・・・・すでに取材を終え、基地に戻って、民放テレビの中継を見ていた私達は、一瞬、目を見張った。なんと、共同通信のカメラマンとその助手が、「KYODO」とかかれたプラカードを高々と掲げ、進入禁止のはずの公邸の中に堂々と歩いて入り始めたのだ!共同通信と一緒の班の他社は、これを見て、我も我もと、雪崩を打って公邸の中に入ってしまった。
これには本当に驚いた。大スクープには違いない。フジテレビは、女性カメラマンとVEが第2班だった第3班だったか覚えていないが、先に撮影は終えていた。前日から、記者やカメラマンには、絶対に公邸の中に入るな、と指示を出してあった。何が起きるか分からなかったからだ。
MRTAは比較的穏健で、無差別テロリスト集団ではない、と巷間言われていた。「センデロ=ルミノソ」と呼ばれる別の反政府組織は、MRTAと違って容赦ないテロを行うことで知られていた。しかし。現にMRTAは多数の人質を取り、完全に武装しているのだ。ライフルは勿論のこと、C4と呼ばれるプラスチック爆弾、バズーカなども持っているとの情報もあった。ある軍関係者に私は聞いた。C4が爆発するとどうなるのか、と。答えは「公邸は粉々になり、半径500メートル四方に建物の破片が飛び散るだろう。」、だった。
プレスのふりをして、ペルーの特殊警察が強行突入する可能性もあった。もし、MRTAがそう疑心暗鬼になり、侵入してきた者を誰彼構わず、撃つ可能性は高いのではないだろうか。まして、進入が引き金となって、人質が見せしめの為に殺されたらどうする・・・。現地のデスクとして、部下に突撃取材をしろ、とはとても言えなかった。いや、むしろ、積極的に入るな、と全員に徹底させていた。一部の記者からは、入るのが当然、という意見が出ていた。記者として、極めて自然なことだ。しかし、今回ばかりは違う。人質の命がかかっている。ジャーナリスト魂は結構だが、安易に突入し、ペルー政府のオペレーションを邪魔していいのか、とも思った。このころ、現場の記者たちの疲れもピークに達してきて、デスクとしてもリーダーシップが問われる事態となってきた。
この件に関して、今でも私は突入しなくて良かったと思っている。突撃取材をしないのは、ジャーナリストじゃない、という声もあろう。しかし、未曾有の人質事件を目の前にして、慎重にならざるを得ない状況がそこにはあった。
to be continued..............
安倍さまが己の過失をごまかすために、大事な事実を無視しているように感じます。
>>プレスのふりをして、ペルーの特殊警察が強行突>>入する可能性もあった。もし、MRTAがそう疑心暗>>鬼になり、侵入してきた者を誰彼構わず、撃つ可>>能性は高いのではないだろうか。
この共同通信の取材のケースは、事前に公邸内のMRTAから取材許可を得ていたことが知られています。だからこそ、公邸内から「共同通信へ 進入可」という取材許可を示す掲示があったはずと記憶しています。
当時、現場にいた安倍さまが、この事実を知らなかったはずはない。したがって、意図的にこの事実を無視しているとみなすのが普通だと思いますが、いかがでしょいうか?
この事件について様々な研究がありますので、ご覧になってはいかがでしょうか?
http://triton.soc.rikkyo.ac.jp/~hattori/1997-1.html
サラリーマンが、己の能力不足をごまかすために、他人を陥れようとすることは珍しくないことも知っています。
コメント有難う御座います。
もちろん現場に居た人間として、事の経緯は存じております。違和感を何に覚えられたのかは分かりませんが、当時、各メディアには公邸内の取材を許可する、とのMRTAを名乗る電話がかかってきました。もちろん公邸内からかかってきているのか、それとも外部のMRTA協力者がかけているか、単なる悪戯電話なのか、不明でしたが。
当時現場の責任者だった人間として、今でも対テロリストへの取材は、慎重であるべきだと思います。彼らのインタビュー自体が、外部協力者、同胞へのメッセージを含んでいるケースも想定されます。メディアがテロリストに利用されかねない事態が想定されました。
あの時点で、独占インタビューそのものが必要だったかどうかという問題を提起しております。繰り返しになりますが、取材する側の命もさることながら、人質の命も危険に晒す権利が我々にあるのか、という問題は、絶えず我々の前に立ちはだかっている問題だと思っています。
>>彼らのインタビュー自体が、外部協力者、同胞へ
>>のメッセージを含んでいるケースも想定されま
>>す。
これには、やはり矛盾を感じてしまいます。
当時、この取材で得られた映像、写真、記事などは、全てのテレビ局と全ての新聞社が報じていたと記憶します。内容は、MRTAの記者会見、コミュニケ、青木大使の映像やコメントなど。
「利用される」恐れがあるのでしたら、この取材によって得られたものを一切放送できないはずです。なぜ、フジテレビは放送したのでしょうか。
現場の安倍さまと東京側の考え方に違いがあったのでしょうか?
また、この取材時、この共同通信の記者は、「共同通信へ 進入可」という取材許可の掲示を受けただけでなく、直接、公邸の内部から日本人の人質たちから入ってくださいという呼び掛ける声を聞いたそうです。
この取材スタイルを「安易に突入し」と評される根拠は何でしょうか。
実は、私も当時現場にいた期間があります。正直、日本のマスメディアの姿勢にかなり疑問を感じた事件ですので、質問させてもらっています。
お答えします。
まずセルパの会見ですが、第一報で冒頭一部のサウンドバイトはニュースで使いました。それ以後はその部分はさらに短く切って、なるべく音声は使わないようにしたように記憶しております。
さて、共同通信が「進入可」という掲示を公邸の窓から確認して入った、という事実は私も知っています。直接、日本人人質から呼びかけがあったかどうかは確認していません。
繰り返しになりますが、あの時、公邸内に入ることで何が起きるか、全く未知数でした。公邸の回りを軍に囲まれている状況で、セルパ達が人質に本当に危害を加えないか、何の保証もありませんでした。彼らはいわば最後の賭けに出ていたのです。進入した誰かが殺されたり、人質になることもありえたろうし、人質の命が危険に晒された可能性もあったのです。これが、私が安易に公邸内に入るべきではない、と判断した唯一の根拠です。
人命がかかっている。それが、この事件の取材を困難にしていました。私を含め、現場にいた一人一人のジャーナリストが日々悩みながら、報道していたと思っています。
当時、フジテレビと産経新聞が、この共同通信の取材を「MRTAの宣伝に加担した」と盛んに批判しながら、その共同通信が公邸内で取材した映像と記事を自らが多用していることに驚きました。
自らが批判する相手の取材成果という果実を味わいつつ、その相手を批判するというのはいかがなものでしょう。
さらに、繰り返し報道(宣伝?)しているのはまったく矛盾しているのではないでしょうか。
ちなみに、MRTAの公邸内映像は、この時に撮影されたものしかありません。繰り返しになりますが、全てのテレビ局、全ての新聞社が使用したわけです。
安倍さまが伝えたいことは、我々フジテレビクルーは安全対策に万全の配慮を行ったが、共同通信は「安易に突入し」人質の安全を脅かしたというものだと思います。
果たして、そうなのでしょうか?
>>彼らのインタビュー自体が、外部協力者、同胞へ
>>のメッセージを含んでいるケースも想定されま
>>す。メディアがテロリストに利用されかねない事
>>態が想定されました。
このように考えるのならば、なぜ共同通信が取材した映像を放送するのでしょう。最大限配慮した、というお考えのようですが、映像そのものにもメッセージが含まれているとは考えられないのでしょうか?セルパ司令官の着用するスカーフが、裏返しになっているのは何らかのメッセージでは?という説もありました。
>>繰り返しになりますが、あの時、公邸内に入るこ
>>とで何が起きるか、全く未知数でした。
これは、安倍さまの取材不足というだけではないでしょうか。事件発生数日後には「NHK記者会見承認可 MRTA」という公邸内からの掲示もありました。そして、共同通信記者は、「共同通信へ 進入可」という公邸内からの取材許可の掲示を受けた上で、日本人人質たちからの直接の呼び掛けを聞いています。さらに、ドア付近でMRTAによる身分証チェックまで受けて公邸内へと入っています。
このことは、事件の最中に共同通信記者自身が書いた手記、その他の取材者の記事でも明らかになっていました。
「公邸内取材した共同通信記者の証言」
http://www1.doshisha.ac.jp/~kasano/FEATURES/HARADA/harada-index.html
立教大学による「朝日、毎日、読売にみるペルー人質事件報道の検証」
http://triton.soc.rikkyo.ac.jp/~hattori/1997-1.html
各メディアが共同通信の素材を使用することは、メディアとして当然の事だと思います。他者が撮ったスクープ映像を報道しないことのほうがメディアとして問題があるでしょう。繰り返しになりますが、セルパ容疑者のアジテーションを全部流すことには問題無しとはしない、というのはほとんどのメディアが感じたことではないでしょうか。サウンドバイトは初報以降使わず、映像を最小限だけ使うようにしました。同時に全世界メディアが共同の映像配信を受け報道を一斉にしている中での判断です。
様々な取材活動が、人質の安全の確保との狭間で、揺れ動いていました。どこまで取材すべきなのか、迷いながら各社、現地に5ヶ月留まり続けたのです。そのことは現地にいらしたのなら良くお分かりでしょう。
共同通信の取材を積極的に評価しているのは理解しますが、私どもは、現地で入手した様々な情報に基づき、邸内への侵入で不測の事態が起こりうる、と判断しました。最初から邸内に入る、という選択肢は私どもには無かった、ということです。