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日本人としての MUST READ (必読書)

2/2

今回も高齢の陛下のお体やご負担を気遣うだけなら、実は特別な制度改正をする必要はまったくありませんでした。

憲法や皇室典範(=法律)には、摂政という制度が決められていて、「天皇が,精神・身体の重患か重大な事故により,国事行為をみずからすることができないときは,皇室会議の議により,摂政を置く」って書いてあるんです。

なのにテレビの前で陛下は明確に法律で定められたその制度ではなく、譲位をしたいと意思表示をされました。

そして政府は「ご意向」通り粛々と「摂政ではなく譲位」を決めていきます。

激しい安倍政権批判を続け、9条を巡る憲法違反には驚くほど敏感な野党のお歴々も、この件に関しては一切議論をふっかけません。

野党もまた「忖度」の塊なのです。

★★★

付け加えれば、最初に NHK が使った「生前退位」という言葉について、美智子妃殿下は次のようにコメントされました。

「『生前退位』という大きな活字を見た時の衝撃は大きなものでした」

「歴史の書物の中でもこうした表現に接したことがなかったので、一瞬驚きと共に痛みを覚えたのかもしれません」

たしかに「生前」に「退位する」って「崩御される前に」+「退位する」って意味ですからね。

一般人なら「生前贈与」=「死ぬ前に」「贈与する」とか言ってりゃいーけど、「生前○○」なんて陛下に向けて使う言葉じゃないのかも。

で、その後、メディアは一斉に「生前退位」ではなく、「退位」「譲位」という言葉を使い始めました。

あの慈悲深く奥ゆかしく慎重で思慮深い美智子妃殿下が「衝撃」を受けられ「痛みを覚え」られた言葉(表現)を使い続けられるメディアなんて、日本には存在しないんです。

戦前に天皇のお気持ちを忖度しないメディアなんて存在し得なかったように。

★★★

このように、ここ十数年の皇室に関する動きを見ている限り、「少なくとも皇室制度に関しては、主権をもっているのは国民ではなく天皇家であり皇室の皆様なんだな」というのは明らかに思えます。

これは、厳密に言えば憲法違反です。

でもね。

それが問題かというと・・・そうは思っていません。

私は杓子定規な憲法学者でもないので、「それでいーんじゃないの」と思ってるんです。

よく考えてみてください。

そもそもなぜ皇室の方々は(憲法違反になる可能性をよくご存じのはずなのに=戦前の歴史的な反省事項を踏まえて制定された現憲法の趣旨を踏み越えてまで)これだけ明確にそのご意志を示されるのでしょう?

答えは簡単です。

国民があまりにも天皇制度について無知だからです。

そんな無知な人達に「民主的な」手続きでぐちゃぐちゃにされてしまっては取り返しがつかないくらい大事なものを守らねばならないお立場にあることを、深く自覚されているからです。

「愛子様が天皇になることの何が問題なの? 時代は男女平等よ!」とか、

「眞子様にはご結婚されても皇族のままでいていただけば? お子様に男児が生まれたら皇位継承者が増えて万々歳じゃない?」

「天皇陛下、あんなご高齢であんなお忙しいのはホントにおかわいそう。当然、退位を認めるべきよ!」

みたいな、情緒的で(歴史をまったく踏まえていない)浅薄な理由で天皇制度が変更されてしまうなんてありえない。

そう思うから、私もまたこの件については、天皇制度についてもっともよく理解されている方々(つまりは天皇であり皇族の皆様)の趣旨を汲んで制度設計したほうがいーんじゃないの?って思うんです。

たとえそれが憲法違反であろうと。

たとえそれが民主的でなかろうと。

私たちはそれほど天皇制度や皇室制度について何もわかっていません。

少なくとも下記の本を読めば、私たちがいかに大事なことを理解できていないかよくわかります。

素晴らしい本なので内容は次のエントリで紹介しますが(しかもたった 800円!)、この本は、来年以降に再燃しかねない女系・女性天皇を含めた皇位継承問題になんらか意見をもちたいと思ってる日本人にとっては、MUST READ な一冊です。

(次のエントリを待たず)先に読んでおきたいと思われる方は、ぜひこのタイミングで入手しておいてください。そうすれば、次のエントリの内容もより深く理解していただけると思います。

知られざる皇室外交 (角川新書)
西川 恵
KADOKAWA (2016-10-10)
売り上げランキング: 191,225


→ キンドル版

→ 楽天ブックス

この件ほんとに大事なので、マジで少しは勉強しましょう。

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そんじゃーね!

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