衛宮の野望 -調略編-


「ちょっとーこら桜ちゃん! これはいったい何の真似ー?!」
 わたしの目の前で、黒ずくめの人影が身をよじって叫んでいます。
 彼女の全身を余すところなく覆っているのは、肌にぴったりと密着した皮製のボンデージスーツ。その目にはしっかりとアイマスクが掛けられてます。漆黒の人型の中にただ一箇所存在する顔の白さが、いやがおうにも見る者の目をひきつけて離しません。
 黒という色の特性なのか、薄闇の中にくっきりと浮かび上がる先生の体の線は本当に綺麗なもの。思わず感嘆のため息が口を突いて出てしまうくらい。
 ライダーほどの神がかったプロポーションの良さはありませんけど、女性としてはかなり高い背に、よく引き締められた肉付きがとっても女らしい。私やライダーよりは小ぶりですが、それでもしっかり存在を主張している二つのふくらみは、男の人の目をひきつけること疑いなし。
 いつもゆったりしている服や胴着を着ているせいで気づかなかったんですが、藤村先生、実はとってもスタイルよかったんですね。ちょっとびっくりです。
 そんな健康的な色気を、無理やりに黒のボンデージに押し込めてしまってる。その腕を天井に吊り上げて、両の足には軽い枷。
 活発に飛び回る野生動物を、無理やりに檻に押し込めてしまった感じでしょうか。でもその事がさらに秘められた魅力を引き出したのか、女のわたしの目から見ても今の姿はとっても扇情的です。
 緊張か、あるいは恐れなのか。細かくわななくその唇はどこか被虐的で、思わずそこに向かって指を伸ばしていました。紅を引くように薄く、その唇を撫でさすると、ぴくんと震えた感触が伝わってきます。
「ひっ!」
「よく似合ってますよ、先生。とっても綺麗。姉さんとか、セイバーさんとかにも見せてあげたいくらい」
 その口元から漏れた引きつった息に、そっと優しい声で答えてあげます。
 だって、先生の魅力を引き出すことが目的ですから。怯えさせるつもりなんかありませんし。
 もっと、先生にも楽しんでもらいたい。
「それだったらこの目隠し取りなさい! それに腕を解いて! 自分が何をやってるかわかってるの?!」
「ええ。先生を軽く拘束して、その姿を眺めてます」
 そのまま腕を伸ばして、先生の肢体を軽く抱きしめます。身長差があるから、どっちかというと抱きつくという感じですけど。
「ひぃあっ」
 やっぱり先生ほどの人でも、見えないというのは怖い事なんでしょう。まるで小動物のように体を震わせて、何とか拘束から逃れようと身を捩じらせてます。
 ああ、そんなに怯えないでください。その様は、逆に見る方としては興奮してしまいますから。
 背に回した右手をゆっくりと撫で下ろします。最初は子供をあやすようにゆっくり、暖かく。手の平全体を使って。二度三度それを繰り返したら、今度は徐々に指を立てていって。薄く浮き出た背骨のラインに沿うように指の腹を滑らせます。
 伝わってくるのはレザーの触感だけど、生地はとても薄いですからこの柔らかさは藤村先生の体そのもの。ただ柔らかいだけじゃなくて、しなやかな弾力が私の指を押し返してきて、ただ撫でているだけなのにとても楽しい。
「桜ちゃん、止めてっ! くすぐったい、から」
「駄目です。止めてあげません」
 こんなに楽しい事をやめる事なんか出来ません。
 もう片方の手で、先生の頬を軽く撫でさすった後、やっぱり指を立てて、下へ、下へと。
 首筋を行きつ戻りつ、鎖骨のくぼみをくるくる回って一休み。
「はぁう……」
 指が止まって、そして動き始める度に堪えきれない吐息をもらすのを見ると、相当に敏感みたいです。指がこの先に進んだら、一体どうなってしまうんでしょうか。早速確かめてみましょう。
 中指と人差し指を尺取虫の様に動かして、緩やかな二つの山の頂を目指します。でも足元がふかふか柔らかくて、この虫はなかなか先に進めません。ああ、また足を取られて地面に沈み込んじゃいました。
「ああぅ、もう、止めて……本当にやめなさい! 今なら何にも言わないから……」
 口元を捩じらせてかすれた声でそう言ってくるけれど、虫には耳がないから先生の言葉は聞こえないんです。それにほら、ようやく頂上が見えてきましたし。
 黒いレザーを押し上げて、ぷくりと膨らんでる山の頂。たどり着いた嬉しさで思わずそこに向かって飛び込んじゃいました。
 こり、と固い感触が指に伝わってきて、それがずぷっと沈み込んでいく。先生のおっぱいが女らしくて豊かだって証拠ですよね。
 もちろん右手も休んではいません。背のラインに沿って滑るように下に。まろみのあるおしりのラインに沿って上がって、そのまま谷間に滑り込ませます。
「止め……止めてお願い……」
 あらら。
 水が染み出る素材じゃないのですけど、そこに篭った熱のせいで、わたしの指までねっとり蕩けてしまいそう。
 たったこれだけの事で、先生ったらスーツの中をぐっしょりにしてしまってるみたいですね。
 普段の元気の良い、健康的な藤村先生とは違う、とっても女らしくていやらしい姿。
 本当に、可愛らしい。
「先生ったら、わたしの指でこんなに気持ちよくなってるんですね」
 爪先立ちで耳元に口を伸ばして囁くと、指を少し戻して、谷間の奥へ進めます。
 そこは先生の恥ずかしい所。おしりの穴のある辺り。
 もちろんそこもしっかりレザーのパンティで覆われてますけど。でも生地はとっても薄いんです。だから。
「ひぃあぅ! 駄目、そこは駄目……桜ちゃんやめなさい!」
 指で突付けばしっかりと感触が伝わりますし、こうして穴の周りを撫で回してあげれば、鈍い快楽がじんわりと伝わっていく筈。
「先生? こっちを弄られるのは初めてですか?」
 とたんに頬を赤らめて、黙ってしまいました。沈黙は肯定の証ですけれど、さてどっちの肯定でしょうか?
 教えてくださりませんから、仕方ないのでこっちに聞くことにします。指に少し力を込めて、布越しに解きほぐすようにぐりぐりと。
 その度に、びくりと体を震わせる先生がとっても初々しい。
「せんせい? 教えてくれないと? もっと続けちゃいますよ?」
 左の虫は果実を見つけてむしゃぶりつこうと。右の虫は巣穴を見つけて潜り込もうと。だけど布に阻まれて、それでもあきらめずに何度も何度も繰り返し。
 その度に、身を捩じらせて体を震わせて。先生ったら回りが見えないから、体中がもうむき出しの神経みたいになってしまってる。
「……じめてよ……」
「はい?」
「初めてよ! こんな風に後ろを弄られたり! 吊られたりするの初めてよ! どうして?! どうしてこんな事するのよ桜ちゃん!」
 つんと耳に突きぬける先生の叫び声。その勢いに思わずのけぞってしまった私の目に写ったのは、アイマスクの隙間から伝わる二筋の水滴。
「嫌いなら嫌いって言ってくれればいいのに! こんな事までされて、何で、何でなのよ……」
 雫は支流となって、そしてとめどなく流れ出してしまって。ぬぐえぬ涙をそのままに、私のいるであろう方向に吼える先生。
 だけどすぐにその体から力が抜けてがっくりと項垂れてしまいました。
 ……泣かせてしまいました。
 本気で、泣かせてしまいました。
 そんなつもりはなかったのだけれど。確かに先輩を手に入れるために今利用しようとしてますが、先生を嫌う気持ちなんてありません。
 ただ、わたしは先生の可愛い姿を引き出したいだけでしたのに。
 だから、誤解は解かないと。
 わたしの気持ちをしっかり伝えないといけません。
 うなだれる先生の体を包み込むように、そっと抱きしめます。淫猥な欲望など込めずに、ただそっと、慈しむように。
 ふるえる腕を、肩をそっと撫でて、伝わる涙をそっと唇でぬぐいます。
「大好きですよ、先生」
 そう耳元に囁いて、ゆっくりと抱く腕に力を込めます。栗色のショートヘアに手を伸ばして、ゆっくりと二度三度指で梳いて。嘘などないと、体で知ってもらうために。
「わたしは、先生のことが大好きですよ。ただ、先生が自分では気付けないことを知ってもらおうとしてるだけです」
「……なら、どうしてこんな事するのよ」
 ポツリと呟かれた言葉に答えるように頬を寄せて、
「先生に、もっと魅力的になってもらいたいからです。それにはこれが一番いい方法ですから」
 本当はもっと良い方法があるかもしれませんけど。でも、わたしも楽しいですし、先生も気持ちよくなれる。
 悪い方法じゃありませんよね?
「だから、今だけはわたしに任せてください、先生。とても可愛く、変えてあげますから」
「それならせめて縄をほどい……」
 皆まで言わせず、背中を撫で回していた手をするりと降ろして、皮生地越しに先生の女陰に向かって指を滑り込ませました。一緒に左の指で軽く乳首を摘み上げます。決して痛くならないように。でも全身に快感が突き抜けるように。
「ひゃはぅうぅっ……っ……!」
 腕の中で身を張って、くたりとわたしに向かって倒れこんでくる藤村先生。
 腕、吊り上げてて良かったかも。さすがに体格に差があるから、しっかり支える自信ありませんし。
 端からよだれが垂れてしまってるその口元は絶え間なく荒い息をついていて、わたしの首筋をくすぐってきます。
 なまじ表情が見えないだけに、その吐息と熱が先生の興奮を直に伝えてきて。
 体の奥が、じゅくりと音を立てて疼いてきました。
 自分の体の熱に浮かされたまま、先生の体を引き起こして壁にもたれかけさせて、はしたなく顎まで垂れてしまってるよだれに舌を這わせます。そのまま上に舌を進めて、熱っぽい唇の周りをぺろりと舌で嘗め回しちゃいました。
 ふふ、わたしも人の事を言えないくらいはしたないですね。
 でも止まれませんし、止まりません。
 だって、こんなに可愛いんですから。
 両の手で乳房を包み込んで、そっと握りしめます。ひんやりしたレザーの冷たさと、突き立てのお餅の柔らかさが同居してて、指が吸い付いたように離れなくなってしまって。
 そのままわたしの唇を、蝶が花の匂いに誘われるように先生の薄紅の唇に重ねあわせました。呼吸を奪いつくすかのように強く強く吸い立てて、代わりに吐息を舌と一緒に送り込みます。
 薄開きの唇を割り開いて、その裏に舌を這わせ。たまっていた唾液を掬い上げる様に吸い立てて、そのままこくりと喉の中。
 甘い。とっても甘くて、美味しい。
 先輩とキスした時も、姉さんの唇を貪るように吸い立てた時もとても気持ちよくて美味しかったけど。藤村先生のも、負けず劣らず美味しいです。
 やっぱり、好きな人の物は、とっても美味しいんですね。
 もう一度舌を差し込んで、歯の面を行ったり来たり。
 先生、開けてください先生。可愛い生徒がプレゼントを持ってやってきましたから。
 がくがくと、身を震わせて腰砕けになってしまってる先生だけど、扉を開けてくれません。仕方ないから北風と太陽のお話を見習うことにします。
 おっぱいに這わせた指に力を込めて、ふかふか肉の海にゆっくりと沈めていきます。柔らかく、だけどパン生地を捏ね上げるように芯には力を込めて。握りつぶさないように、刺激が伝わるように強く優しく。
 けれど決して乳首には触れません。気持ち良さを体に刻んで、そして焦らしてあげないといけませんから
 そうすれば、ほら開いてきた。
 ようやく開かれた扉から舌がするりと滑り込んで、探索の開始。怯えて逃げる先生の舌を追って、奥へ奥へと。もちろん追っ駆けっこの道すがら、歯の裏も歯茎も舐めて突付いていきます。
 さあ、追いつきました。
 奥で固まってしまっている先生の舌にゆっくりと自分の舌を絡めていくと、最初は怯えてぎこちなかったそれが、段々と緩やかに大胆にわたしの舌を迎え入れてくれました。
 思わず嬉しくなってしまって、乳房をつかんでいた手を先生の頭の後ろに回して、引き寄せちゃいます。
 互いの口から漏れた唾液が、レザーのスーツを、わたしのブラウスを濡らして汚しますけどそんな事はどうでもいいです。
 もっと引き出したい。
 もっと変えてあげたい。
 もっと、もっと見たい。見ないといけない。
 藤村先生の可愛い所を。いやらしい所を。先輩に見せる前に、まずはわたしが存分に味わいたいんです。
 溶け合っていた唇を、名残惜しいですけど一端外して、口からよだれが糸を引くのに任せたまま、先生の耳元に口を寄せます。
「先生。藤村先生」
「ぅあぅ?」
 胡乱な呟きで返してくれるのを見ると、先生の蕩けぶりが良く分かりますけど。
 まだ早いですよ。これから、もっととろとろにしてあげますから。
「この服って、とっても便利になってるんですよ」
 その言葉と共に、頭の後ろに回していた手を、背まで下げます。指に触れるファスナーを挟み込んで、つーっと一息に下げ降ろすと、胸の部分を覆っているレザースーツがぱさりと床に滑り落ちていきました。
 まろびでる白い二つのふくらみ。その先には真っ赤になった乳首がぷっくりと勃ち上がっていました。
「嫌ぁあ……」
 見えなくても、いえ、見えないからこそ感覚は敏感ですから、自分のおっぱいが剥き出しにされた事に気づいた先生がそんな事を呟きますけど。そんなに可愛い声じゃ聞こえません。
 それにほら、とっても美味しそう。
 頭に浮かんだそんな単語に従うまま、耳元から離した唇を下げて、吸い付きます。
 乳首を避けて、その下の白くてふかふかの乳房に。
 苺は最後に。わたしがショートケーキを食べる時の鉄則ですから、まずは生クリームが一杯詰まったスポンジを攻略しないと。
 あれだけいじっている間にとっても蒸れていたのでしょう。じっとりと汗で湿った肌は、わたしの舌を吸いつけて離してくれません。
 ちゅぱ、ちゅぽっ。
 音を立てて吸い上げて、満遍なく舐めてしゃぶって濡らし上げていきます。食べ残すなんて勿体無くて出来ません。右が終わったら左。それが終わったらまた右。何度も何度も行きつ戻りつ。わたしの唾液と先生の汗でどろどろになった乳房。その谷間に顔を埋めるようにして両のケーキを楽しみまないと。
 埋めた顔を震わせる度、先生が身をよじらせて。その動きは恥ずかしくて、嫌で逃れようとするものじゃなくて。わたしに乳房を擦り付けてくるようないじましい動き。
 あは、先生も完全に火がついたんですね。もっと深く、もっと強烈な刺激が欲しくてたまらないんですね。
 それじゃそろそろメインディッシュに入りましょう。
 背に回したままの腕を下げてきて、手探りで先生の両腰のファスナーを探し当てます。わたしの指の動きでその先の流れが分かったのか、先生の腰がびくりと震えましたけど、腰を引いたりとかはしてきません。
 先生も、期待してるんですね。
 もう少し焦らしてあげようか。そんな事も頭を掠めたけど、いい加減体も火照りきってしまって。勢いに任せてファスナーを引き降ろしました。そのままおしりの上とおなかの辺りに手を回して、腰を覆っていた皮のパンティを外してしまいます。
 ぬちゃり。
 ねばついたナニカが糸を引いたような音。わたしの耳に聞こえたのですから、当然先生の耳にも届いている筈。
 先ほど布越しに先生のおしりの穴をいじったときも思いましたけど。まさか、そんなに濡らしてるだなんて。
 嗜虐に駆られて、胸に埋めた顔を上げて手にしたパンティに視線を落としてみれば。
 あら。あらあら。
 黒皮がどろどろに濡れきって色が変わってしまってる。それに、いまだ幾筋もの半透明の糸が垂れ下がって先生のアソコと繋がってますし。蓋を失ってあふれ出した秘蜜が、ストッキングに伝わり染み出してきてます。
「先生、凄い」
 いぢめてあげたい気持ちと、純粋な感嘆が入り混じった思いで、先生に向かって笑いかけました。
「こうしてみてる間にも、次から次へと。蛇口が壊れてしまったみたいにお汁があふれ出してますよ」
「違う、そんな事ない……」
 太ももを捩じらせて嫌々をしますけど、その度にぬちゃりぬちゃりとこね回される蜜の音。
「パンティもどろどろ。これはもうクリーニングしてもダメかも」
「違う、これは、あなたに……」
「わたしは先生にキスをして、胸を少しマッサージしただけですよ? それでこんなになってしまうんですから、先生はとってもえっちなんです」
「嘘よ、私はそんなにいやらしくない……」
 ぶんぶんと首を振る先生。もはや下着の用を成さない皮布を投げ捨てると、わたしは先生の頭に手を回してまたぴっとりと寄り添います。耳に唇をよせると、それだけで動きが固まってしまう先生がとても、可愛い。
「先生、勘違いしてますよ」
 耳から先生の中を溶かすように、甘く緩やかに。吐き出す吐息も意識して先生に囁きかけます。
「えっちなのは全然悪いことじゃないんです。今の先生は、とっても魅力的」
 耳朶に舌を這わせて、あいたもう一つの手でひくつく乳首を摘みあげました。
「ひぃあ、ひぁぁぁあぁああっ!」
 一度触ったきり、今までじらし続けてましたからね。効果は正に劇的。
 足腰に力の入らなくなってしまった先生が、膝をがくがくと震わせてまた壁にもたれかかってしまいました。とめどなく流れて出てる膣液は、もはや膝を越えて足首まで濡らしてしまってます。
 うん、そろそろいいですよね。
 乳首をもてあそんでいた手を脇に回して、先生の腕を吊り上げてる縄を解いてあげます。とたんにずしりとのしかかってくる先生の重み。そんなに重いわけじゃない筈なんですが、その、わたし自身もそろそろ足腰に力が入らなくなってきてしまっていて。
 これからが本番だと言うのに、わたしも耐えられるのでしょうか。
 それでも先生に痛い思いをさせないように、ゆっくりと床に座り込ませます。むき出しの下半身に絨毯の毛はちょっとチクチクするかも知れませんけど、それは我慢してくださいね。
  吊り上げられた束縛が解けてることに気づいているのかいないのか、へたり込んだまま荒い息をついてる先生。でも、その乳房も下半身もむき出しで。
 もう駄目、わたしも限界。
 ブラウスもスカートも、絞れば滴るんじゃないかと言うくらい濡れそぼってしまったショーツも脱ぎ捨ててしまいます。包み隠さずさらけ出したあられもない格好。先生に見えてないのがちょっぴり残念かもしれません。
 教え子が裸で、自分の体と向かい合っている。その瞳は情欲に濡れて、その肌は火照りきって。
 わたしがそういう女の子だと見えていたら、先生はどう思うのでしょう。
 でもこれがわたしだから。先生の奥底の姿を掘り起こすのなら、わたしの本当の姿だって見せておかないと嘘ですよね。
 縛められた先生の腕を取って、下半身へと導きます。濡れそぼった秘所に、火照った先生の指が触れて、一瞬雷に打たれたような衝撃が突き抜けていく。
 もう、立っていられない。
 そのまま両膝を突いて、今度はわたしが先生にもたれかかってしまいました。
「桜ちゃん……えと、これ……」
 胡乱な中にも戸惑いを込めた呟きに、かすれた声で答えるわたし。
「はい、わたしも、とろとろです。えっちな先生の姿を見てて、えっちなわたしのアソコもとろとろになっちゃいました」
 驚きで固まってしまってる先生の指を、秘唇の奥へと差し入れます。目が見えない状態で触れたせいか、びくりと震えた指がわたしの奥を浅く震わせてきますけど、欲しいのはこんな刺激じゃありません。
「あの、その……凄い、濡れて」
「ええ、もうお漏らししたみたいに濡れてしまって。先生があまりに可愛かったから、もうどうしようもないんです」
「こんなに、濡れてる。わたしの指が、どろどろになってる」
 戸惑いだった先生の声に、好奇の色が含まれ始めてる。
「先生、初めてなんでしょう? 他の女の子のここに触れるの」
 囁きに応えるように、固まっていた指が恐る恐る動き出しました。緩やかに中をかき回してくる細い指。染み渡るような快感が広がっていきますけど、これじゃ足りません。
「わたしの真似をしてください。わたしが動かすように、先生も動かしてください。そうすれば、一緒に気持ちよくなれます、とっても気持ち良くなれますから」
 そのままゆっくりと、右手を下ろしていきます。お腹を通って、適度に生えそろったアンダーヘアを掻き分けて。その少し固めの感触を楽しみながら、決して肉芽へと触れないようにして、秘唇へと辿りつきます。
 とろとろに濡れきったとば口を、円を描く様に撫で回していくと、ぎこちない動きで同じようにわたしのそこを撫で摩ってくる感触が伝わってきました。
「そう、そうです……その調子です……」
 正直に言うと物足りない。
 手が自由に動かないと言うのもあるのだろうけど、やはりわたしと先生だと、経験も積極性も違うのでしょう。
 だけど。
 わたしが指を右に動かせば、やや遅れて先生の指が右へ。奥へ滑らせると、同じ位置から甘い刺激が響いてきて。浅く指を女陰にもぐらせれば、すぐにわたしの中に細いものが潜り込んでくる、と、先生、それはちょっと深すぎ、です。
 先生の体をいじっている筈なのに、わたしの体に伝わってくる快楽。段々こつを覚えてきてしまったのか、先生の指の動きも大胆になってきました。
 突きこむ指を二本に増やして、二本に増やされてしまう。指先を曲げて中の壁を擦りあげれば、わたしの膣壁も内から擦られ撫でられちゃう。水の詰まった坪に落ちた虫が暴れるように、二本の指を先生の中でじたばたさせたら、わたしの中で虫が二匹暴れまわってしまった。
 わたしが先生をいぢめてるはずなのに、まるで自慰をしているみたい。
 いまわたしは先生をよがらせているの? 自分でよがってはしたない声を上げているの? 先生に思うがままにいぢめられているの?
 もうわかりません。今のわたしの全ては、指先に感じる濡れそぼった柔らかいオンナの肉と、わたしのオンナから感じる眼もくらむような快楽だけ。
「あ、あぁぁぁああぁ、駄目、桜ちゃん、もう、我慢できない……」
 息も絶え絶えに、口元からあふれる唾液もそのままに顔を真っ赤にしてそう叫んでる先生。いやらしくて綺麗な女の顔をしてる。
 そしてきっと、わたしも同じ顔をしているのでしょう。頬を上気させて、眼の端から涙があふれて、先生の指だけじゃ飽き足らなくて、空いた手で乳首をひねり上げてる。
 ああ、本当にわたしはいやらしいんですね。
 駄目です。えっちな桜はもう我慢できません。飛ばして、ください……
 突き動かされる衝動のまま、先生の中から指を引き抜いて、その上の小さな蕾を摘みあげました。
 「――っっっ!」
 声にならない悲鳴を上げてのけぞり倒れこむ藤村先生。だけどその瞬間、確かに先生もわたしのクリトリスをつまみ上げてきて。
「ひゃぁっ、はぁあ?!」
 意味不明な叫び声を上げたまま、頭の中が真っ白になってしまいました。
 まるで自分でしたような感覚なのに、自分でするより何倍も気持ちいいんです。程度の差はあれ、やっぱり、好きな人とこういう事をするのはたとえようもなく快楽を生んでくれるんですね。
 仰向けに倒れこんで、床で荒い息をついてる先生にのしかかるようにして、口付けを送ります。むさぼるようなキスじゃなくて、舌の先で唇をつついて濡らすような軽いキス。
「気持ちよかったでしょう?」
「…………うん」
 ためらいがちにそう呟く先生は、あまりに可愛らしすぎました。こみ上げてきた思いのままに再びキスを。今度は深く、全てをむさぼるような激しい口付け。
 応えてくれる舌を甘噛んで、その先を突付いて絡ませる。おんなじ事をわたしもされて。
 本当の目的を忘れそうになるくらい、先生の体を貪っていくのが楽しい。先生を愛しんでいくのが楽しいんです。
 だけど、その時間を一端お開きにする合図が送られてきてしまいました。
"サクラ、士郎を連れてきましたけど"
 呆れたようなライダーの声が頭に響きます。光景が見えるわけじゃないでしょうが、私の体の調子はパスを通じて常にライダーに伝わってますから。どんな事をしていたのかなど手に取るように分かるのでしょう。
 それにしても、どこか声が疲れているのは……あの二人の眼を盗むのは大変だったんですね。
"ご苦労様。それじゃ先輩をこちらに案内してください"
"いいのですか? その、今の状態はいささか取り込んでいるのでは?"
 ライダーの戸惑いはもっともかもしれません。わたしの傍で裸で転がっているのが姉さんやセイバーさんだったらまた話は別なのでしょうが、藤村先生ですからね。
"大丈夫よ。このために先生に色々レクチャーしたんですもの"
 遠くのライダーに向かってにっこり微笑むわたし。
"先輩と、わたしと、藤村先生。三人でゆっくりと楽しむの。先輩だって、こういうイレギュラーがあったほうが楽しいに決まってますから"
"三人、ですか。その、私は……?"
 明らかに不満そうな声を上げるライダーですが。残念でした。今日は期待に応えて上げられません。先ほどの事もありますしね。
"先輩がいなくなったことに気づいたら、姉さんもセイバーさんも全力で探し回るわ。だからライダー、見張りをよろしくお願いしますね"
"あの二人を私一人で止めろって言うんですか?!"
"骨は拾ってあげるから安心してください。罰ゲームだと思ってしっかり勤め上げてくださいね"
"……わかりました。地獄に落ちてくださいサクラ"
 暖かい励ましと共に切れる念話。そして部屋の戸がゆっくりと開かれて。
「どうした? 何か相談事なんだって?」
 訝しげな、だけど聞くものに安心を与える声でそう言いながら、先輩が部屋に入ってきました。

 

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