カズレーザーの「フィクション」がネットで「リアル」になる謎

news.livedoor.com

・カズレーザーが番組で、「人を見た目で判断しないで」との声に異論を唱えた
・視覚で瞬時に物事を判断する習性は、人間の本能的なものだと説明
・真面目に思われたいなら「真面目に思われる格好をするべき」だと語った

カズレーザーが持論を展開したーとかなんとか騒がれているっぽい。
はぁ……。

こう言う話題こそまさに
「切り取られた事実だけで判断すると色々認識を誤る」
典型だと思うが。



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街ブラ

たまたま深夜にやってたのを録画で観た。
普段はフジテレビ・オン・デマンド(FOD)で放送しているものを、深夜で実験的に放送してみようということかもしれない。
この番組、前半後半の2部構成。

まず前半は街ブラ番組。
女性タレント二人組とメイプル超合金が横浜中華街を舞台に
「どちらが人気ベスト5の店を多く回れるか競う」
というベタな企画。

女性タレント二人は王様のブランチばりに食レポを挟み王道のコース。

ところがメイプルは座り込み、タバコを吸い、散髪屋で安藤なつは前髪を整え、土産物屋で帽子を買う。

しまいにはタクシーに乗って「どっか美味い店ないですかね?」とカズレーザーが聞くと運転手が「いやー、最近美味い店なんてどこにもないね」とどうしようもないことを答える始末。
スタッフが「どこかお店行ってください!」と焦るのも流すメイプルは「腹が減ったから蕎麦屋に行く」と言い出し、さすがにスタッフが制止して、中華街に引き戻す。

だが結果、メイプルはどこも回らず時間切れ。
ところが「自分が行った店」として人気店の名前を適当に書き、4店vs1店でメイプルチームの勝利。
まぁ、勝ち負けなんてどうでもいい。

メタ・フィクション

ここまででこの番組の意図が分かる方もいるかと思うが、要はこの番組
「ゲストとして登場するメイプル超合金が、ベタな企画を台無しにする」
メタな実験バラエティ。
もちろんメイプルの二人はわざと不真面目に番組をやって、台無しにするタクシー運転手も仕込みでしょう。

しゃべり場

そして話題の二部は10代しゃべり場っぽく見せかけつつ、ひたすらカズレーザーが語る。

「人を見た目で判断しないで」とのお題に対してカズレーザーが延々語り、安藤なつが一応十代に話を振ろうとするが被せて話させない。
話のキャッチボールなんてしない。
誰かが喋ろうとしたら、途端にカズレーザーが喋って話させない。

しゃべり場ではなく完全にカズレーザー独演会。
最初から最後までひたすらカズレーザーが語ることで10代しゃべり場っぽい企画をぶち壊してみせる、というフィクション。
公式サイトにも書いてある。

fod.fujitv.co.jp

今注目の芸人【メイプル超合金】がMCを務める新感覚バラエティ!
MCなのに毎回ゲストとして登場し、既存の番組ルールをぶっ壊す!?

「既存の番組ルールをぶっ壊す」
ね?
どこにも「カズレーザーが真面目に持論を語る」なんて書いてないでしょう?
モキュメンタリー*1方式なんだから当たり前ですが。

フィクションがネットでノンフィクションになる時

Livedoorニュースが悪質なのは、どこにも番組が
「メイプルの二人があえて空気を読まず企画をぶち壊すという番組である」
と書いていないところだろうか。
どこまでが台本で、どこまでがフィクションで、どこまでがネタなのかも不明確。
その辺は見る側の判断に丸投げされてる実験的番組。
視聴者のリテラシーによって見え方も変わる。

なのでこのカズレーザーが「フィクションの中で10代を一切喋らせないために」延々開陳した持論自体を大真面目に「こういう意見はー」と語るのって、果たしてどこまでフィクションなのかわからないものに対して判断を下すということですがね。

「中華街を流すタクシー運転手のくせに美味いものがないとかどういう神経してんだ!」
「どうして店回らずにこいつらタバコ吸ってんだふざけんな!」
「10代の若者に喋らせないなんて番組潰す気か!!」

と怒るのと同じ。

こういうメタな仕掛けを「言わなくても分かる人がわかればいい」番組だからこそFODや深夜帯で流してるというのに、こうやってフィクションであることも伏せて一部分だけを切り取りニュースにするんだからなんとも。

そういう意味なら現在、テレ東でやってる「MASKMEN」だって斎藤工が野生爆弾クッキーのプロデュースでお笑いに挑戦するセミフィクションですが、あれも本気で受け取ってる人がいたり。
テレビの側が期待するほど視聴者の感覚なんて鋭くない。

www.tv-tokyo.co.jp

テレビなんてクソだ、テレビなんて見ない、テレビはヤラセだ、信用できないと言いながら、ネットというフィルター越しだと流れてくるものが歪んでいても真面目に受け取ってしまう。
よく知らないし、クソならクソでスルーすりゃあいいのに。
「ネットニュースが嘘ばかり」なんてわかってるはずですが。

もちろん事実を切り取り歪んで伝えるLivedoorニュースが一番タチが悪い。
だが、見もせず詳細もわからないのに正論だなんだと語ろうとするのもどうなんですかね。
このセミ・フィクションに対してあーだこーだコメントしているうち、一体何人が番組を観て、フィクションとわかってコメントしているんだか(観たけど〜と書いてる垢が壊滅的にいないんだよな……)。
くだらないネットニュースに踊らされるんじゃないよ。

あぁ、悲しい。
とりあえず、あったかいお茶でも飲んで落ち着きましょうや。

COBRA vol.1 COBRA THE SPACE PIRATE
Posted with Amakuri at 2018.1.24
寺沢武一
エイガアルライツ

*1:POV映画に多いドキュメンタリー風フィクションを呼ぶ語