最近、UIデザインのために統計やSQLを勉強する必要性を感じてきました。
今働いている事業会社のデザイナーに転職して、もうすぐ1年が経とうとしています。
そこで、一定の規模を持ったWebサービスの改善に携わってきて、気が付いたことがあります。
それは「良し悪しに関係なく、既にリリースしてしまったものを根本的に変えるのは難しい」ということです。
どう見ても邪魔なバナーについて
極端な話をすると「どう見てもユーザーにとって邪魔なバナー」なども例外ではありません。
例えば、ユーザーが現在行なっている操作と全く関係のない文脈で、突然モーダルウィンドウで表示されるバナーがあったとします。
そのバナーは全てのユーザーに、しかも上記のように目立つ形で表示されるわけですから、一定数のコンバージョンには寄与するでしょう。(もちろんパフォーマンスは悪いと思いますが)
しかし、そのバナーはどう見ても邪魔なバナーなわけですから「このバナーはユーザーの行動を阻害するので、文脈に合ったエリアに移動させるか、いっそのこと削除しましょう」と声を挙げたとします。
すると「しかし、このバナーは一定のコンバージョンを発生させてしまうので、消すのはちょっと…」という反論が持ち上がるかもしれないのです。
UIデザインの因果関係と相関関係
このような形で、どう見てもユーザーにとっては良くないのに、残ってしまっているUIデザインは世の中に一定数あるのではないでしょうか。
また、UIデザインの評価方法が成熟していない組織の場合、前述したような「どう見てもユーザーにとって邪魔なバナー」すら正しいと評価される可能性があります。
コンバージョンしているから、このUIデザインは正しい…というわけです。しかし、当然このような因果関係として捉えるのは間違っています。
ユーザーの行動を阻害してまで目立つようなところにバナーを表示するから、コンバージョンが発生するのです。それは、ある意味当然と言えることでしょう。
このように、UIデザインの因果関係と相関関係については、間違った見方をしないように気をつけなければなりません。
UIデザインのために統計やSQLを学ぶ必要性
前述したバナーの話は、分かりやすくするための極端な例として取り上げましたが、実際の現場ではもっと難しい問題が溢れていると思います。
例えば、もっと使い勝手を改善するために、あまり使われていない機能を削除してブラッシュアップしたいという場合があります。
このとき、あまり使われてなさそうな機能であっても、リリースしている以上はそれを利用しているユーザーは存在するわけです。
こうした時、デザイナー自らがSQLを叩いて調査することができれば、その定量データをもとにUIデザインの根拠とすることができます。
実際にその機能を利用しているユーザーがどれくらいいて、それはどんな属性のユーザーで、どれほどの影響範囲があるのか。(ここまで調査するのは大変だと思いますが)
サービスの立ち上げ期であれば、デザイナーに求められるのはスピーディーにデザインすることかもしれません。
しかし、サービスを伸ばしていく時期であれば、こうした定量データを扱えることも大きな武器になるのではないでしょうか。
数字を見るリテラシーも必要
タイトルに「統計やSQLを勉強する必要性…」と書きました。
SQLはデータを取ってくるために必要になるとして、「統計」と言葉を分けて書いたことには理由があります。
必要なデータを取ってくる力と、それを解釈する力は全く別物だからです。
そのあたりの話は、下記の本を読んで知ることができました。
- 作者: 西内啓
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統計学の概要だけでも軽く勉強して、身になった考え方がありました。
それは、数字で示されたデータというのは一見すると事実っぽく見えますが、「評価者のバイアスが色濃く反映されている」ということです。
数字そのものは、当然ながら1つの事実です。
しかし、こうした定量データを拠り所に何か仮説を立てる場合、そこで必ず「その定量データをどう見るか」という解釈が加えられることになります。
よって、数字を見るリテラシーが無ければ、前半に述べたような「どう見ても邪魔なバナー」すら良いものとして評価されてしまいます。
おわりに
最近ぼんやりと考えていたことを言語化してみたのですが、転職する前と現在で、状況が変わったことも影響している気がしました。
前の会社では、ただ「作ること」を求められていましたが、事業会社では「成果を出す」ことが求められます。
作ることを求められている場合は、 拠りどころになるのは、あくまでも定性的な意見だけでした。
しかし、成果を出すことを求められている場合は、定量データから正答率の高いUIデザインを導き出すことが必要になります。
まだぼんやりとはしていますが、データに強いデザイナーに近づけるよう頑張っていきたいと思います。