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会報『ピリカモシリ』69号の情報

●会報『ピリカモシリ』69号を発売中!

(内容)1.日本とサハリン・クリル諸島(その43)
2.「北方領土の日」反対!北大人骨事件糾弾!アイヌ新法実現!
第21回札幌全国集会に参加を
3.秋のアイヌ民族交流会報告(関東)
4.北大・札幌医大でのイチャルパ
5.9/20「東京イチャルパ」を開催
6.沖縄現地行動の報告
7.第33回アシリチェップノミに取り組む
8.秋のアイヌ民族交流会報告(関西)
        9.金子やすゆき市議を巡るシンポジウムに参加して
10.『旭川アイヌ語字典を読もう』(18)
11.本の紹介 三木健著『八重山の民衆詩人 石垣英文』
12.報道クリップ
        13.私にとっての「北方領土」反対論文/事務局日誌から           
(頒価)300円(送料82円)
(注文は011-375-9711、ピリカモシリ社までFAXで)

●『ピリカモシリ』の合本(1号~50号)  5000円(送料400円)
●『ピリカモシリ』の合本(51号~65号)  2600円(送料240円)
●ピリカ全国実・全国集会報告集(95年~2013年) 3000円(送料240円)
●ピリカ全国実・関西集会報告集(93年~2013年) 2400円(送料240円)
各大学のそれぞれの会による遺骨問題の冊子も販売しています。一読を。
・「阪大によるアイヌ民族人骨の略奪を追及する」
・「東大によるアイヌ民族遺骨・副葬品略奪と差別研究を糾弾する」
・「京大はアイヌ民族の遺骨を郷土(コタン)に返せ」
(頒価)300円(送料82円)
●第20回札幌全国集会の報告集ができました。アイヌ民族、日本人からの発言、報告にこめた意識性をとらえてください。(頒価)300円(送料82円)
(注文は011-375-9711、ピリカモシリ社までFAXで)

北大糾弾ニュース・48号 2014年11月10日

アイヌ人骨問題 を通して、右傾化社会と対峙する
                    木村敬(ピリカ全国実・関西) 
 10月22日、北海道釧路署が釧路アイヌ協会納骨堂への不法侵入の疑いで4人の人間を逮捕している。しか も、骨壷があらされ、地蔵8体が壊されていると言う。9月9日に北海道新聞において『北大に残る2体の遺骨「故郷で眠ってほしい」返 還願う釧路アイヌ協会』として報道された際、イチャルパの場で祭司を務めた小野釧路アイヌ協会会長が「北大に2体の遺骨があることが 判明しました。早急に返していただき、前回返還された遺骨と共に仲間として納めたい」という思いを表明していることと無関係ではない だろう。
 容疑者たちの思想的な内容は明ら かではないものの、社会の右傾化が進む中で誤った正義がもてはやされる状況と無関係とは思えない。現在、アイヌモシリでは在特会を中心に したネット右翼による、アイヌ民族攻撃が強められていることが、集会などでも報告されている。果ては、政治家である札幌市議会の金子議員 が恥ずかしげもなく「アイヌ民族なんて、いまはもういない」「日本人として暮らしている中では民族とはいえない」と発言し、このような差 別発言に対し、自民党札幌連合会は最終的に除名したものの、はじめのうち「個人的見解で問題はない」と処分をしない方針でいた。またこの 議員は「アイヌが先住民族だとの主張に学術的根拠がありません」という歴史的事実すらねじまげようとする発言を今なお続けている。
 これまでアイヌ民族をはじめ、被 差別当事者の運動が闘い、築き上げてきた社会的価値観が打ち壊され、日本はこのような言説が許される状況になってしまっている。
 各大学はアイヌ民族の声を無視す ることで、このような右傾化した行動を正当化していることの責任を負うべきことを理解しているのだろうか。実際、大阪大学の人骨問題につ いて責任ある立場にある平沢は、人権問題の専門家として講演する中で、これまでの人権運動・人権教育を恥ずかしげもなく批判している。そ のような発言を行う自らが、平気で当事者であるアイヌ民族の声を無視することに、何の疑問も持たないのであろうか。
 本来の学問は、国際的な潮流を研 究し、政府に対し疑問を提示する立場にあるのではないのか。国家の方針に従うことで、自らの保身をはかろうとする学問は、すでに、学問と は呼べない。そのようなことを続ける限り、学問は単なる国家の道具でしかない。
 右翼の尖兵となっ た研究機関に対し、正当な言説で対峙していくことが求められているのだと強く感じている。
 

弾 劾 声 明 資 料

 
�.金子快之(やすゆき)札幌市会議員の経歴について
 金子市議は自分のブログに経歴について以下のように記載しています。
   〈プロフィール  1970年兵庫県生まれ、43歳。1994年東大経済学部卒、98年エアードゥ立ちあげに参加。2001年破綻し失職。札幌の民間放送局勤務。2011年市議に当選=東区選出。予備自衛官=陸上自衛隊予備3曹。慰安婦像設置に抗議する全国地方議員の会会員〉
 この経歴から私たちは、金子市議は予備自衛官として戦争などで防衛出動が発動され、予備自衛官の召集があればただちに自衛隊基地に馳せ参じる人であること、また「軍隊慰安婦」などはデッチあげと述べ、日本政府に謝罪と賠償を求めてきた元「軍隊慰安婦」たちを「戦場の売春婦」などと暴言をはいて侮辱し、さらに韓国・ソウルの日本大使館前やアメリカに設置した「慰安婦像」の撤去まで求めているグループの人物であることが分かりました。
 こうした経歴は現在、アイヌ民族を侮辱している差別発言と無関係でないと思います。
 
�.金子市議の主な発言と関連した動き
 
2014年8月11(金子市議のツイッター)
  「アイヌ民族なんて、いまはもういない。せいぜいアイヌ系日本人が良いところですが、利権を行使しまくっていることの不合理。納税者に説明できません。」
●8月16(報道取材にたいして)
  100%アイヌ民族の血が流れている人がどれだけいるのか。同じ日本人なのに少数民族という理由だけで優遇されるのはおかしい。」
●8月16日 (金子市議のホームページ)
  「我が国では戸籍や住民票へ『アイヌ』との標記はありません。『アイヌ』を法的に証明する根拠が現行法にないです。」
●8月18日(札幌市の自民党・市民会議の方針)
  個人的見解で問題はない、と処分しない方針
●8月21日(高橋はるみ知事)
  「大変残念」
●8月22日(「究明共同実行委員会・木幡寛事務局長」)
  「金子やすゆき市議のアイヌ民族差別発言を究明する共同実行委員会」が質問状を提出。
また市議会の主要4会派が自民党・市民会議に金子市議の処分などを申し入れ。
●8月25日  (菅義偉内閣官房長官の記者会見での発言)
  「(象徴空間の整備や生活向上など)アイヌ政策の推進に取り組んでいる政府の姿勢を理解されていないというのは、極めて残念だ。」
●8月27日  伊達のアイヌ民族2名が金子市議に抗議文提出
●8月28日  自民党・市民会議が金子市議に会派離脱を勧告
●8月29日  (上田札幌市長)
  「金子市議発言は公人としての配慮に著しく欠ける」
●8月29日(金子市議)
  「究明共同実」に回答   
●8月29日(金子市議の記者会見での発言)
  「日本人として暮らしている中では民族とはいえない」
●8月29日(国連差別撤廃委員会の勧告)
  「政府の対策が不十分との懸念を示し、アイヌ民族とその他の日本人との雇用や教育、生活水準の面での格差を埋めるための対策を強化するように」
●9月1日(金子市議)
  会派(自民党・市民会議)離脱の届け出提出
●9月2日(金子市議のツイッター)
  「私も選挙に落ちたら、○○○になろうかな」 (引用者注意、○○○は「アイヌ」と思われる)
●9月2日●(毎日新聞北海道版)
  「アイヌ利権問題の本質とアイヌ先住民族論の危険性について、国益を守る立場から広く国民に訴えたい。」
●9月3日(金子市議のホームページ)
  「アイヌ文化の担い手は、本当にアイヌ民族なのか?(JR札幌駅の西コンコースに展示されているアイヌ紋様刺しゅうのアートモニュメント5点を写真で示して)
  この作品の制作・展示に1500万円の札幌市予算が投じられています。……問題はこれらの作品が『アイヌ民族の工芸家が制作した』と説明されていることです。私の主張によればアイヌ『民族』はいないはずなのですが、札幌市役所はどうやってアイヌ『民族』であることを確認したのでしょうか?……北海道アイヌ協会は、アイヌの定義を『アイヌの血を受け継いでいると思われる人や結婚・養子縁組等によりそれらの方と同一の生計を営  んでいる人』としています。分かりやすく言えばアイヌの配偶者の和人(日本人)は当然アイヌだし、『等』という言葉が示すように何らかの縁があれば誰でもアイヌになれる理屈になります。こんな純粋なアイヌ以外の人が制作に携わった可能性の有無を市役所に尋ねたところ、工芸家が和人である可能性は否定しない。しかし、北海道アイヌ協会会員だからアイヌ民族であるとの説明でした。……アイヌ民族の定義のあいまいなまま、特権をここに無理やり与えようとすることがやはり混乱の原因だと思います。長い歴史の間でアイヌとそれ以外の人々の混血が進み、いま先祖代々純粋アイヌという方は数すくないはずです。……日本人とアイヌの区別や就職や進学などの差別もなくなり、民族対立もなく、同じ街で平穏に暮らすことができる今日がかれらの理想だったのではないでしょうか。それなのに『差別反対』を叫びながら利益を得たいときだけは自ら差別を演出する、こんな矛盾にはどうしても納得できないのです。……こんな歪んだアイヌ政策に私はこれからも厳しく問題提起を続けるつもりです。」
●9月9日(自民党札幌連合会が党除名処分を決定)
  (08年の国会決議を踏まえ)アイヌ民族の存在を認めないのは、党議に違反する」
●9月9日(金子市議のホームページ)
  「私の市議会4会派への説明」
  「1.アイヌの人はいます。純粋なアイヌかどうかは別として、北海道にアイヌの血を引く方々が大勢くらしています。私がいないといったのは、アイヌ『民族』です。……日本でアイヌ民族への弾圧などあるでしようか?いまや差別も区別も無くなり同じ日本人として平和に暮らす私たちの中に、わざわざ民族問題を持ち出して国を二分化する理由があるのか、とても不思議に思います。」、
  「2.アイヌは本当に先住民族か?アイヌ文化が生まれたのは13世紀と言われていますが、12世紀に建てられた神社が道内にあり、すでにこの地では和人が先に住んでいたことを示すものです。和人とアイヌが混住していたのであり、アイヌが先住民族だとの主張は学術的根拠がありません。」、
  「3.天皇陛下に謝罪を要求?5兆円の賠償?旭川アイヌ協議会は過去の植民地支配について天皇陛下の謝罪と5兆円の賠償などを求める要求書を内閣に提出しています。……アイヌの先住民族論をこのまま放置すれば、第二の慰安婦問題になりかねません。」「4.消えた住宅ローン4億8千万。アイヌの滞納額はなんと4億8千万。住宅ローン貸し付け制度はまさに不正の温床になっています。」、
  「5.差別の再生産はやめよう。行政におねだりするために、自ら差別を作り出す、こんな悲しい差別の再生産をもうやめるべきではないでしようか。」、
  「6.『差別』とレッテルを貼られて言論の自由さえ奪われる状況は、まさに民主主義の危機ではないでしようか。…平成20年のアイヌ先住民族国会決議が本当に正しかったのか、改めて国民の検証が必要です。」
9月19日(自民党)
  自民党札幌連合会が金子市議の不服申し立てを却下
●9月20日(金子市議のホームページ)
  緊急セミナーを開催。弁士・金子やすゆき、河野本道先生(文化人類学者)
  主催・金子市議を応援する国民の会
●9月22(札幌市議会)
  金子市議の議員辞職勧告決議案を可決(自民党・市民会議は反対)
 
�.国連及び日本政府の動向
 
�国連の「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(国際人権規約B規定)(1979年発効)
  第1条1項「すべての人民は、自決の権利を有する。この権利に基づき、すべての人民は、その政治的地位を自由に決定し並びにその経済的、社会的及び文化的発展を自由に追求する」
  第2条「人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位等によるいかなる差別もなしにこの規約において認められる権利を尊重し及び確保する」
  この国際人権規約ですべての人民の自決の権利が明確にうたわれました。
 
�マルチネス・コーボ「先住民族への問題に関する最終調査報告」(1983年)
  先住諸民族の権利要求が高まるなかで、アメリカ、イギリス、日本、カナダなどの大国は民族の諸権利を無視あるいは軽視し、先住民族の定義やその権利の根拠を争点にしてきました。
  国連の人権委員会の下部組織である「少数者の差別防止および保護に関する国連人権小委員会(現、国連人権促進保護委員会)」で1983年にマルチネス・コーボが標記の「最終調査報告」を行い、この報告書に基づいて国連先住民族作業部会が設置されました。
  そしてこの作業部会では、このコーボ報告書の先住民族についての考え方を作業定義として採用してきました。
  それによると、
・「先住の諸共同体、人々、諸民族とは、侵略及び植民地以前に自身のテリトリー(領域)において発達してきた社会との、歴史的な連続性を有し、これらのテリトリー、あるいはその一部において現在優勢を占めている、社会の別の構成部分と、自分たちを区別して考えている人々である。彼らは現在、社会の非支配的な部分を構成しているが、自分たちの継続的な民族としての存続を基盤として、伝来の土地と民族的なアイデンティティを、自身の文化様式、社会制度、法制度に従いながら、維持し、発展させ、将来の世代へと引き継ぐことを決意している」
「この歴史的な連続性には、以下の所要素のひとつあるいは複数の、現在までの長期に渡る継続が含まれうる。土地、宗教、生活、衣服、生活様式、言語、国の一定部分あるいは世界の一定の領域、その他」
1986年にはこの定義はさらに拡張され、
  「先住民族であると自らを認識し(アイデンティティを有し)ており、当該の共同体あるいは集団によってその成員として受け入れられたいかなる個人も、先住民族とみなす」
としました。
  日本では、二風谷ダム裁判の判決(97)で「先住民族とは、歴史的に国家の統治が及ぶ前にその統治に取り込まれた地域に、国家の支持母体である多数民族と異なる文化とアイデンティティを持つ少数民族が居住していて、その後右の多数民族の支配を受けながらも、なお従前と連続性のある独自の文化及びアイデンティティを喪失していない社会集団」と規定しました。
 しかしダム建設は容認され、アイヌ民族の河川と大地は奪われつづけました。
 
�「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」(人種差別撤廃条約)(1996年発効)
  第1条第1項「『人種差別』とは、人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するものをいう」
 
�先住民族の権利に関する国際連合宣言(2007年)
  この『権利宣言』は、前文で
・「すべての先住諸民族が人類の共通遺産を構成する文明と文化の多様性と豊かさに貢献していると断言し、さらに国民的出身または人種、宗教、民族、あるいは文化の違いに基づいて民族または個人の優越を提唱するすべての教義、方針と慣行は、人種差別的であり、科学的に誤謬であり、法的には無効であり、道徳的には非難されるべきで、社会的には不正であることを断言し、先住諸民族は、その権利行使において、いかなる種類の差別からも自由であることを再び断言し」、
・「先住諸民族が、とりわけ植民地化とその土地、領域、資源の剥奪の結果としての歴史的不正に苦しんできたこと、それによって特に自身の必要物と利益に従った開発の権利の行使を妨げられてきたことを懸念し」、
・「先住諸民族の政治的、経済的、社会的構造ならびに先住民族の文化、精神的伝統、歴史及び哲学から生ずる先住民族固有の諸権利、特に先住民族の土地、領域と資源の権利を尊重しかつ促進させる緊急の必要性を認識し、……」等々と宣言しています。
  そして46条に及ぶ条文で具体的に先住諸民族の諸権利をあげています。
  たとえば第3条では「先住諸民族は、自決権を有する。その権利により、先住諸民族は、自らの経済的、社会的、文化的な発展を自由に遂行する」
第5条では「国家の政治的、経済的、社会的、および文化的生活に完全に参加する権利を保持する一方、その独自の政治的、法的、経済的、社会的、文化的な制度を維持し強化する権利を有する」
第6条は「先住民族の諸個人は、国籍の権利を有する」と。
 また各条文には次のような権利を明記しています。
・「強制的同化またはその文化を破壊されない権利」(第8条)
・「文化的伝統と習慣を実践し、再活性化させる権利」(第11条)
・「精神的、宗教的伝統、慣習および儀式を表現し、実践し、発展させ、教育する権利、…儀式用の対象物を使用、管理する権利、その遺体、遺骨の返還の権利」(第12条)
・「歴史、言語、口承伝統、哲学、表記方法、著述を再活性化し、使用、発展させ、将来の世代に伝達する権利」(第13条)
・「先住民族自身の言語で教育を提供する教育制度と施設を設立し管理する権利」(第14条)
・「自分たちが伝統的に所有、占有、または他の方法で使用、または取得してきた土地、領域、資源の権利」(第26条)
・「自分たちが伝統的に所有、または他の方法で占有ないし使用してきた土地、領域、資源であって、自由な、事前の、情報提供に基づく同意なしに没収され奪われ占有され使用された、また損害を被ってきたものについて原状回復を含む手段により、またはそれが可能でなければ正当、公平、公正な賠償の手段により補償をうける権利」 (第28条)
・「習慣と伝統に従って民族自身の独自性(アイデンティティ)あるいは構成員を決定する権利」(第33条)
・「国境により分断された先住民族は、精神的、文化的、政治的、経済的、社会的な諸目的の活動を含め、国境を越えて他民族のみならず自民族の構成員との接触、関係、協力を維持、発展させる権利」(第36条)
・「国家は、この宣言の目的を達成するため、先住民族と協議し、かつ協力して立法措置を含む適切な諸措置をとらなければならない」(第38条)、などです。
 
�アイヌ民族の諸権利を棚上げにした「アイヌ民族を先住民族とすることを求める国会決議」(2008年)
  日本の衆・参議院は、自民党も含めて全会派が一致して「アイヌ民族を先住民族とすることを求める国会決議」を採択し(08年)、政府もはじめてアイヌ民族は先住民族であることを認めました。
  国会決議は
  「昨年9月、国連において『先住民族の権利に関する国際連合宣言』が、我が国も賛成する中で採択された。これはアイヌ民族の長年の悲願を映したものであり、同時に、その趣旨を体して具体的な行動をとることが、国連人権条約監視機関から我が国に求められている。
  我が国が近代化する過程において、多数のアイヌの人々が、法的に等しく国民でありながらも差別され、貧窮を余儀なくされたという歴史的事実を、私たちは厳粛に受け止めなくてはならない。
  全ての先住民族が、名誉と尊厳を保持し、その文化と誇りを次世代に継承していくことは、国際社会の潮流であり、また、こうした国際的な価値観を共有することは、我が国が21世紀の国際社会をリードしていくためにも不可欠である。
 特に、本年7月に、環境サミットとも言われるG8サミットが、自然との共生を根幹とするアイヌ民族先住の地、北海道で開催されることは、誠に意義深い。
  政府は、これを機に次の施策を早急に講じるべきである。
    1.政府は、『先住民族の権利に関する国際連合宣言』を踏まえ、アイヌの人々を日本列島北部周辺、とりわ  
   け北海道に先住し、独自の言語、宗教や文化の独自性を有する先住民族として認めること。
    2.政府は、『先住民族の権利に関する国際連合宣言』が採択されたことを機に、同宣言における関連条項を 
   参照しつつ、高いレベルで有識者の意見を聞きながら、これまでのアイヌ政策をさらに推進し、総合的な
   施策の確立に取り組むこと。
    右決議する。     
  だが、決議の前提となるべきアイヌ民族に対するこれまでのアイヌモシリ侵略・植民地支配などについての謝罪はまったくなく、「我が国が近代化する過程において、多数のアイヌの人々が、法的には等しく国民でありながらも差別され、貧窮を余儀なくされたという歴史的事実を、私たちは厳粛に受け止めなくてはなければならない」と述べているだけです。
「国連権利宣言」も「参照」するだけで、民族的諸権利については何ひとつうたっていません。
 
�アイヌ民族の諸権利を否定する『民族共生の象徴空間』建設方針(2014年6月閣議決定)
  日本政府は、『国連権利宣言』には賛成の手をあげながら、先住民族の定義が定まっていないことを口実にして『権利宣言』の内実を何ひとつ実現しようとはしていません。
  政府は、内閣官房長官の下に「アイヌ政策推進会議」を設置しましたが、その最終的方針は「アイヌ文化振興法」を若干ばかり手直ししたもので、白老に『民族共生の象徴空間』(国立のアイヌ民族文化博物館、自然・体験公園、ここに全国の大学などが略奪し研究材料にしてきたアイヌ民族遺骨「慰霊・研究施設」を設置)を建設するという基本構想の決定でした。
  この『象徴空間建設の基本構想』を決定した「推進会議」には、北海道アイヌ協会理事長たち一部幹部、高橋はるみ北海道知事、上田文雄札幌市長も構成員として入っています。アイヌ民族の先住権・自決権・集団的権利の一切を奪っておいて、閣議決定したのが『象徴空間基本構想』です。
 
�.「アイヌ民族に関する法律(案)」(1984年)
 
 アイヌ民族自身によって決定され、北海道ウタリ協会(当時)の総会で採択されたこの「法律案」は、その前文で「この法律は、日本国に固有の文化を持ったアイヌ民族が存在することを認め、日本国憲法のもとに民族の誇りが尊重され、民族の権利が保障されることを目的とする」とうたっています。
そして
・「北海道、樺太、千島列島をアイヌモシリ(アイヌの住む大地)として、固有の言語と文化を持ち、共通の経済生活を営み、独自の歴史を築いた集団がアイヌ民族であり、徳川幕府や松前藩の非道な侵略や圧迫とたたかいながらも民族としての自主性を固持してきた。」
と、自らを北海道・樺太・千島列島の先住民族であると宣言し、
「日本政府は先住民であるアイヌとの間になんの交渉もなくアイヌモシリ全土を持主なき土地として一方的に領土に組み入れ、また、帝政ロシアとの間に千島・樺太交換条約を締結して樺太および北千島のアイヌの安住の地を強制的に捨てさせたのである。」
「土地も森も海も奪われ、鹿をとれば密猟、鮭をとれば密魚、薪をとれば盗伐とされ……生存そのものが脅かされるにいたった。……教育においては民族固有の言語もうばわれ、差別と偏見を基調にした『同化政策』によって民族の尊厳は踏みにじられた。」
など、「明治国家」以来のアイヌモシリの分割支配、土地強奪、強制移住、民族抹殺の厳しい強制同化政策などを弾劾しています。
  そして日本政府に、基本的人権の確立、国会・地方議会に特別議席の保、アイヌ語や文化の復権、産業の育成、アイヌ民族の自主運営による民族自立化基金の設置を民族の権利保障として具体的に求めています。
  アイヌ民族が一丸となって制定をめざしたこの「法律案」は、政府・官僚、自民党などのたくみな分断工作と誘導によって、先住権・民族自決権・民族の集団的権利の要求は葬りさられました。政府は「北海道旧土人保護法」を廃止し、「アイヌ文化振興法」を制定しました。それはアイヌ民族の共有財産基金を設立したばかりの(財)アイヌ文化振興・研究推進機構に移すこととセットとして成立させたのでした。
  今こそ、アイヌ民族、世界の先住諸民族と連帯して、「国連権利宣言」の内実を、アイヌ民族新法としてかちとらなければなりません。
 

  弾 劾 声 明

 金子快之 (やすゆき )札幌市会議員のアイヌ民族差別、侮辱発言を糾弾する!
 
発言の謝罪と撤回、議員辞職を要求する!
 
                                                               2014年11月1
                  「北方領土の日」反対!「アイヌ新法」実現!全国実行委員会・札幌圏
                          (略称、ピリカ全国実行委員会・札幌圏) 代表・白川ただし
                                                ピリカモシリ社
             (賛同団体)
               旭川アイヌ協議会(会長・川村シンリツ エオリパック アイヌ)
               原住、アイヌ民族の権利を取り戻すウコチャランケの会(代表・石井ポンペ)
 
  私たちピリカ全国実行委員会は、名称にも表現している目標を達成すべくアイヌ民族有志と共に活動してきました。結成は1996年です。札幌圏はこの全国実行委員会に所属している仲間たちで構成しています。
 
  1. < >   全面肯定
     金子市議の「アイヌ民族なんて、いまはもういない」というアイヌ民族の民族としての存在を否定する発言は、近代以来の日本国家のアイヌモシリ併合・国内植民地化とアイヌ民族同化・抹殺(民族絶滅)政策および「日本単一民族国家観」の全面肯定であり、そのすべてを集約する発言です。
      日本政府はアイヌモシリを「日本の領土」(北海道)として組み入れ、土地を取り上げ、
    富(資源)を強奪し、鹿・鮭などの捕獲を禁止しました。また「開拓」(植民地化)のために民族の強制移住をくりかえし、コタン(郷里)を破壊し、生活を崩壊させ、貧困、餓死、コレラなどの病気を蔓延させ、民族を虐殺(ジェノサイド)しました。民族名や言語を剥奪し、民族的生活や風俗、習慣を禁止して皇民化(同化)政策を推進しました。  
     さらにアイヌ民族=「滅びゆく民族」論を正当化し、うち固めるために墓地を破壊し、遺骨・副葬品を略奪して差別的「アイヌ研究」をおしすすめました。こうした民族絶滅政策のうえに、1899年には北海道旧土人保護法を制定し、アイヌ民族を小さな荒地に囲い込み、農耕を強制し、アイヌ民族を別学・隔離する「旧土人学校」で徹底的な同化教育・皇民化教育を行ないました。この法によって日本国家はアイヌ民族に対する差別・抑圧と排除の体制を確立しました。北海道旧土人保護法はアイヌ民族「自立支援」の「保護法」などでは全くなく、民族同化・抹殺法です。これらの結果、アイヌ民族はまさに民族存亡の危機に立たされました。
     しかるに金子市議は「北海道旧土人保護法は、就農を希望するアイヌに無償で土地や農具、種子を交付し、自立支援を行うほか、小学校建設など教育奨励や生活扶助、社会福祉など幅広い観点からアイヌへの支援を行うことを定めた法律です。保護法の成立を望んだのはアイヌ自身であり…」(2014年8月29日付「8月22日付公開質問状について(ご回答)」)などとぬけぬけと述べています。今日、北海道旧土人保護法をこれほど全面的に賛美する人が他にあるでしょうか。ここに金子市議の、侵略植民地支配にたいする全くの無自覚、無責任が露呈しています。
     
    (2)アイヌ民族=「滅びゆく民族」論の主張
     アイヌ民族を存亡の危機に落し込め、筆舌につくしがたい惨状をもたらしたのは、
    アイヌモシリ併合・国内植民地化にはじまる抑圧、支配であるにもかかわらず、日本国家はこの真の原因をおおい隠すために、それをアイヌ民族の生来的「劣等性」にあるとデッチあげ、すりかえました。アイヌ民族は社会の進化、発展に立ちおくれた「未開」で「原始的」な民族だから必然的に「滅亡」するという「滅びゆく民族」論が徹底的に流布されました。またアイヌ民族は日本人との混血、同化がすすんで「純粋アイヌはもういない」という「純粋アイヌ滅亡」論に立つ人種差別思想をさかんに吹聴しました。しかしアイヌ民族であれ、日本人であれ、いかなる民族にも「純粋」などというものは存在しません。人類は200万年前頃にアフリカ大陸に誕生し、世界各地に移動し、広がってきたと言われています。それらの人間集団は今日に至る長い歴史の間に、通婚もし、交流し、戦争もしてきました。生きて運動し、歴史的に交流する人間や民族に、血液や頭の形、骨格、肌の色などに「純粋型」があるのでしようか。ましてやその固定的指標で民族を判断することは根本的に間違いです。
      このような「滅びゆく民族」論や「純粋アイヌ滅亡」論のデマとデッチあげをあたかも科学的理論であるかのように欺瞞したのが、北大、東大、京大、阪大などの旧帝国大学と研究者、とりわけ人類学者たちです。彼らは「優勝劣敗」の社会進化論、生物学主義的人種差別論、優生思想をもって、その疑似科学をうち固めました。その最たる学者の一人が「金子市議を応援する国民の会」の河野本道です。体制派御用学者・河野本道は「そもそも『アイヌ』が『民族』として存在したことがあると言えるのか」と、放送大学の講義や自著で一貫して主張しています。アイヌ民族と私たちピリカ全国実の抗議に対して反省も謝罪もせず、今なお開き直っています。
      金子市議は、鬼の首をとったかのように、1955年に『世界大百科事典』第1巻(平凡社)の知里真志保の記述を引用しています。確かに知里真志保は「アイヌはすでに滅びたといってよく、厳密にいうならば、彼らは、もはやアイヌではなく、せいぜいアイヌ系日本人とでも称すべきものです」と書いています。知里真志保はアイヌ民族の学者であり、アイヌ語の復権はもとより、アイヌ語の文法や地名を精密に研究し、日本人学者のアイヌ民族に関するでたらめな放言を弾劾し、「アイヌ研究を正しい軌道にのせるために!」(知里真志保『アイヌ語入門』)奮闘しました。アイヌ民族が深く尊敬する学者です。その知里真志保が上記の記述をせざるをえなかったのは、日本国家や大学、研究機関、学者連中が総がかりでおしすすめてきた「滅びゆく民族」論がいかに根深く、日本社会に浸透していたかを示すものです。1955年当時の日本の国家、社会はいまだ「戦前」をそのままひきずっていました。その後この『百科事典』はアイヌ民族などの批判や訂正要求で何回も書き換えられています。
      以上から金子市議の「アイヌ民族なんて、いまはもういない。せいぜいアイヌ系日本人が良いところ…」、「100%アイヌの血が流れている人がどれだけいるのか」、「先祖代々純粋アイヌという方は少ない」等の発言は、今現在の「滅びゆくアイヌ民族」論の主張以外のなにものでもありません。
     
    (3)「日本=単一民族国家」観と民族排外主義の煽動
     金子議員は「我が国では戸籍や住民票へ『アイヌ』との表記はありません。『アイヌ』を法的に証明する根拠が現行法にないのです」と平然とのべています。なぜ憲法をはじめ現行法にアイヌ民族に関する規定がないのか。それは日本国家がアイヌ民族の民族としての存在を否定し、その民族的諸権利のいっさいを認めてこなかったからです。
     天皇を「国民統合の象徴」として戴く現行憲法は、アイヌ民族のみならず、朝鮮人、中国人など在日の諸民族総体の権利を無視して、偏狭で排他的な「単一民族国家観」を前提に成りたっています。また1871年に制定された戸籍法はアイヌ民族の大地(アイヌモシリ)を奪い、民族名を奪って同化、民族抹殺する装置として猛威を奮ってきました。憲法、戸籍法等をつらぬく「単一民族国家観」は他民族の存在とその権利を無視し排除して当然とする民族排外主義を煽るものです。それは「国民」として平等であるとともに民族としても平等でなければならないという近代国家の理念さえも否定するものです。「日本は単一民族国家」の発言は中曽根康弘首相(1986年)、平沼赳夫経済産業相(2001年)、鈴木宗男議員(2001年)などによってくり返されてきました。
     「単一民族国家観」に立つ金子市議は、国籍と民族の区別もつかず(日本国籍の他民族の存在を認めず)、「同じ日本人なのに…」とか、「日本人として暮らしている中では民族とはいえない」などと平気でのべたてています。金子市議には多民族国家など思いも及ばないのです。
     アイヌ民族の存在をみとめない日本政府は、雀の涙ほどの助成金や福祉対策をもって「アイヌ政策」としてきました。その助成金や福祉対策は、アイヌ民族の民族的諸権利の一片をも奪いつくしたうえになりたっており、決して民族の権利にもとづくものではありません。
     このような助成金や福祉対策でさえ、金子市議は「優遇」だからやめるべきだと言い放っています。また「『アイヌ』であることをどうやって証明するのか」などと言っていますが、自分自身と民族団体が証明すればよいことであり、これもまた民族自決権に属しています。
     
    (4)先住権、民族自決権、民族的諸権利の全否定
     日本政府が一貫してアイヌ民族の民族としての存在を否定してきたのは、その承認が近代以来のアイヌモシリ併合とアイヌ民族同化・抹殺の全歴史の反省を迫り、アイヌ民族の先住権、民族自決権、民族的諸権利が発生するからです。
     アイヌ民族など先住民族をはじめすべての民族は、いずれの国家においても民族的抑圧や差別・蔑視が存在するかぎり、民族自決権を要求する権利をもっています。被抑圧民族は、国家的分離・独立から連邦制や自治権に至るまで、また土地、言語、宗教、文化、教育などに関する民族的諸権利について、民族自身の要求にもとづいて民主的に決定する政治的主権をもっています。
     しかしアイヌ民族をはじめ世界の先住民族は、この権利獲得のために資本主義はじまって以来、実に500年におよぶ苦難の闘いを強いられてきました。1960~1970年代に入って世界の先住民族は、自らの解放組織をつくりだし、国際的連帯を築き、闘いを強化してきました。それは国連をも動かし、市民的および政治的権利に関する国際規約(国連人権規約B規定 1979年)や人種差別撤廃条約(1996年)を発効させました。
     日本政府は、これらの条約を批准しながら、「日本には少数民族は存在しない」とか、「アイヌ民族を少数民族と認めるが、先住民族とは認めない」等と言い張って、アイヌ民族の先住民族としての存在を否定し、ひきつづき同化・抹殺をおしすすめました。その際日本政府は「先住民族の概念や定義がない」ということを理由に自らの政策を合理化しました。これは今もって金子市議や河野本道がさかんに吹聴している詭弁です。
     長い歴史の中で運動し交流する諸民族をかくかくしかじかが、先住民族であるなどという定義などありえません。言語や文化、居住地域、主たる生産労働などは、それぞれの民族の民族性に大きな影響を与えていますが、しかしそれらも諸民族の歴史的な交流によって変化、発展しまた分化していきます。定義が問題なのではなく、抑圧民族が自民族中心の排外主義的民族主義によって、先住民族の独自の民族性と民族自決権を無視・蹂躙していることこそ重大問題なのです。
     世界の先住諸民族の運動の高まりのなかで、アイヌ民族は1984年、近代以来の「屈辱的なアイヌ差別法である北海道旧土人保護法を廃止し、新たなアイヌ民族に関する法律」の制定を要求しました。この法律案は、「日本国に固有の文化を持ったアイヌ民族の存在を認め……民族の権利が保障されることを目的とする」とアイヌ民族の民族的独自性と民族的権利の確立を求めています。しかし1997年に「北海道旧土人保護法」を廃止し、制定された「アイヌ文化振興法」は、アイヌ民族の先住権を含む民族自決権を否定し、アイヌ民族の権利は認めず、伝統文化のみを振興するというものでした。北海道旧土人保護法の同化(民族絶滅)政策について謝罪も賠償もありません。
     世界的な先住民族の権利要求と闘いは、2007年先住民族の権利に関する国際連合宣言(「国連権利宣言」)へと集約されました。それはアメリカ、日本、カナダ、オーストラリア、ニュージランドなどの反対や消極的対応をうち破り、民族自決権をあらゆる権利の基礎にすえた宣言です。
     日本政府は「国連権利宣言」に賛成しておきながら、その先住権や民族自決権、民族的諸権利の一切を今なお認めていません。衆参両院の「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」(2008年)も民族的諸権利には全くふれず、言葉のうえだけで「先住民族」と認めたにすぎません。日本政府は世界の先住民族の高まる権利要求に逆行し、国際的孤立を深め、その民族政策は完全に破綻しています。
     いまこそ世界先住諸民族とともに「国連権利宣言」に則った、真のアイヌ民族新法をかちとらなければなりません。
     
     以上から今回の金子市議の発言は近代以来のアイヌモシリ併合、植民地支配とアイヌ民族同化・抹殺(絶滅)政策を全面肯定し、「日本単一民族国家観」にたって民族排外主義を煽り、アイヌ民族の民族的独自性と先住権、民族自決権、民族的諸権利を全く否定して民族抹殺を主張するものであり、断じてゆるすことはできません。
     これまで金子市議にたいする批判的な意見がアイヌ民族団体、個人はじめ、市議会各会派も含めて多くだされ、自民党からも除名され、市議会では議員辞職勧告も決議されています。
     しかし、金子市議は公職である議員を現在も辞職していません。そればかりかこれからもアイヌ民族にたいする差別言動を強めると開き直っています。
     金子市議の発言・態度は、市会議員という公職の立場では絶対に許されるものではありません。一市議としての「言論の自由」と言いますが(同じようにかつて河野本道は「学問の自由」と開き直っていましたが)、差別・侮辱する自由などどこにもありません。
     金子市議は、すみやかに辞職し、猛省することを求めます。
    (なお、金子市議の発言をはじめとして、この弾劾声明を裏づける資料を添付します) 
 以 上

人骨事件の幕引きを許さない

北大糾弾ニュース・47号 2014年105

 

戦後の遺骨強奪、コタンの破壊を弾劾する

    白川ただし(ピリカ全国実・札幌圏)

 

 ピリカ全国実はさる726日〜27日、静内(静内駅前、豊畑)、浦河(杵臼)を中心に日高地方での遺骨強奪の実態調査とアイヌ民族との交流をおこなった。これまでのアイヌ民族の墓地破壊・遺骨と埋葬品の強奪・差別的なアイヌ研究批判は、おもに北大医学部解剖学第二講座の児玉作左衛門に焦点が当てられてきた。今回は、児玉と同じくして日本学術振興会第8小委員会(「アイヌの医学的民族生物学的調査研究」、1933-37)に所属していた北大医学部解剖学第一講座の山崎春雄の批判も行うことと、とりわけ戦後の墓地破壊を検証するためであった。

 日高地方は、平取から太平洋岸に沿って様似まで、海、河川から魚・貝・海草が豊富に採取でき、広大な大地に恵まれ、戦前においてもアイヌ民族の人口も多い。今日でもアイヌ民族の拠点であり、歴史と文化を育んできたところである。学振もここに目をつけ北大医学部の生理学など各専門部門から選抜した学者たちで「調査団」を組織し、1934年平取に第1回「民族衛生調査」を実施し、頭部・歯・眼窩などの生体測定をしている。「調査団」はこれらの民族差別と人権侵害の研究について「活きた材料による優生学研究」と規定しているのだ。

 戦後の1950-60年においても、文部省の助成を受けて大阪大学の小浜基次を中心に日本民族学協会が「アイヌ 民族実態調査研究」(主に血液採取、生体計測)を沙流川流域(平取など)でおこなっている【阪大・人骨問題の真相を究明する会発行の冊子を読んでください】。

 山崎春雄の主たる「研究」手法は〃アイヌ男女の精密な人類学的写真撮影によって骨格と同様に資料として永久保存する。総数は約1000人〃と『北大医学部調査報告書』は書いている。この写真などは遺骨と同じ性質の個人・民族情報なのだ。氏名・地域・年齢・通し番号が記載されたこの写真データ、ネガフィルムをつかって、今日まで北大は研究の資料としてきたのだ(阪大もだ!)。旭川アイヌ協議会、ピリカ全国実などはアイヌ民族に謝罪し、返還すべきと要求しているが、話し合いもせず、無視している。

 静内(現・新ひだか町)での戦後の遺骨略奪について、『医学部調査報告書』では北大解剖学第一講座の松野正彦教授を中心に「静内駅前、川合、豊畑の旧墓地」をあげている。

 私たちの遺骨調査であきらかになったのは現に略奪時まで使用していた「アイヌ民族の共同墓地」を破壊し、遺骨をもちさった実態であった。北大がいう「旧墓地」 という表現はデッチあげである。北大は墓地として使用していたにもかかわらず「旧」つまり「跡地」といい張ることによって、あたかも考古学的な遺跡発掘調査のように述べ、遺骨・副葬品の強奪を隠蔽する。駅前の広大な墓地を破壊する様子を少年時に見ていた地元の人は「新しい遺体で、骨にまだ肉がついていた。道路工事のように掘り返していた」と証言している。

 JR静内駅前の整地・整備・開発(195556)を理由にした墓地の破壊では166体以上が、豊畑では共同墓地を近くの寺の墓地に改葬することを理由にして32体の遺骨・副葬品が略奪されている(197172)。豊畑ではアイヌ民族の青年たちが鎌をふりかざして抗議・阻止しようとした証言を『現代のアイヌ』で菅原幸助が紹介している。他方静内駅前でも、豊畑でも日本人の遺骨は、丁重に寺の新しい墓地に改葬されているのであった。

 静内の東に位置する浦河の杵臼共同墓地での検証では、日本人の入植の拡大によってコタン近くにあったアイヌ共同墓地が日本人と一緒の墓地に移転させられ(それも湿地の片隅に)、さらにそのうえ遺骨まで持ちさられた実態であった。

 現地調査をして改めて確認したのは静内駅前、豊畑の共同墓地跡は完全に破壊され、その痕跡も残していないこと、そして重要なことは墓地破壊はコタンの破壊でもあったことである。遺骨・埋葬品を郷里に返還させ、謝罪の碑を建てさせよう!


●会報『ピリカモシリ』68号を発売中!

(内容)1.日本とサハリン・クリル列島(その43)
2.7.25-26北大文学部人骨事件20年を糾弾する連続行動の報告
3.日高地方のアイヌ民族遺骨調査に参加して
4.遺骨返還訴訟傍聴記・・浦幌アイヌ協会の陳述
5.金子札幌市議の「アイヌ民族なんて、もういない」発言を糾弾する
6.聞き書き 葛野次雄さん(1)
7.「アイヌ文化の復興等を促進するための『民族共生の象徴となる空間』の
            整備及び管理運営に関する基本方針」の閣議決定を弾劾する
8.『旭川アイヌ語字典を読もう』(17)
9.本の紹介 遅 子建著『アングン川の右岸』(白水社)
10.報道クリップ
        11.事務局日誌
        12.私にとっての「北方領土」反対論
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各大学のそれぞれの会による遺骨問題の冊子も販売しています。一読を。
・「阪大によるアイヌ民族人骨の略奪を追及する」
・「東大によるアイヌ民族遺骨・副葬品略奪と差別研究を糾弾する」
・「京大はアイヌ民族の遺骨を郷土(コタン)に返せ」
(頒価)300円(送料82円)
(注文は011-375-9711、ピリカモシリ社までFAXで)

アイヌ民族交流のスケジュールについて

秋のアイヌ民族交流ウィーク・スケジュール  
10/17(金)夜           
山形・白鷹町で講演集会(詳細未定)     
主催・ピリカ山形
10/18(土)午後6〜午後10時      
かけこみ亭がチセになる!?     
〜川村シンリツ・エオリパック・アイヌさんと大交流宴〜    
かけこみ亭(国立市富士見台1-17-12 谷保駅北口徒歩1分)     参加費1500円    
問い合わせ/かけこみ亭 042-574-3602(18時より)  

 書を捨てて、アイヌモシリに行こう。そう感じてボクは、友人の住むアイヌモシリへ旅立った2013年7月。そこで出会ったのが、川村さんだった。ショックで楽しい、過去と現在の混在する記念館での盛りだくさんのお話をお伺いしながら、ぜひ、東京での仲間にもアイヌのこと伝えたいと思ったのです。  そして、かけこみ亭ならではの企画をたてました。チセとは、笹吹きのアイヌの家屋のこと。囲炉裏にみたてた屋内でカムイノミ(お祈り)からはじまります。川村さんには、たっぷりとその民族の文化についてお聞きしましょう。大交流会には、ウポポ(唄)が、ユカラ(謡)が、リムセ(踊り)が、繰り広げられるか!? 何時からでも、ご参加ください。早く来られると、イナウ(幣)削りが見られます。遅く来られると、もう、チセのなかはポロリムセ(輪踊り)の熱い夜です!

第一部     18時~ イナウつくり カムイノミ
第二部     19~お話
第三部     20時~ 熱烈!大交流宴 主催 かけこみ亭 マリオ 共催 ピリカ関東     

10/19(日)午後1時15分〜午後4時30分       「アイヌ民族の遺骨返還を求める集会」(詳細・下記)
10/20(月)午後4時50〜6時20分          河合塾・松戸校での講演会 
10/21(火)午前・午後           東京賢治シュタイナー学校で授業(非公開)
10/23(木)午後      埼玉大学で授業(非公開)    
10/19 アイヌ民族の遺骨返還を求める集会 「慰霊・研究施設」建設反対! アイヌ民族の自決権をかちとろう   日 時  
10月19日(日) 午後1時15分開場〜
会場  文京区シビックホール 会議室1(文京区春日1-16-21)      

http://www.city.bunkyo.lg.jp/sosiki_busyo_shisetsukanri_shisetsu_civic.html      
  東京メロト後楽園駅・丸の内線/南北線徒歩1分 JR水道橋駅(東口)徒歩9分 

講 演  川村シンリツ・エオリパック・アイヌさん(プロフィール参照)      
海原 剛さん(北大人骨事件真相究明緊急会議・史的唯物論研究所)      
—「慰霊・研究施設」をめぐる「北大医学部調査報告書」批判
主 催・「北方領土の日」反対!「アイヌ新法」実現!全国実行委員会(略称ピリカ全国実)・関東グループ 主 賛・「東大のアイヌ民族遺骨を返還させる会」/資料代・ 1000 円  

【 川村シンリツ・エオリパック・アイヌさんプロフィール 】  1951年旭川市近文コタンに生まれる。「シンリツ エオリパック アイヌ」は、おばのユーカラ伝承者の故砂沢クラさんが命名。「先祖を大事にする人」という意味。26歳で川村カ子トアイヌ記念館館長になる。1985年、旭川では28年ぶりのイオマンテ(熊送り)を行う。旭川アイヌ語教室やチカップニアイヌ民族文化保存会などの活動の中心的存在。現在、旭川アイヌ協議会会長。『アイヌ民族の団結と権利奪還にむけた共同宣言』(2013年9月)のよびかけ共同代表。  

 政府・アイヌ政策推進会議は6月13日、「アイヌ文化の復興等を促進するための『民族共生の象徴となる空間』の整備及び管理運営に関する基本方針」を閣議決定しました。この閣議決定は、「民族共生の象徴となる空間」として北海道白老町に「国立のアイヌ文化博物館(仮称)及び国立民族共生公園(仮称)」と「遺骨等の慰霊及び管理のための施設」(「慰霊・研究施設」)を2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に合わせて建設し、一般公開するとしています。しかも「慰霊・研究施設」の早期建設も盛り込まれています。  私たちはアイヌ民族の先住権・民族自決権、民族的諸権利をいっさい否定する閣議決定に反対します。とりわけ東大・北大などの人類学者たちが、「明治」以来戦後にいたるまでアイヌ民族の墓を暴き略奪した遺骨と副葬品を一ケ所に集める「慰霊・研究施設」建設は、許すことはできません。この間、アイヌ民族と和人は遺骨と副葬品略奪の真相究明と謝罪と賠償の上で返還することを求め、東大、北大、京大、阪大に対して闘い続けています。  文部科学省の調査によれば、アイヌ民族の遺骨は全国11大学で1636体が「保管」されているとしていますが、その数字自体がデタラメなものです。たとえば北大は、文部科学省には�個体ごとに特定できたもの「1027体」、�個体ごとに特定できなかったもの「484」(箱)と報告しています。つまり北大は1500体に近い遺骨を「保管」している事になるのです。しかし北大医学部が独自に作成した「調査報告書」には�の部分が抜け落ちていたり、過去に旭川、釧路、門別のアイヌ民族に返還したはずの遺骨が、「別個体のアイヌ人骨」であったなどと記し、今だにその謝罪も再返還もありません。  そもそも、「民族共生の象徴となる空間」構想は、2007年「先住民族の権利に関する国連宣言」(国連権利宣言)採択や、2008年「アイヌ民族を先住民族とすることを求める国会決議」を受けて、政府・アイヌ政策推進会議が打ち出したものです。本来、日本政府は「国連権利宣言」に賛成したのであればアイヌ民族法を制定し、すみやかに略奪した遺骨と副葬品を謝罪と賠償を行い返還すべきなのです。「民族共生の象徴となる空間」は、アイヌ民族の当然の諸権利に敵対することによって日本国家による「アイヌ民族同化(抹殺)完了宣言」に等しいものです。「慰霊・研究施設」建設反対に向け「10/19集会」への参加、賛同を訴えます。 2014年9月20日  

連絡先・ピリカ全国実・関東グループ 〒150-0013 渋谷区恵比寿4-19-5 ホワイトハイツ鈴木103 TEL&FAX 03-3446-9058    
 

北大糾弾ニュース

人骨事件の幕引きを許さない   2014 年 8 月 12 日 46 号


「象徴空間」が閉じ込めようとしているもの          井上 森(立川自衛隊監視テント村)
 
本紙読者です。身近な出来事から「象徴空間」について考えてみたいと思います。

●アイヌ刺繍の講座に出かけた連れあい
 4年ほど前、娘が生まれたばかりの時のことです。市報に「アイヌ刺繍」講座の案内がのっていました。育児休暇中で暇だった連れ合いは「これはやってみたい!」と言い、赤ちゃんと私を置いて、原付に乗ってとっとと講座に出かけて行きました。
 私は勝手に心配をしました。講師はアイヌの人なのだろうか?どういう立場の人なのだろう?もしや文化的搾取に手を貸しているんじゃないか?帰ってきたら遺骨問題について話さなければ、とか…あれこれと。
 しかし彼女は3時間ばかりして、ハンカチほどの大きさの布に「自分で選んだ」というアイヌ紋様の刺繍を施して、意気揚々と帰ってきました。「どうだった?」と問う私に彼女は、「先生がアイヌかどうかはよく分からなかった」けど「ずいぶん面白かった」といいます。もう2回ほど彼女は講座に出かけ、「刺繍は肩がこる」といってやめました。
 この話は、私に大きな教訓を残しました。少なくとも何冊かのアイヌ民族について書かれた本を読み、理論武装していたはずの私でしたが、考えてみれば刺繍一つできない(というよりもやろうともしなかった)ことに気付いたのです。「象徴空間」的な「日本国家が管理するアイヌ文化」とは全く異なる地平で、異文化への驚き・興味・尊敬を持つ感性を彼女はもっていたのです。

●リベラルな憲法学者にも潜む統合主義
 そのさらに3年ほど前のことです。岩手の山間部の仲間のもとに旅行にいったことがあります。宴席のなか、町の観光課に勤めているという若い女性が「町内に『私はアイヌだ』というお婆さんが数年前まで存命で会いにいったことがある」という話をしました。
 その後、話がもつれて、同行していたリベラルな憲法学者の先生が「自分は民族教育というものは認められない。公教育は一つであるべきだ。アイヌ語や朝鮮語も、日本語(「国語」)の授業のように日本の公教育の中で教えればいい」ということを言いだしました。
 彼の議論は、民族の上位に国家をおく考え方です。「唯一の正統な教育」たる公教育は、日本国家の名のもとに、日本国家の責任で、多民族国家・日本に生きる人間(=日本人)を育成するものであるべきだ、という議論でした。
 確かに悲惨な現状から考えれば、公教育のなかでアイヌ民族の歴史や言語が教えられれば大きな前進かもしれません。しかし、民族教育を否定して、理想の公教育へ一本化していくべきだという議論は大きな落とし穴をもっています。
民族教育とは、大和民族以外の民族の言語や文化が尊重され、授業で教えられることだけではありません。それは教育の主体をめぐる問題なのです。たとえ日本国家がアイヌ語の授業を施したとしても、それは「民族についての教育」であって、「民族による教育」ではありません。
つまり憲法学者の先生は、公教育における「民族についての教育」が充実すれば「民族による教育」は放棄されるべきだと主張したのです。
 私は、学生時代に関わっていた朝鮮学校出身者の国立大学受験資格を求める運動なども引き合いに出しながら、「公教育イデオロギーがそもそも問題なのだ」と反論しました。怒鳴りあいの議論に終止符を打ったのは、北海道出身の仲間の発言でした。彼女は、「私はアイヌと同じ立場を持つことは決してできない。私は侵略者の末裔だ」と話したのです。「複数の出自をもつが、同じ日本人」という話ではなく、私とアイヌは違う歴史をもつ違う存在であることを自覚することなしには、未来はない、と。
憲法学者の先生は自分の非を認め、のちにさらに考えたことを丁寧なメールで送ってくれました。

●“途上”を生きること
憲法学者の先生のような、日本国家の侵略・抑圧にも自覚的な、多文化主義的な統合主義というのは、「象徴空間」的なものの最左翼に位置するのでしょう。
 一方で、「多文化主義的な統合主義」を植民地主義の構成要素として私は理解していましたが、その政治的な思考力を研鑽するだけでは、おそらく非常に図式的な対抗力しか持ちえないでしょう。それだけではきっと何かが足りないのです。
連れ合いが作った不慣れなアイヌ刺繍に、私の心は躍動します。その完成度の低さが、「国立アイヌ文化博物館(仮称)」に展示されるであろう「完璧なアイヌ刺繍」との対比をなしています。征服した地域の「完璧な文化作品」を展示することは、イギリスにもフランスにも共通している帝国主義の欲望です。それは征服事業の偉大さの証明であると同時に、被征服民族の文化を「塩漬け」にし、死んだものとして終わらせる作業なのです。
連れ合いの刺繍は、言うなれば“途上感”に満ちています。「完璧なアイヌ刺繍」の背後にも、“途上”の苦闘や挫折や努力があるはずです。それこそ文化の生命力の証明であり、“途上”への想像力をもつことこそ植民地主義を克服・批判するために不可欠なものであるのではないかという直感があります。
しかし現実の「象徴空間」では、バックヤードに大量のアイヌ民族の遺骨が「保管」されているのです。欺瞞と暴力が支配しているのです。

「アイヌ文化の復興等を促進するための『民族共生の象徴となる空間』の整備及び管理運営に関する基本方針」の閣議決定を弾劾する

内閣総理大臣・安倍晋三様
内閣官房長官・菅 義偉様
文部科学大臣・下村博文様
北海道知事・高橋はるみ様
旭川アイヌ協議会
原住、アイヌ民族の権利を取り戻すウコ チャランケの会
東大のアイヌ民族遺骨を返還させる会
京大のアイヌ民族遺骨問題の真相を究明 し責任を追及する会
阪大・人骨問題の真相を究明する会
北大人骨問題の真相を究明する会
ピリカ全国実行委員会
【共同連絡先・札幌市白石区栄通10-5-1 フォーレストフヴィレッヂ栄通301号
ピリカモシリ社 電話 011-375-9711】
2014年7月18日
 
「アイヌ文化の復興等を促進 するための『民族共生の象徴となる空間』の
              整備及び管理運営に関する基本方針」の閣議決定を弾劾する 
はじめに
 政府は6月13日、「アイヌ文化の復興等を促進するための『民族共生の象徴となる空間』の整備及び管理運営に関 する基本方針」(以下、「基本方針」)を閣議決定した。アイヌ政策をめぐる重要政策での閣議決定は、1997年のアイヌ文化振興法以 来である。「基本方針」の主な内容は以下の通りである。「施策の中核となる」「象徴空間は、アイヌ文化の復興等に関するナショナルセ ンターとして、・・・北海道白老町に整備する」。「象徴空間の役割」は、「(1)アイヌ文化の復興」「(2)アイヌの人々の遺骨及び その副葬品の慰霊及び管理」である。そのための施設は「国立のアイヌ文化博物館(仮称)及び国立民族共生公園(仮称)」と「遺骨等の 慰霊及び管理のための施設」(「慰霊・研究施設」)で、
「2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に合わせて一般公開する」。なお、「遺骨等の集約につい ては、象徴空間の一般公開に先立ち…できる限り早期に行う」としている。私たちは、またもやアイヌ民族の先住権・民族自決権や民族的 諸権利を無視・抹殺したこの閣議決定を断固弾劾する。
 
「民族共生の象徴となる空間」は「虚構 の空間」
 「基本方針」は第6回アイヌ政策推進 会議(座長・管義偉内閣官房長官 6月2日)の報告を受けたものだが、歴史的には「アイヌ政策の あり方に関する有識者懇談会」(以下、「アイヌ有識者懇談会」)の「報告書」(2009年7月)、それを受けた「アイヌ政策推進会議 『民族共生の象徴となる空間』作業部会」(以下、「象徴空間・作業部会」)の「報告書」(2011年6月)の路線に沿ったものであ る。「アイヌ政策有識者懇談会」の「報告書」は、「明治に入ってからは和人が大規模に北海道へと移住し開拓が進展する。その陰で先住 していたアイヌの人々は、文化に深刻な打撃を受ける」と述べていた。これを受けた「象徴空間・作業部会」の「報告書」は、「象徴空 間」をアイヌ政策の「扇の要」と位置づけたうえで「国の政策の結果としてアイヌ文化に深刻な打撃がもたらされた歴史を踏まえて、国が 主体性を持ってこのプロジェクトを立案し実現する」としたのである。
 この立場は、近代天皇制国家によるア イヌモシリ(北海道)侵略・植民地支配が鮭や鹿の捕獲の禁止、強制移住による餓死などアイヌ民族に対するジェノサイド(「集団的虐殺」) であったことを認めない「開拓史観」そのものであり、侵略無責任の歴史観に貫かれたものである。そして、アイヌ民族への「打撃」を文化に のみ切り縮めたうえでアイヌ政策を文化保存・復興に収斂しようとしている。実際、各報告書も「基本方針」も「アイヌの人々」という呼称を 使い、一貫してアイヌ民族を独自の民族として認めていない。したがって「先住民族の権利に関する国連宣言」(2007年)で認められた先住権・民族自決権や民族的諸権利も完全に否定している。このことは、アイヌ民 族は既に日本国民(皇民)に完全に同化しているとする立場であり、アイヌ文化も民族としてのアイデンティティに裏打ちされた民族文化 としてではなく、単なる異文化程度の意味しか付与されていない。
 「アイヌ政策推進会議」の「北海道外 アイヌの生活実態調査」作業部会は「北海道外アイヌの生活実態調査」などを行い、内閣府は「アイヌ政策に関する世論調査」を実施したが、 第6回アイヌ政策推進会議では各政策の進捗状況が報告されただけで具体的なアイヌ政策は何ひとつ示されていない。道外アイヌ民族の長年の 要求である「生活館」建設も認めていない。まさに「民族共生の象徴となる空間」とはアイヌ民族を日本天皇制国家に包摂するための「空間」 でしかありえない。何故なら日本社会においてアイヌ民族は差別と貧困に苦しめられており、和人との「共生」など現実には存在していないか らだ。
 
「慰霊・研究施設」に反対する
 特に問題としなければならないのは、 「象徴空間」に建設されようとしている「遺骨等の慰霊及び管理のための施設」である。第6回アイヌ政策推進会議は「個人が特定されたアイ ヌ遺骨等の返還手続に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」)を発表した。文部科学省によれば全国の12大学が保管しているアイヌ民族遺骨は1636体で、そのうち個人が特定できる遺骨は23体(北大19 体、札幌医科大4体)となっている。これらは、あくまでも各大学が保管状況を報告したものであり「北大医学部アイヌ人骨収蔵経緯に関 する報告書」(2013年3月)を見ても明らかように、とても信用できる代物ではない。北大はアイヌ民族に対してこれまで保管してい る遺骨を1004体としてきたが、「北大医学部アイヌ人骨収蔵経緯に関する報告書」では1500体近い遺骨を保持しているとした。し かもこの数は医学部だけであり、その他の学部は何ら調査もしていない。
 「ガイドライン」では、各大学の「個 人が特定されたアイヌ遺骨及び当該遺骨と一対一で対応する副葬品」を「特定遺骨等」としたうえで、「特定遺骨等を返還する意向がある大学 は、民法及び裁判判例等を考慮し、返還を希望する祭祀承継者に返還するものとする」としている。「特定遺骨等」であっても「祭祀承継者か ら返還請求がなかった場合」や「祭祀承継者を特定できなかった場合」は「象徴空間」に集約するとしている。遺骨の返還について、民法第897条「祭祀に関する権利の承継」を引き合いに出して、「個人が特定された」遺骨に限り「祭祀承継者」 (返還申請者)に返還するとしている。しかし、そもそもアイヌ民族遺骨略奪は、単なる個人の遺骨問題ではなく「純粋アイヌ滅亡論」・ 「アイヌ民族劣等論」に基づく民族差別研究の為に行われた。そのためにアイヌ民族が居住していたコタン(郷里)の共同墓地から遺骨を 盗掘したのだ。墓地破壊・コタン破壊であり、民族総体に対する抹殺行為であった。
天皇を国家の最高の祭主として神々や祖先を祀る(まつる)ことに由来する日 本の「祭祀承継権」を持ち出すこと自体が、アイヌ民族の文化を無視している。それは民族・コタン(郷里)への返還を拒否する口実に過ぎな い。「遺族等への返還の目途が立たないもの」は「象徴空間」へ集約する方針は変わらない。「遺骨等の慰霊及び管理のための施設」とは、 「慰霊」を口実とした人骨研究(DNAなど)施設に他ならない。「象徴空間・作業部会」の「報告書」には、「集約した遺骨については、ア イヌの人々の理解を得つつ、アイヌの歴史を解明するための研究に寄与することを可能とすること」と明記されている。今後は国家的規模でア イヌ差別研究を大々的に行おうとしているのだ。
 政府は遺骨問題を関係大学に任せ、お ざなりでデタラメな遺骨の集約と事実上の返還拒否をもって歴史的なアイヌ民族遺骨略奪の歴史的責任の決着をはかろうとしている。
 
アイヌ民族同化・抹殺の戸籍制度と「血 族・血縁」思想を弾劾する
 さらに「ガイドライン」では、「返還 に向けた事前準備」として「祭祀承継者等の同意に基づくDNA鑑定等による確認の実施」をするとしている。しかも「関係大学に対する返還 申請」する場合は、「自己が祭祀承継者であることを示す書類(家系図、戸籍、除籍謄本等)」の提出を条件にしている。「祭祀承継者である こと」を日本の戸籍制度とそれからたどる「家系図」によって証明せよ、と言うのは許し難いアイヌ民族差別である。そもそも戸籍制度は1871年の戸籍法制定以来、大地略奪や民族名剥奪をもって、アイヌ民族の民族としての存在を否定する同 化・抹殺の一大装置である。しかも戸籍制度は「血統・血縁」思想を制度化し、民族差別などあらゆる差別を再生産する温床となってき た。「アイヌ政策推進会議」は、一貫して「誰がアイヌ民族か?」を議論してきたが、それはアイヌ民族の民族自決権に属する事柄であっ て、日本国家が云々する問題では一切ない。
 「返還」にあたって、かかる戸籍制度 とその「血統・血縁」思想を持ち込むことは、アイヌ民族に対するさらなる抑圧管理であり、断じて許すことはできない。
 もはや「アイヌ政策推進会議」が言う 「遺骨返還」などは、まったくのまやかしでしかない。「特定遺骨等」は1636体中たった23体 であり、しかも「返還」には遺族が自ら「祭祀承継者」であることを証明し、DNA鑑定までしなければならない。盗人猛々しいとはこの ことだ。事実この間アイヌ民族は各大学に遺骨と副葬品返還を求めて申し入れ行動を行ったが、すべての大学が「門前払い」であり一切話 し合いを拒んでいる。
 本来、「慰霊」と「研究」は相矛盾す る。アイヌ民族は、1980年代から北大医学部に対する遺骨返還要求の闘いや、この20年間北大 文学部人骨事件糾弾など闘いぬいてきた。真の「慰霊」とは、真相究明、謝罪と賠償の上で略奪してきたコタン(郷里)の墓地に埋葬する ことでしかありえない。
 私たちは、アイヌ民族の「同化完了」 宣言に等しい「基本方針」の閣議決定を断固として弾劾し、白紙撤回を求める。
                              以   上
 

北大糾弾ニュース・45号  2014年7月16日

集治監と囚人労働
ピリカ全国実・関西 加藤智久  
 
  北大文学部標本庫に杜撰に放置していた6体の人骨の内、現在大乗寺に仮安置されている2体の遺骨の内一体は「日本男子20才」と張り紙があった。その遺骨はおそらく獄死したものだといわれている。実際、北大は網走刑務所などと連携して多くの人骨を収集し研究材料にしている。
 北海道における集治監(刑務所)はかつて自由民権運動で弾圧された政治犯などが多く収容されている。ロシア皇太子ニコライを襲撃した津田三蔵も北海道で獄死している。
 では北海道に送られた囚人はどのように処遇されたか。1885年、伊藤博文がその知恵袋の一人である金子堅太郎を31局時代の北海道に派遣して、北海道植民地化の実情を視察させた。その報告書『北海道三県巡視復命書』がある。金子はそのなかで将来の殖民地開発に関して7項目を提言している。
 そのなかに「道路開鑿(さく)ノ議」という項目がある。殖民と開拓、生産、物流を積極的にするには道路の開削が喫緊に必要だと強調している。まずは札幌・根室間の道路開発である。ではその労働力をどのように確保するか。それは囚人を労働力として使役するというのだ。金子に囚人労働を提案したのが樺戸集治監の典獄 (所長)だった月形潔だ。「(道路開発の)困難な労務に普通の労働者を使うと、一つはその労働に耐えられないこと、もう一つは賃銭(賃金)の割合が非常に高くなる情況にあるため、札幌および根室県にある集治監の囚人を使役することだ。彼らは、もとより暴戻(悪逆非道)な悪徒だから、その苦役に耐えられず斃死しても……囚人が減れば、監獄費支出が困難である今日において、満やむを得ない政策である」。しかも普通の労働者の賃金の半額以下ですむから「これ実に一挙両全の策というべきだ」という。道路開発費用の大幅な削減も期待できると言っている。このように国策として、両足を鉄鎖で縛られた囚人は道路開削や鉄道建設に酷使され、大量の屍を山林原野にさらしたのだ。北大の人権を無視したアイヌ人骨略奪と通底する。
北大はアイヌ民族の遺骨をコタンに返せ!
 
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★北大文学部人骨事件20年糾弾!札幌集会
 7月 25 日(金)午後6時20分〜8時40
 エル・プラザ / 工芸室(JR札幌駅北口)
 基調報告:ピリカ全国実・札幌圏
 講演:三木ひかるさん(史的唯物論研究所)
       「重大局面にあるアイヌ民族遺骨返還問題
            ―民族自決権獲得のために」
 アイヌ民族などから発言
 
★大乗寺イチャルパ
 7月 26日(土)午前10時〜11
 札幌市豊平区平岸
 主催:ピリカ全国実行委員会 
 協力:北大人骨問題の真相を究明する会
 

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