1月22日、“改憲国会”が幕を開いた。
「この国のかたち、理想の姿を語るのは憲法です。各党が憲法の具体的な案を国会に持ち寄り、憲法審査会において、議論を深め、前に進めていくことを期待しています」。安倍晋三首相は施政方針演説において改憲について多くを語りはしなかった。
しかし、会見に対する意欲をなくしたわけではなさそうだ。同首相は同日に行われた自民党の両院議員総会で「私たちはそれ(編集注:改憲)を実現していく大きな責任がある。そしていよいよ実現する時を迎えている。その責任を果たしていこう」と発言。関係者はこちらを「本音」とみる。
自民党は3月25日に予定する党大会までに党の改憲案をまとめる考え。早ければ年内に国会で発議することを目指す。
改憲の大きな対象の一つが9条になる。今のところ議論の土台となるのは、「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」という、安倍首相が2017年5月の憲法記念日に打ち上げた案だ。本稿ではこれを「安倍案」と呼ぶ。「『自衛隊は違憲かもしれない』などの議論が生まれる余地をなくす」(安倍首相)ことが狙いで、安倍首相は「国民的な議論に値するだろう」と自ら評価する。
だが、安倍案に賛意を示す声は野党からほとんど聞かれない。「神学論争」と揶揄されてきた憲法解釈が抱える問題を解決できないからだ。書きようにもよるが、「自衛隊は、9条2項で『保持しない』とする『戦力』であるのかないのか曖昧なまま」(希望の党の長島昭久・政策調査会長。野田政権で防衛副大臣を経験)残る。
行使できる自衛権が「個別的自衛権」だけなのか、「集団的自衛権」も行使できるのか、も明確にならない。集団的自衛権の限定行使を容認する安全保障法制が15年9月に成立していることから、「明記される『自衛隊』は集団的自衛権の行使をする自衛隊になる」(社会民主党の福島瑞穂・副党首)と批判する声も上がる。
この記事では、政治家はもちろん、憲法学者や国際政治学者が考える改憲案のエッセンスを紹介する。実は、安倍案以外にも様々な案が存在する。今後の議論を見守り、参加する上で、ぜひ知っておいていただきたい案だ。
だが、その前に、これらの案をよりよく理解するため、9条の政府解釈をめぐるモヤモヤと安倍案が抱える課題についておさらいしよう。
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