筋トレの効果を最大化するためには、どのようにトレーニングプログラムを考えれば良いのでしょうか?
この問に現代のスポーツ医学はこう答えています。
「総負荷量を高めるようにトレーニングをデザインするべきである」
総負荷量とは負荷量(重量)と回数(レップ数)、そしてセット数をかけ合わせた総量のことをいいます。現在では、この総負荷量がトレーニングの効果を決定する重要な因子とされています。
総負荷量 = 負荷量 × 回数 × セット数
しかし、これまでに総負荷量に関与するトレーニング頻度(週何回)についての検証は進んでいませんでした。
では、筋トレの効果を最大にするトレーニング頻度はどの程度なのでしょうか?
この問にオクラホマ州立大学のColquhounらはこのように答えています。
「トレーニング頻度は多ければ良いというわけではない」
今回はトレーニングプログラムの新しい考え方について、Colquhounらの報告をご紹介しながら考察していきましょう。
Table of contents
◆ 筋トレの効果を最大にするKey factors
重い負荷で少ない回数のトレーニングをした場合と軽い負荷で多くの回数をトレーニングした場合、どちらのトレーニングが効果的なのでしょうか?
この問いの答えは既に示されています。
「負荷量と回数をかけ合わせた総負荷量が同じであれば、トレーニング効果も同じである」
つまり、10kgの負荷量で10回のトレーニングを行った場合(総負荷量100kg)と、5kgの負荷量で20回のトレーニングを行った場合(総負荷量100kg)では、筋力、筋肥大の効果はほとんど同じなのです。
『筋トレの効果を最大にする運動強度(負荷)について知っておこう』
また、セット数が異なるとトレーニング効果も異なるのでしょうか?
この問いの答えも既に示されています。
「セット数が多いほうが総負荷量も高まり、トレーニング効果も高くなる」
1セットよりも複数セットを行うことで、トレーニングによる総負荷量が高まり、トレーニング効果が増加することが明らかになっています。ただし、3セット以上のセット数ではトレーニング効果が逓減する可能性が報告されていますので、3〜4セットが目安とされています。
単純な計算ですが、10kgの負荷量で10回のトレーニングを1セット行う場合(総負荷量100kg)と3セット行う場合(総負荷量300kg)では、総負荷量が多いほどトレーニング効果が高まるのです。
総負荷量がトレーニング効果の決定因子であることから、なるべく多くの総負荷量を得るためにセット間の休憩時間を長め(2分以上)にとることが推奨されています。
『筋トレの効果を最大にするセット間の休憩時間を知っておこう』
では、トレーニング頻度(週単位の頻度)も多いほうが良いのでしょうか?
◆ 週単位で考えるトレーニングプログラム
2018年1月、トレーニング頻度について新たな考え方を示したのがオクラホマ州立大学のColquhounらです。
Colquhounらは、トレーニング経験のある被験者を週3回のトレーニングを行うグループと週6回のトレーニングを行うグループにランダムに分けました。両グループともに、トレーニングメニューはスクワット、ベンチプレス、デッドリフトを行いました。
ひとつの条件として、両グループの「1週間の総負荷量が同じ」になるようにセット数、回数が設定されました。このトレーニングを6週間継続し、トレーニング前後で筋力、筋肉量(除脂肪量)、脂肪量が計測されました。
Fig.1:Colquhoun RJ, 2017より筆者作成
その結果、両グループともに筋力、筋肉量は有意に増加し、脂肪量も有意に減少しました。しかしグループ間の筋力、筋肉量の増加率、脂肪量の減少率に有意な差は見られませんでした。
Fig.2:Colquhoun RJ, 2017より筆者作成
Fig.3:Colquhoun RJ, 2017より筆者作成
これはトレーニング頻度が異なっても、筋力や筋肥大の効果は「週単位の総負荷量」によって決まることを示しています。週単位の総負荷量が同じであれば、トレーニング頻度が週3回でも週6回でもトレーニング効果は同等になるのです。
Colquhounらが「トレーニング頻度は多ければ良いというわけではない」と言った理由がここにあります。
そしてColquhounらは、トレーニング効果が週単位の総負荷量で決まるという結果はトレーニング頻度の管理を容易にするといいます。トレーニング頻度はトレーニーの体調や疲労だけでなく、休みなく身体を動かしたいものや、オフをしっかり取りたいものなどトレーニーの嗜好も反映されます。そのためトレーナーはトレーニング頻度の設定に困惑するわけですが、週単位の総負荷量を基準にすることによって1日あたりの負荷量を調整し、トレーニング頻度を選択できるようになるのです(Colquhoun RJ, 2017)。
例えば、同じ10kgの負荷量で10回のトレーニングでも、1日4セット、週2回の頻度で行った場合(パターン①)と1日2セット、週4回の頻度で行った場合(パターン②)の総負荷量は同じになるので、筋力や筋肥大の効果は同等になります。
休みなくトレーニングを行いたいトレーニーは、頻度を増やす代わりにセット数を減らし、疲労を少なくするように1日あたりの負荷量を調整することで週単位の総負荷量を達成することができます。逆にオフをしっかり取りたいトレーニーは、頻度を減らす代わりにセット数を増やし、1日あたりの負荷量を調整して週単位の総負荷量を達成することができるのです。
また同じ頻度(週3回)でも、10kgの負荷量で10回のトレーニングを1日2セット行った場合(パターン①)と10kgの負荷量で5回のトレーニングを1日4セット行った場合(パターン②)は総負荷量は同じになるので、筋力や筋肥大の効果は同等になります。
ここからわかることは、1日だけの回数やセット数による負荷量ではトレーニング効果は決まらないということです。負荷量、回数、セット数、頻度といった要素を疲労などを考慮し、週単位で総負荷量が多くなるように戦略的にプログラムをデザインすることがトレーニング効果を最大化させるのです。
1日のトレーニングプログラムだけを考えるのではなく、週単位でトレーニングプログラムを構築してみるのも良いかもしれませんね。
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References
Colquhoun RJ, et al. Training Volume, Not Frequency, Indicative of Maximal Strength Adaptations to Resistance Training. J Strength Cond Res. 2018 Jan 5.