「シェイプ・オブ・ウォーター」が最多13部門で候補に 米アカデミー賞
米映画芸術科学アカデミーは23日朝、ロサンゼルスで第90回アカデミー賞の候補を発表した。ギレルモ・デル・トロ監督のファンタジーロマンス「シェイプ・オブ・ウォーター」が作品賞を含む最多13部門で候補になった。第2次世界大戦の英国兵帰還作戦を描いた「ダンケルク」が8部門、娘を殺害された母親と警察の対立を描く「スリー・ビルボード」が7部門でそれぞれノミネートされた。
英国からは、今作での引退を表明しているサー・ダニエル・デイ=ルイス(「ファントム・スレッド」)、ギャリー・オールドマン(「Darkest Hour」、邦題「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」)、ダニエル・カルーヤ(「ゲット・アウト」)、サリー・ホーキンス(「シェイプ・オブ・ウォーター」)が、それぞれ主演賞の候補となった。また、レスリー・マンビルが「ファントム・スレッド」で助演女優賞候補になった。
「シェイプ・オブ・ウォーター」からは、作品賞と主演女優賞のほか、監督賞、助演男優賞(リチャード・ジェンキンス)、助演女優賞(オクテイビア・スペンサー)、オリジナル脚本賞、作曲賞、撮影賞、衣装デザイン賞、美術デザイン賞、編集賞、音響編集賞、音響ミキシング賞で候補になった。
「スリー・ビルボード」からは、フランセス・マクドーマンドが主演女優賞、ウディ・ハレルソンとサム・ロックウェルが助演男優賞候補になった。ほかに作品賞、オリジナル脚本賞、作曲賞、編集賞でノミネートされた。
作品賞と主演女優賞(シアーシャ・ローナン)の候補にもなった「レディ・バード」のグレタ・ガーウィグ監督は、監督賞にノミネートされた。女性が監督賞候補となるのは5人目。ハリウッドにおける女性の扱いが注目されている今年の賞レースでは、ゴールデングローブ賞でガーウィグ氏が監督賞にノミネートされず、監督賞候補が全員男性だったことが批判されていた。
作品賞候補は今回9作品。少年と若い男性医師の恋愛を描いた「君の名前で僕を呼んで」、「ダンケルク」、「Darkest Hour」、「ゲット・アウト」、「レディ・バード」、「ファントム・スレッド」、ベトナム戦争の米機密文書と報道を描く「The Post(邦題「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書)」、「シェイプ・オブ・ウォーター」、「スリー・ビルボード」が、それぞれノミネートされた。
「The Post」からは、メリル・ストリープが主演女優賞候補となった。アカデミー賞候補になるのは21回目(主演女優賞は17回目)。
過去3回受賞しているストリープさんは、「報道の自由と、歴史の動きに女性の声を取り上げることの重要性を描いた映画」における自分の演技が評価されたのは、「計りがたい光栄」だとコメントした。
今年のオスカーの多様性は
2016年には俳優候補者が2年連続して白人ばかりで「#OscarsSoWhite(アカデミー賞はあまりに白い)」と非難されたアカデミー賞は、今年は女性の扱いが世界的な関心事となっているなかで、3月4日に授賞式が開かれる。
特にハリウッドの大物プロデューサーでアカデミー賞常連だったハービー・ワインスティーン氏による性的加害行動の疑惑発覚を機に、映画界における女性の賃金の不平等など職業上の差別、常習的な性的暴力の問題が浮き彫りになっている。
監督賞にガーウィグ監督が5人目の女性としてノミネートされたほか、「ゲット・アウト」のジョーダン・ピール監督が候補になり、黒人監督として5人目だと注目されている。
ピール監督はツイッターで、「ゲット・アウト」が4部門で候補になったことについて、「僕は今ただひたすら、チケットを買って、ほかの人にも買うよう言ってくれた全員のことを思っている。これは皆さんのおかげだ」と喜んだ。
また、演技部門ではアフリカ系のオクテイビア・スペンサーとメアリー・J・ブライジが助演女優賞に、同様にデンゼル・ワシントンとダニエル・カルーヤが主演男優賞に、それぞれノミネートされた。
撮影賞では、ミシシッピ州の人種対立を描いた配信サービス「ネットフリックス」の映画「Mudbound」から、女性として初めてレイチェル・モリソンがノミネートされた。
「Mudbound」で助演女優賞候補になったメアリー・J・ブライジは、歌曲賞でもノミネートされた。
女優賞の候補となった女性俳優10人のうち、8人が40歳以上。助演男優賞の候補となったクリストファー・プラマーは同部門で史上最年長の88歳。
プラマーは、少年に対する性的加害行動を糾弾されたケビン・スペイシーの代役として、急きょ撮り直された「All the Money in the World」の大富豪役でのノミネートとなった。
長編ドキュメンタリー部門候補になった「Faces Places」のアグネス・バルダ監督は89歳で、最年長のオスカー候補だろうとされている。「君の名前で僕を呼んで」で脚本賞候補となったジェイムズ・アイボリー監督も89歳だが、バルダ監督が1週間年長。
米映画芸術科学アカデミーは、賞に投票する会員の人種や性別、年齢などの構成の幅を広げて多様性を確保しようと努めてきた。それが今年の候補者・候補作品に影響した可能性はある。
ただし、今年だけでも部門ごとの候補者を男女別に見ると、多くの部門で圧倒的に男性が多いことが分かる。