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【社説】

南北高官会談 粘り強く、一歩ずつ

 約二年ぶりとなる南北の高官会談で、北朝鮮側が平昌冬季五輪への参加を正式表明した。まずは歓迎したい。粘り強い交渉で、緊張緩和につながる行動を北朝鮮側から引き出したい。

 この日の会談では、北朝鮮がどんな姿勢で臨んでくるのかに、大きな関心が集まった。

 南北会談は、ささいな行き違いからこじれることが多いが、北朝鮮首席代表、祖国平和統一委員会の李善権(リソングォン)委員長に、居丈高なところはなかった。

 逆に穏やかな語り口で、来月の平昌五輪に高官級代表団や選手団、応援団、芸術団などを送り、韓国との合同入場行進に応じる考えを明らかにした。

 北朝鮮側は、五輪参加に当たっての交換条件のようなものは示さなかったという。

 韓国側は、旧正月(二月十六日)に合わせた南北離散家族の再会行事実現も呼びかけた。

 離散家族の再会は、これまで二十回実施されてきたが、十三万人の希望者のうち、再会を果たせないまま半数以上が亡くなっている。高齢化が進んでおり、人道問題として一刻も早い実現が必要だ。

 二月十六日は五輪の開催期間中でもある。実現すれば南北の和解ムードは、さらに広がるだろう。

 ただ北朝鮮の対話姿勢が本物なのか、日米の政府内にはいまだに懐疑的な見方が多い。

 ナウアート米国務省報道官は「米韓の間にくさびを打ち込もうとしているのかもしれない」と、北朝鮮による分断工作を警戒する発言をした。

 河野太郎外相も、五輪参加を歓迎しつつも、北朝鮮に現在の軍事中心の路線変更を求める「国際社会のメッセージ」を、きちんと伝えてほしいと注文した。

 このため韓国側は軍事問題にも話題を広げ、「朝鮮半島での緊張を高める行為」を互いに中止することを提案。「非核化など平和定着のための対話」の早期再開を求めたというが、北朝鮮側から特別な反応はなかったという。

 これでは、北朝鮮が対話に応じたのは、国際的な圧力をかわすための時間稼ぎや、韓国からの支援を狙っているのではないかと疑わせる。

 このまま南北間の対話や事業をいくら進めても、問題は解決しないし、五輪終了後には、緊張が再燃してしまうかもしれない。

 韓国は、北朝鮮との交渉を急がず、姿勢を変えさせるための交渉を着実に続けてほしい。

 

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