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朝日中高生新聞
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待機児童問題で1歳児の「入園予約制」促進へ

2016年9月18日付

 子どもが1歳になったら認可保育施設に入れるよう、事前に予約できる制度が来年度から始まりそうだ。保育施設に入れない「待機児童」が増える中、働く親が安心して育児休業(育休)を取れるようにするねらいがある。厚生労働省が市区町村に導入を促す。

新年度の4月を過ぎると入園が困難、育休を切り上げる親が多い

安心して1年の育休を取れるように

 「入園予約制」では、親に1年の育休を取ってもらったうえで、子どもが1歳になった年度途中から0歳児クラスに預けたり、育休後の4月から1歳児クラスに預けたりできる。1歳児クラスを予約する場合は、育休明けから4月までの間はベビーシッターなど別の保育サービスを使ってもらい、利用料を補助する。
 育児・介護休業法で、働く親は子どもが原則1歳になるまで育休を取れることになっている。だが、待機児童の多い地域では保育施設がほぼ満員で、新たに0歳児クラスの入園児を募集する新年度の4月を過ぎると入園が難しくなる。このため、親が新年度に合わせて育休を切り上げ、子どもが0歳のうちから入園を申し込むケースが増えている。
 一方、育休後の子どもの預け先があれば、子どもが1歳になるまで育休を取りたいと思っている親は多い。入園予約制が始まれば、預け先を心配せずに育休が取れるようになる。
 厚労省によると、今年4月1日時点で認可保育施設を利用している子どもは245万8607人。うち13万7107人(5.6%)が0歳児だった。一方、待機児童は2万3553人で、うち0歳児は3688人(15.7%)いた。

先行自治体の事例を参考に、厚労省が仕組みづくり

年度途中の予約枠の設け方など課題

 すでに入園予約制を導入している自治体もある。東京都品川区では、区立の認可保育所37カ所であらかじめ計146人分の「予約枠」を確保。育休を1年以上取ることを条件に予約申し込みを受け付ける。選考は年4回あり、出産後に入園の可否や入園先が決まる。申込者が多い場合は親の就労時間や家計の状況などを点数化し、点数の高い順に区が入園できる人を決める。昨年度は582人の予約申し込みがあり、4人に1人の割合で予約が成立した。
 東京都立川市では、私立の認可保育所の分園2カ所を入園予約の子どもの受け入れに特化。0~2歳児クラスで計50人を預かる。
 厚労省はこうした自治体の取り組みを参考に、年末までに制度の詳細を決める。ただ、年度途中の入園予約のために多くの枠を確保すれば、新年度に預け先が見つからなかった親から「空きがあるのになぜ入れられないのか」と不満が寄せられる可能性がある。仮に年度途中の予約を認める場合は、本来保育施設ごとに決まっている子どもの受け入れ人数を超えて預かる場合などに限り、なるべく不公平感が生じないよう工夫したい考えだ。

8月に出産した場合を例として、今のやり方と年度途中予約、新年度予約のの3つの出産から入園までのスケジュールを比較した表

保育所で人形遊びなどをする子どもたちの写真
東京都荒川区にある認可保育所。ここに2歳の長女を預けている会社員の女性は0歳の次女の預け先を探しているが、「以前より入園が厳しくなっている印象がある」と話していた
どちらも(C)朝日新聞社

伊藤舞虹さんの写真
解説者
とうまい
朝日新聞文化くらし報道部

記事の一部は朝日新聞社の提供です。

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