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[C.R.A.C.NORTH]「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案」及びその附帯決議とアイヌ民族へのヘイトスピーチに関する緊急声明

2016年4月29日
 

2016年4月27日、自由民主党・公明両党と民進党との修正合意を踏まえ、与党が提出したヘイトスピーチ対策法案「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案」(以下「本法案」という)が今国会で成立する方向となった。与党がヘイトスピーチの対処を課題とする姿勢を示したことは高い評価に値する。

しかし、本法案がヘイトスピーチの定義を「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」と人種差別撤廃条約よりも不合理に限定したことは憂慮に値する。したがって現在、各紙で報じられているように、附帯決議に「あらゆる形態の人種差別撤廃に関する国際条約の精神に鑑み適切に対処する」「(定義)以外のものであれば、差別的言動が許されるとの理解は誤りであり、許されないものがあることを踏まえる」と明記され、ヘイトスピーチの対象に「著しく侮辱する」行為も法案部分に加えて修正されることを歓迎する。

本法案をさらに実態に即したものにするため、私たちC.R.A.C. NORTHは、以下の3点の修正を強く要望する。

1. 本邦外出身者以外の者に対するヘイトスピーチも本法案の本文において適用対象とすべきである。とりわけ日本の先住民族であるアイヌ民族が被差別当事者であるということを本法案の本文において明記することを要望する。

2.本法案を人種差別撤廃条約及び先住民族の権利に関する国際連合宣言に鑑みて定め、それを本文に明記するよう求める。

3.同審議またはラジオ放送で与党議員はアイヌ民族が本法案の対象となるための「立法事実を把握していない」と答弁してきた。以下、記すようにこれは事実ではないが、どうしても「立法事実を把握していない」という理由から本法案本文にアイヌ民族に対するヘイトスピーチを対象に定められないということになるのであれば、附帯決議に「(定義)以外のものであれば、差別的言動が許されるとの理解は誤りであり、許されないものがあることを踏まえる」と明記することにとどめず、2008〜2009年を境に行われてきたアイヌ民族に対するヘイトスピーチの実態調査をし、今後本法案本文に盛り込む約束を附帯決議に記述することを要望する。

アイヌ民族へのヘイトスピーチ対策の必要性

以下、法的根拠及び実態について述べる。

I. 法的根拠

 i. 人種差別撤廃条約と人種差別撤廃委員会の最終見解 ⑴

 ii. 人種差別撤廃条約と人種差別撤廃委員会の最終見解 ⑵

 iii. 先住民族の権利に関する国際連合宣言

 iv. 人種差別撤廃条約と「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」報告書

II.  実態

 v.  アイヌ民族に対するヘイトスピーチの立法事実の事例

 vi.  公人によるアイヌ民族へのヘイトスピーチについて

I. 法的根拠

i.人種差別撤廃条約と人種差別撤廃委員会の最終見解 ⑴

今回の与野党両方のヘイトスピーチ対策法案の主要なきっかけとなったのは、2014年8月28日に採択された人種差別撤廃委員会の日本国に関する最終見解である。特に最終見解における「ヘイトスピーチ及びヘイトクライム」をめぐる勧告だった。この勧告におけるヘイトスピーチ及びヘイトクライムの対処措置の対象として喚起されているのは、「人種差別的ヘイトスピーチやヘイトクライムから保護する必要のある社会的弱者」であり、先住民族であるアイヌ民族はこれに該当する。アイヌ民族は勧告中のa(「憎悪及び人種差別の表明、デモ・集会における人種差別的暴力及び憎悪の扇動」)b(「インターネットを含むメディアにおけるヘイトスピーチ」)d(「ヘイトスピーチを広めたり、憎悪を扇動した公人や政治家」)の被害を特に受けてきた。

参考:

人種差別撤廃委員会 日本の第7回・第8回・第9回定期報告に関する最終見解:http://www.moj.go.jp/content/001165926.pdf

ii.人種差別撤廃条約と人種差別撤廃委員会の最終見解 ⑵

人種差別撤廃委員会の日本国に関する最終見解には、アイヌ民族の権利に関する勧告もある。勧告のbは「雇用、教育そして生活水準に関して、アイヌの人々とそれ以外の者の間で依然として存在する格差を減らすために講じられている対策の実施を強化、加速する」という内容である。社団法人北海道ウタリ協会(当時)の1984年5月27日の総会において可決された「アイヌ民族に関する法律(案)」は、当初からアイヌ民族の間で広く支持され、その後の制定運動において、アイヌ民族の集団としての自己認識は明確に証明された。同法案第1条の「基本的人権」は、この格差の原因の一つとして「アイヌ民族は多年にわたる有形無形の人種的差別によって教育、社会、経済などの諸分野における基本的人権を著しく損なわれてきた」と明記している。したがって、アイヌ民族をヘイトスピーチ対策の対象とすることは、「人種差別的ヘイトスピーチやヘイトクライムから保護する必要のある社会的弱者」に対するヘイトスピーチ対処のみならず、アイヌ民族の権利に関する勧告への対応にも該当する。

参考:

人種差別撤廃委員会 日本の第7回・第8回・第9回定期報告に関する最終見解:http://www.moj.go.jp/content/001165926.pdf

iii.先住民族の権利に関する国際連合宣言

2008年6月6日に発表された「アイヌ民族を先住民族とすることを求める国会決議に関する内閣官房長官談話」において、日本政府は「アイヌの人々が日本列島北部周辺、とりわけ北海道に先住し、独自の言語、宗教や文化の独自性を有する先住民族であるとの認識の下に、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」における関連条項を参照しつつ、これまでのアイヌ政策をさらに推進し、総合的な施策の確立に取り組む」と約束した。これはまた、「アイヌの人々が民族としての名誉と尊厳を保持し、これを次世代へ継承していくことは、多様な価値観が共生し、活力ある社会を形成する『共生社会』を実現することに資するとの確信のもと」になされた談話だった。アイヌ民族に対するヘイトスピーチ及び民族的アイデンティティを奪うような差別扇動表現は、このような民族としての名誉と尊厳を傷づけるものにほかならない。

したがって、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」の第8条(「同化を強制されない権利」)第2項aは国が「独自の民族としての一体性又はその文化的価値若くは民族的アイデンティティを奪う目的又は効果を有するあらゆる行為」、第2項eは国が「先住民族に対する人種的又は民族的差別の助長又は扇動を意図するあらゆる形態の宣伝」の防止及び救済のための効果的な措置を講じなければならないと定めている。これは、まさに先住民族に対するヘイトスピーチ(差別扇動表現)対処措置の必要性を謳っている国際条項にほかならない。なお、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」は国連総会において、国連加盟国の圧倒的賛成によって批准され、先住民族政策の国際標準であり、日本国憲法第98条2項は日本国が締結した条約及び確立された国際法規は誠実に遵守することを必要としている。

参考:

「アイヌ民族を先住民族とすることを求める国会決議に関する内閣官房長官談話」:

http://www.kantei.go.jp/jp/tyokan/hukuda/2008/0606danwa.html

先住民族の権利に関する国際連合宣言:

http://www.un.org/esa/socdev/unpfii/documents/DRIPS_en.pdf

日本語:http://www.cais.hokudai.ac.jp/archive/pdf/indigenous_people_rights.pdf

iv.人種差別撤廃条約と「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」報告書

現在のアイヌ政策の根底にある2009年7月に提出された「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」報告書も「今後のアイヌ政策のあり方」において人種差別撤廃条約を言及している。人種差別撤廃条約第2条第2項は、「締結国は、状況により正当とされる場合には、特定の人種の集団又はこれに属する個人に対し人権及び基本的自由の十分かつ平等な享有を保障するため、社会的、経済的、文化的その他の分野において、当該人種の集団又は個人の適切な発展及び保護を確保するための特別かつ具体的な措置をとる」ことができると明記している。したがって、日本国民であり、本邦外出身者ではないアイヌ民族に対する不特定多数に向けたヘイトスピーチを防止する対策は、 日本国憲法第14条の平等原則に相反しない。

参考:

アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会 報告書:

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainu/dai10/siryou1.pdf

II. 実態

v.アイヌ民族に対するヘイトスピーチの立法事実の事例

アイヌ民族に対するヘイトスピーチの立法事実、つまり法律をつくるための社会的な事実関係は存在する。「在日特権を許さない市民の会」(通称:在特会)を始めに、いわゆる行動する保守グループは、少なくとも2008年〜2009年を境に、アイヌ民族をターゲットの一つとして取り上げてきた。この2008年〜2009年の境目が原因となったのは、2008年の「アイヌ民族を先住民族とすることを求める国会決議」可決後、以前からあったアイヌ民族に対する歴史修正主義の本などが一部の言論紙の論者や漫画家によって再普及されたことにある。

参考:

別紙:「アイヌ民族否定論 代表的な文献リスト」。

例1:2009年7月5日に、「在日特権を許さない市民の会」北海道支部は北海道立道民活動センター・かでる2.7を会場とし、「アイヌ問題を考える」と題した講演会を開催した(講演者:鎌田宮司氏、的場光昭氏【資料1】)。講演会終了後、主催者と来場者数名が同建物7階に所在する公益社団法人・北海道アイヌ協会の事務所に侵入を試みたが、休日のため事務所には入れなかった。

【資料1】

講演会:アイヌ問題を考える。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm8407159

http://www.nicovideo.jp/watch/sm8407719

例2:2014年8月22日、公人による「アイヌ民族はもういない」発言(以下6を参照)の11日後、「在日特権を許さない市民の会」初代会長・桜井(高田)誠によるネットラジオ番組「オレンジ☆ラジオ」第40話「同和利権とアイヌ利権と在日の話」(【資料2】)を放送し、中ではアイヌ民族の方が全員「自称アイヌ」であり、在日朝鮮・韓国人が利権を受けるためにアイヌ民族になりすましている「ザイヌ」だというアイヌ民族のみならず、在日朝鮮・韓国人への差別を煽る発言があった。

【資料2】

「オレンジ☆ラジオ」第40話。

https://www.youtube.com/watch?v=FPrJGWNXmRo

例3:2014年11月8日、アイヌをターゲットに入れたヘイトデモが銀座で行われた(【資料3】【資料4】)。当日、デモが行進する外堀通り付近にある公益社団法人・アイヌ文化・研究推進機構のアイヌ文化交流センターで親子のアイヌ語教室が行われ、授業の終了時間がデモの時間と重なった。参加者は帰りの際にデモと接近しないため地下道を利用した。なお、デモの集会挨拶及びデモ行進中では「アイヌの捏造」「純粋なアイヌという方はいない」「アイヌの差別があったと捏造している」「アイヌ協会から予算が出ているらしいバカどもを日本から叩き出せ〜」「アイヌ差別をつくる、日本人の税金にたかる自称アイヌを許さないぞ〜」などという、アイヌ民族であれば「利権」や「不正」を働く者であると扇動する中傷が行われた。

これまでも他の行動保守グループ(日本のため行動する会(日行会)、あさひかわ保守政策研究会、自主憲法を願う道民会議など)のアイヌ民族否定関連イベントに在特会北海道支部のメンバーは参加し、街宣にもアイヌを取り上げてきました。また、近年での公人によるアイヌ民族否定発言が相次ぎ、早晩アイヌに対するヘイトデモがあってもおかしくない状況が依然として続いている。

【資料3】

2014年11月8日、銀座のヘイトデモ。

https://www.youtube.com/watch?v=R5MVr4ieQzQ

(07:55より)

https://www.youtube.com/watch?v=NhdspSiG8e8

https://www.youtube.com/watch?v=EReBjCM8utc

https://www.youtube.com/watch?v=ErUzQP2Cxj4

【資料4】

別紙:「2014.11.8、アイヌ民族を狙い撃ちに入れたヘイトデモについての「親と子アイヌ語講座」

講師の証言」。

東京新聞2014年12月24日「反「差別」声上げる時 「アイヌ」ヘイト頻発」。

例4:アイヌ当事者に対するネットでのヘイトスピーチも深刻な問題である。当事者に対して「アイヌ民族はいない」「自称アイヌ」「DNA鑑定をしろ」などという中傷的な民族否定発言及び民族的アイデンティティを奪うような発言が日々行われている(【資料5】)。以下はSNS

などで書き込まれた短時間に収集したサンプルである:

「朝鮮人・アイヌは日本から出て行け!」

「アイヌを殺せ(今日3回目)」

「現代の自称アイヌの正体も、和人がアイヌの衣装を着て写真撮ってるだけですよ」

「アイヌ人?いねーよ笑 偽物ばっかりや」

「日本の中で日本人として生きてるし、おいしいとこだけ持っていきたいだけのヤツが民族だーって騒いでるだけじゃん」

「今後アイヌのことはどんどん差別してあげるべきです。差別されてるアイヌが好きな人達と、悲劇の主人公としてお金の欲しい乞食」

「アイヌの定義が曖昧で、在日左翼の支援金利権に」

アイヌに対するこうしたヘイトスピーチ(差別扇動表現)はインターネット中心のものが目立つが、これらは上記の各条項において、適切な措置をとることが求められている。

【資料5】

別紙:2016年4月19日 北川かおり氏、参議院第1議員会館院内集会「今こそ人種差別撤廃基本法の実現を」Part 4での発言。

北海道新聞朝刊2016年4月20日「ヘイトスピーチ法でアイヌ民族差別も規制を、東京の北川さん訴え」。

東京新聞朝刊2016年4月28日「アイヌへの中傷 野放し?ネットで横行「不安現実に」。

vi.公人によるアイヌ民族へのヘイトスピーチについて

2014年8月11日、金子快之(やすゆき)元札幌市議会議員は、インターネット上で「アイヌ民族なんて、いまはもういないんですよね。せいぜいアイヌ系日本人が良いところですが、利権を行使しまくっているこの不合理。納税者に説明できません」と書き込んだ。この発言は、自らを「アイヌ民族」として自認している人々に対して、その自尊心や民族としての名誉と尊厳を傷つける差別的表現であるとともに、社会の公正さを毀損するものだった。ある民族に対して「帰れ」「出て行け」「良い◯◯も悪い◯◯もぶち殺せ」「汚い◯◯」だけが差別的表現ではない。ある民族が存在しているにもかかわらず「もういない」と言うことも差別である。さらに「利権を行使しまくっているこの不合理」という文章は、アイヌ民族が不当な利権を享受しているという意味になる。どのような集団においても少数の不正行為が発生してしまうとは言うまでもないが、この文章はそのような不正を行う個人の問題を、アイヌ民族全体の資質としてとらえる、まさに民族差別が典型的に現れた差別表現である。

この発言はインターネット上のアイヌ民族に対する民族的アイデンティティを否定する発言やヘイトスピーチを多く扇動した。マスメディアにおいても大きく取り上げられ、社会問題化していった。なお、菅内閣官房長官及び高橋はるみ北海道知事は金子元市議の発言について、記者会見で「遺憾」の気持ちを述べた。金子元市議に対する議員辞職勧告決議が札幌市議会で可決され、議員辞職勧告決議の提案理由において大嶋薫札幌市議会議員は、「差別の再生産をやめようと言いながら、アイヌ民族に対する憎悪や差別を煽動しているのは、金子議員自身」であると説明した。ヘイトスピーチが憎悪表現、あるいはより的確には差別煽動表現と訳されるとおり、これは実質的に札幌市議会が、金子氏の一連の発言をヘイトスピーチであると指摘しているものといえる。さらにこれまで札幌市議会で可決された議員辞職勧告決議は刑事事件の立件を理由としたもののみであり、金子氏の発言がこれらと同等の重みを持って受けとめられたとみなすことができる。 

このような公人による民族差別の扇動発言によって、アイヌ民族のインターネット上のヘイトスピーチが爆発的に増加し、上記の(v)で述べているように、この発言をきっかけに多くの「行動する保守」がアイヌ民族を取り上げるようになり、民族的アイデンティティの否定と差別扇動を始めた。

以上


※声明全文と資料PDF

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