原著は1937年に書かれた子供向けの小説だが、そのマンガ版が本屋にたくさん積んである。宮崎駿監督が映画化するおかげで、100万部以上売れたそうだ。アマゾンではずっとベストセラー第1位で、この岩波文庫版も第10位だが、大人が読んでもおもしろくない。それは子供向けだからではなく、中身が「科学的社会主義」の絵解きだからである。
主人公コペル君が発見した「人間分子の関係、網目の法則」を、おじさんは「生産関係」のことだと解説し、「まだ人間らしい関係になっているとはいえない」という。それは(資本主義では)人々が他人のためにではなく、報酬のために働くからだ。貧しい豆腐屋の子がいじめられるエピソードは、解説で丸山眞男が指摘しているように、階級闘争の寓話である。
もちろん80年前の児童文学の「限界」を語ってもしょうがないが、吉野源三郎は戦後の平和運動のプロデューサーだった。岩波書店の『世界』の編集長として平和問題談話会や憲法問題研究会を組織し、憲法改正を阻止する上で決定的な役割を果たした。本書の「国と国が争うのではなく、すべての人がよい友だちであるような世の中が来る」という心情倫理は、いつまでも幼児のまま大人になれなかった日本の左翼を象徴している。
続きは1月29日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。
主人公コペル君が発見した「人間分子の関係、網目の法則」を、おじさんは「生産関係」のことだと解説し、「まだ人間らしい関係になっているとはいえない」という。それは(資本主義では)人々が他人のためにではなく、報酬のために働くからだ。貧しい豆腐屋の子がいじめられるエピソードは、解説で丸山眞男が指摘しているように、階級闘争の寓話である。
もちろん80年前の児童文学の「限界」を語ってもしょうがないが、吉野源三郎は戦後の平和運動のプロデューサーだった。岩波書店の『世界』の編集長として平和問題談話会や憲法問題研究会を組織し、憲法改正を阻止する上で決定的な役割を果たした。本書の「国と国が争うのではなく、すべての人がよい友だちであるような世の中が来る」という心情倫理は、いつまでも幼児のまま大人になれなかった日本の左翼を象徴している。
続きは1月29日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。