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草津白根山噴火

別の隊員かばって…死亡の陸曹長氏名公表

噴火した草津白根山の火山灰で覆われた山。中央はスキー場=本社ヘリから

陸自と群馬県「遺族の同意が得られた」理由に

 12人が死傷した草津白根山の本白根山(群馬県)の噴火で、陸上自衛隊は25日、死亡した隊員が第12ヘリコプター隊(同県榛東村)の伊沢隆行・陸曹長(49)だったと正式に発表した。ただ、経歴や死亡当時の詳しい状況は「遺族の了解を得られていない」として明かさず、他の隊員の詳しい負傷状況なども「個人情報に当たる」と公表を拒んでいる。一方、陸自関係者によると、伊沢曹長は別の隊員をかばって噴石に当たり死亡したという。

 陸自は発生当日の23日夜、伊沢曹長について報道陣に口頭で「49歳の陸曹長」と明らかにしたが、氏名は「遺族の了解を得ないと公表できない」と説明。24日夜に報道各社が名前を報じた後も姿勢を変えず、25日午後になって「遺族の了解を得られた」として氏名のみを公表した。経歴などは「遺族が名前のみの公表でお願いしますと話している」と明かしていない。

 陸自によると、過去10年で公務中の死亡事故は25件発生したが、犠牲者の氏名公表は3件のみ。昨年6月に北海道の演習場で戦車が横転し、隊員1人が死亡した事故では、報道機関に対し当初は氏名の公表を拒んだが、2日後になって「ご家族の同意が得られた」として公表した。この後は「遺族の同意を得た上で、捜査等に支障がない場合は、氏名を公表する」という内規を設けたという。

 今回の噴火について、陸自は25日、他の負傷隊員が20~40代の男性6人と20代女性1人で、階級が3等陸曹~2等陸尉と公表したが、誰がどの程度負傷したかは「個人情報」として明かしていない。重体の2人は意識が回復したという。当時の状況は「噴火後に8人がコース横の雑木林に避難したが、数分間降り続いた噴石により負傷した」との説明にとどまっている。

 陸自内でも「公務中の災害であり、当時の状況をきちんと世の中に知ってもらいたい」という意見もあるが、自衛官幹部の一人は「自衛官は、いざというときに家族を残して命を落とす可能性のある仕事だ。残された遺族の支援を重視しており、その意向は最優先にせざるを得ない」と漏らす。

 一方、群馬県は25日午前、死亡した隊員の氏名を「非公表とする」としたが、夕方になって「最終的に遺族の同意が得られた」として公表した。情報については県と県警が対応を協議し、県が公表を決めるという。

 陸自や群馬県の対応について、服部孝章・立教大名誉教授(メディア法)は「公的活動中に災害で亡くなった人の氏名を『個人情報』として伏せてよいとは思わない。教訓を得るためには、より具体的な情報が欠かせないが、匿名が当たり前になればそうした情報が得られなくなる恐れがある」としている。【前谷宏、鈴木敦子】

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