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 今現在、種子法廃止デマ拡散の急先鋒となっているのが三橋氏だと思われますが、そのデマの発信元、震源地はこの人なのではないかと思う。

 それは元農水大臣の山田正彦氏です。

山田正彦 日本の農業はモンサントに支配される

http://gekkan-nippon.com/?p=12947

『 日本のおコメが消える日が近づいています。おコメのタネを守ってきた「主要農作物種子法(種子法)」が4月に廃止されるからです。種子法がなくなれば、やがて日本のおコメの値段は10倍にもはね上がり、味が不味くなり、種類が減り、やがて市場から姿を消していくことになるでしょう。

 ところが、種子法廃止の危険性について大手メディアはほとんど取り上げていません。また、国会議員も一部の方々を除き、ほとんど危機感を持っていません。

 ここでは、弊誌2月号に掲載した、元農林水産大臣の山田正彦氏のインタビューを紹介したいと思います。また、弊誌は種子法廃止の危険性を訴えるべく、月刊日本2月号増刊「日本のお米が消える」を出版いたします。併せてご一読いただければと思います。(後略)』

 種子法が廃止されたらコメの値段が10倍にって・・・、一体どのような試算をすればそのような値段になるのか全くもって謎です。

 

 で、この人例に漏れず外資ガー、モンサントガーって言ってるわけなのですが、三橋氏同様に国内の種子メーカー(種苗企業)の存在については一切語らないんですよね。

 試しに三橋氏のブログをブログ内検索で日本の種苗メジャー企業である『タキイ』『サカタ』の名前を検索してみましたが、全くヒットしません。

 

 彼ら、種子法廃止反対派の頭の中には国内の種苗メーカーは存在しないことになっているんでしょうか?

 

 いや、そんなことはありません。意図的に無視しているだけなんです。

 その事が山田氏の記事の以下の一文に表れています。

 

『 ここでいう「外国投資家等」の中には、グローバル種子企業のモンサント社やシンジェンタ社が含まれています。彼らは20年前から日本の種子市場を狙っていたのです。すでに野菜のタネはそれら多国籍企業に支配されています。30年前まで野菜の種子は全て国産でしたが、今では90%以上が外国産です。』

 

 国内の野菜の種子は今では90%が外国産。

 はい、これ言ってることは間違いじゃないです。でも、この文章の前フリでモンサントの名前を出しているから、この記事を読んだ人はきっと野菜のタネも外資に支配されているんだと勘違いしてしまうでしょう。

 

 でもね。海外から野菜の種を供給しているのはモンサントなどの外資ではなくて、実は日本の種子メーカーなんです。

 

種苗をめぐる情勢

http://www.hinsyu.maff.go.jp/pvr/jyousei/jyousei.pdf


この農水省の資料の2ページ目

『野菜の種子は、我が国の種苗会社が開発した優良な親品種の雄株と雌株を交配することでより優良な品種が生産されるが、この交配の多く(約9割)が海外で行われているこれは、①多種多様な品目の供給が必 要となる野菜の種子を安定的に生産する必要性や、②一般に、作物は原産地に似た気候で育てた方が良 質な種子ができること等が大きな理由である。』

 我が国の種苗会社・・・つまり、タキイ種苗とサカタのタネ等の日本種苗メーカーですね。

 つまり山田氏が言っている野菜の種子の90%が外国産というのは、日本の種苗メーカーが海外で生産したものという事になります。

 

 確かに外国産ではあるんだけど・・・これはかなり悪質なミスリードですね。意図的なものを感じます。

 よく考えてみればホームセンターなどで、サカタのタネはよく見るんですが、モンサントのタネは見たことがありません。

 というかそもそも輸出も結構あるじゃないですか・・・。

 

 日本の種苗メーカーはとある理由により、穀物の種子についてのシェアは海外メジャーに遠く及ばないものの、野菜の分野では世界で17%のシェアを確保しています。

(そもそも世界で17%のシェアを取れる日本が、外資に野菜の種を9割以上頼っているワケがない)

タキイ種苗株式会社 業界の構造

http://takii-saiyo.com/business/index.html


 あの巨大なモンサント(今はバイエルですか)を相手に、かなり健闘していると思うんですけどね。

 

種苗業界の勢力図

http://globe.asahi.com/feature/081103/02_3.html


このグラフを見ても、穀物を除けば、日本の種苗企業のシェアは、海外主要メーカーに引けを取っていません。

 しかも日本の種苗会社。業績好調のようです。

 

日本の野菜種子は、なぜ海外でウケるのか

サカタのタネが170カ国以上で売れる秘密

http://toyokeizai.net/articles/-/66055

 

種苗業界に追い風、サカタのタネが過去最高益

http://president.jp/articles/-/21263

 

で、このように海外の市場を席巻している日本の種苗企業が、なぜコメを始めとした穀物についてシェアを拡大することができなくなっているのか・・・。

その原因は以前のエントリーでも書きましたが、

『種子法』にあるわけです。

 

種子法は、都道府県が責任を持ってその地域にあった品種を育てて、その種子を供給する義務を負わせたもので、これが民間の種苗企業のコメへの参入を防ぐ、新規参入障壁となっていました。

だから、タキイやサカタのタネを始めとした国内種苗企業は、野菜や花の種子を中心に研究開発を行うようになったというわけですね。

 

前回のエントリーの繰り返しになってしまいますが、

 

 この種子法ができたのは昭和27年。当時はまだ国内外の種子メーカーの技術レベルが低く、長い研究が必要な種子の改良ができる体力があまりありませんでした。だから公的機関が主導して種子の管理を行って種子を供給する。そのための法律だったのだと思います。

 でも、現在では状況が変わって、日本の民間の種苗メーカーでも十分種子の管理、開発研究が可能になった。それどころか日本の民間種苗メーカーは世界の市場を席巻するまでに大きくなっている。

だから、既に役目が終わり、日本の種子メーカーの活動を阻害しているこの法律を廃止し、民間主導で市場のニーズに対応できる競争力のある種子を開発しよう。

 と、今回の種子法廃止の背景はそういうことだと思います。

 

 サカタやタキイが海外に進出しているのも、国内では種子法という壁があるため、これ以上国内でシェア拡大が見込めないからだということが、理由の一つとしてあります。

 ・・・正確にはこの種子法が民間の企業を規制しているわけではないのですが、奨励品種として採用される品種に民間の品種が選ばれたことは一度もないとのこと。

 当然、農家は都道府県が定めた奨励品種を買って栽培することになります。まあ、お墨付きがついている様なものだから当然ですね。モンドコレクション金賞! みたいな感じです。だから、事実上の民間参入障壁となっていた。要するに奨励品種が利権化しているわけです。

 

 それにしてもなぜ山田氏、三橋氏を始めとした種子法反対論者は、日本の種苗メジャーを無視するのでしょうか?

 なぜ日本の種苗企業を育てて、そのモンサントに対抗しようという発想にならないのか? 理解に苦しみます。

 

 それに、種子法が廃止されたからといって行政の種苗供給がなくなるわけではありません。外部の競争にさらされて、さらなる良質な品種を開発すればいいだけの話ではないでしょうか? (まあ、それだとこれまで培ってきた利権が消えてなくなってしまいますけどね)

 そもそも10倍の値段の、味が不味い種子なんか農家に売れるわけがないじゃないですか。山田正彦氏は市場原理すら理解していないんでしょうかね?

 

 というか、今回の山田氏の記事を見てはっきりとわかりました。氏にとって日本の種苗企業もモンサントと同様に排除すべき存在なのだという事。

 それから、氏が守りたいのは日本の農業なのではなく、種子法で守られた日本の種子行政利権なのだという事。

 

「国内の野菜の種子は今では90%が外国産」 ←この表現は明らかに恣意的過ぎでしたね。デマもいいところです。

 

 もう既に役目も終えて、日本の種苗企業の足枷にしかなっていない種子法はさっさと廃止すべきです。

 

 種子法廃止のデマについてはいすさんが分かり易くまとめています。

種子法廃止についてデマや勘違いを解説します

https://togetter.com/li/1191808

 

 種子法廃止はモンサントに日本の農業を明け渡すわけでも何でも無く、日本の農業の枷を外し、市場のニーズに合った品種を開発し、農家の収入を増やし、日本の農作物の輸出攻勢をかけていくために必要な措置だと思います。

 デマには騙されないように気をつけましょう。

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